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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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147.ダイヤモンド鉱山の権利

もう少しロルフ視点です

 朝食を食べ終わってから私は庭に出ることにした。屋敷と言ってもこじんまりとしているここは庭もさほど大きくない。

 通いで庭師が来て最低限の体裁は整えてくれている。季節ごとに小さな花壇に花が咲くのだが、ここは薬草園の方が主になっている。

 こちらは主に私が管理していて人の出入りはリベラのみだ。貴重な研究材料だからだ。


 小さな花壇と言っても東屋から臨むそれはとても美しく整えられている。一応、侯爵家を出たとはいえ実家は高位貴族だ。体裁は必要なのだ。

 そこにリツを連れて行く。地面には芝が植えられており、ふかふかしているからリツでも大丈夫だろう。


 リツはよたよたしながら花に向かって鼻をひくつかせながら歩いて行く。その小さな姿は本当に愛らしい。

 花の近くまで行くと周りからポツポツとヒカリが現れた。これは…?


(可愛い子が来たよ)

(可愛い子だよ)

(白銀狼の子だよ)


 リツはよたよたしながら光を追いかける。


(僕たちは花の妖精)

(花の妖精)

(可愛い子)

(遊ぼ)


 光を前脚でてしてしする。可愛い。追いかけて転んでまた追いかけて…。楽しそうに光と戯れている。優しい風が吹き、穏やかな時間が過ぎていく。


 私はこんな風に両親の前で遊んだことがあっただろうか?もの心つく頃から研究かラルフの相手をしていた。ふと両親はこんな風に私を見ていたかったのではないか…。そう思った。私は自分のことばかりで両親の気持ちなど考えもしなかった。

 もうあの頃は戻らない…。せめてアイリーンが産まれたら、そんな時間を両親と過ごそう。そう思った。


 アイル、君は私にたくさんの気づきをくれるね…。


 ふと見るとリツが伏せている。倒れてる?慌てて駆け寄ると私の手に頭を擦り付けて来る。良かった。疲れただけか…。

 そのまま私の手を枕に目を瞑って…寝始めた。なんて可愛いらしい姿だろうか。私は両手でしっかりと抱えて胸のポーチにそっと入れる。

 その頭に優しくキスするとまた椅子に座り花を見た。穏やかで限りなく優しい時間…。その時間を楽しんでいた。


 リベラが来て

「昼食はこちらでなさいますか?」

 午後は出かけるから、用意もあるし部屋に戻るか。

「いや、部屋に…」

「畏まりました。準備してお持ち致します」

 頭を下げて屋敷に戻って行く。さて、私も部屋に戻ろう。

 花壇を見ればふわふわと光が漂っている。ここにも妖精がいたのだな…。私は嬉しくなった。


 部屋に戻るとポーチからアイリーンとリツを出して机の上に置いていたクッションに乗せる。

 私はポーチを外して横に置くと少し伸びをした。そのままソファに座ってクッションを眺める。リツの鼻が時々ぴくぴくしていて可愛い。


 扉が叩かれてリベラが入って来る。ワゴンを押して机の横に置くと、私に手紙を差し出して来た。

 一目で分かる…イルからの返事だ。私はドキドキしながらその手紙を見つめる。

「アイル様から先ほど届きました」

 リベラから受け取る。あぉ…イルの魔力と香りを感じる。心の底から湧き上がるようなこの感覚は何だろうか?胸がドキドキする。


 机の上に昼食を置いてリベラが出て行ってから私は手紙の封を丁寧に切って手紙を読む。

 なるほど…それなら、うん。イル、君の気持ちは分かったよ。愛おしい人の魔力を感じながら…私はそれをイヤーカフに仕舞う。


 さぁ昼食を食べよう。リツの分のスープと果物はもう分けてある。さすがリベラだ。

 相変わらずリツは顔からスープに突っ込んでいる。可愛い。私も自分の分を食べる。軽めのお昼はスープに生野菜、サバサンドに果物だ。程よい。


 食べ終わるとリツの顔をナプキンで拭いてから着替える。服はリベラが用意してくれている。

 権利の話し合いだから第3礼装だ。かしこまっていないが、大切な話し合いで着る服。

 立て襟にネクタイ、ふわりとした袖に手首は締まっていてカフスで留める。体に沿うベストにズボン。

 ベストの下にポーチを掛けて、最後にローブを羽織れば完成だ。


 ポーチにアイリーンとリツを入れて部屋を出る。玄関の前でリベラが待機している。私を見てネクタイと整えて頷く。私も頷くと

「行ってらっしゃいませ」

「あぁ行ってくる」

 扉を開けてもらい外に出る。すでに馬車は待機していた。馬車の扉を御者が開け、私は乗り込む。すぐに馬車が動き出した。この馬車は侯爵家の紋章が入っている。私が侯爵家に復帰したこともあるが、父上の名代として参加する場合は元から侯爵家の紋章を使っていたのだ。


 ただ、この馬車の紋章はイルが屋台用に作ったものだ。私がこれを使いたくて…。すでに簡易紋章登録は済ませてあるから問題ない。ここでもイルを感じられるね…。

 さほど時間もかからずアフロシア侯爵家に着く。歩いても10分ほどだから近い。ただ、貴族は歩いて訪問など出来ない。だから近くとも馬車に乗るのだ。


 馬車寄せに到着すると、執事が迎えてくれる。玄関を入るとそこにはイザークとフェリクスがいた。

「フェリクス、ご機嫌麗しく…」

「ロルフ、ご機嫌麗しく…ここからは普通で」

「分かった。イザークもよろしく…」

「ロルフ様、よろしくお願いします」

「イザークももう貴族…普通でいい」

「呼び方はこのままで、話し方はおいおいでお願いします」

 私は頷く。


 フェリクスは私がローブを羽織っていることに不思議そうな顔をする。

「後で説明を…」

「その…会えたのか?」

「会えた…だからこの話し合い」

「分かった。後はお父様を交えて…」

 頷く。

 応接室に着いた。執事が扉を叩くとダナン様から応答があり、入室する。


 部屋に入ると

「よく来たね…ロラフリート・カルヴァン殿」

「ダナン・アフロシア殿、ご機嫌麗しく…」

「ご機嫌麗しく…ここからはいつも通りで」

「はい、ダナン様」

 ソファに腰掛ける。私の向かいがダナン様、左隣にフェリクス、イザークはダナン様の右に座る。


「今日は先日アイルが見つけたダイヤモンド鉱山について話をしに…ですが、その前に報告したいことが」

「アイル君のことだな?」

「はい…」

「会えたんだね?」

「はい、ダイヤモンドの採掘を一緒にしました」

「彼はその…元気だったか?」

「はい、とても…色々と私も彼の手を煩わせてしまったのですが、彼は本当に優しくて…」

「そうだろうな…元気なら良かったよ。それだけかい?」

「いえ、もっと大事なことが…」


 そう言うと私はローブの前を開けてポーチを見せる。しばらくダナン様とフェリクスは驚いて動かない。復活したダナン様から

「その…子の実は一体…、それにその小さな生き物はまさか?」

「子の実はアイルと私の…こちらはハク様とアイルの子…白銀狼です」

「はっえっ…?ロルフとアイル君の…?それにハク様の…?はっ…?」


 また固まってしまった。


 ダナン様がため息をついて

「また何というか…。その、ロルフとアイルはそういう?」

「いえ、詳しい話は省きますが…アーシャ様に後押しされて…」

「アーシャ様が勧めたと?」

「アイルを助けて、これは神の望みだと」

「彼と君が…?何というか…どちらも清廉だからか…?君がその…そういう方面には疎いかと」

「その通りです…でも彼は不思議な魅力がある…近くにいると引き寄せられるような…元から好ましく思っていたので」

「そうか、そうなのか…しかし彼にはイーリスが」

「はい…彼には申し訳ないこと…でも私の気持ちは止められなかった」

「そうか、でラルフは?」

「ショックだったと…」

「システィアは?」

「両親は喜んでました…私の子とハク様の子とは片親違いのいわば兄弟なので」

「それもそうか…また凄いことだな。しかしハク様とアイル君はロルフに子を託したのか?」

「5頭の内の1頭をユーグ様に子の守りとして託されました」

「まだ4頭この可愛い声たちがいるのか…」


 ダナン様は震える手を伸ばし

「撫でても?」

 私はポーチからリツを出してダナン様の手に乗せる。ダナン様はその感触に目を潤ませ震えている。イザークがその背中をそっと支えてリツに触れる。横からフェリクスも優しく撫でた。

「何と可愛いらしい…」

 リツは鼻をぴくぴくさせて寝ている。知らない人に渡されても寝てるのか?と思ったら目を覚ました。そして私を探して鳴く。


「ぴぃ」


「「!」」

「リツ…ここにいる」

 私はソファから体を乗り出してダナン様の手の上のリツを撫でる。リツは私の手に頭を乗せてふにゃふにゃ鳴いてしっぽを振る。可愛い…。

 それを見たダナン様たちは震えながら可愛い…と呟いていた。

「リツ様?イイ名だ」

「アイルが付けた…白銀狼の子…生命樹の愛し子の子…リツが子の実に自分から近づいた」

「まさか自分の目で白銀狼の子供を見るなど…」

「とても愛らしい」

「早くイズとの子が欲しいな」

「あぁ…そうだな」


「さて、リツは返すよ…名残惜しいがダイヤモンド鉱山について話をしよう」

 私は頷いてリツを撫でてからポーチに納めて、腰のポーチからいくつかのダイヤモンドと書き付けを取り出す。

 皆んなの目がダイヤモンドに釘付けになる。それはそうだろう。色付きなど初めてだから。

 私は書き付けもダナン様に渡す。それにサッと目を通してから考え込んだ。両側からフェリクスとイザークが覗き込む。そして難しい顔をした。


「権利の話もだが、どうするつもりだい?」

「…まだ。父上と相談しますが…入り口はハク様の縄張りです」

「国が黙っていないだろうが…まさか聖獣様の縄張りではな…」

「今は種族進化して神獣です…」

「なんと……それはまた…」

「国が手出しをしようものなら…この国が崩壊するな」

「私はユーグ様の依頼により、ここをしばらく離れます。やがては国に手出し無用の確約を取るとして…しばらく私は王都には行けません」

「報告も兼ねて私とシスティアで一度、王と話をせねばならないだろう。アイルの件もこれ以上は隠せない。白銀狼の子までいるのだ。そのアイルとの子がいるロルフも気を付けなさい」

「私には彼の守りが…悪意があれば弾かれる」

「悪意なく迫ってくる輩もいるぞ?」

「私が嫌だと感じれば悪意と判断されるとか…アイルの防御なら安全です。自然災害など私の身に迫る危険も全て弾くと…。

 彼が自分の子を危険に晒すなど有り得ませんし…ましてやハク様の子もいる」

「そうだな…アイル以前にハク様がお怒りになるな」


 ダナン様は考え込む。フェリクスが

「新種の登録だけは済ませるのか?」

「そのつもり…。発見者について相談が…」

 ダナン様とフェリクスは頷き合い

「多少なりとも権利を貰えるのであれば、フェリクスと連盟にしたらいい。攻撃は1人より2人で受けた方が楽だろう」

「ありがとうございます…フェリクス、頼む」

「あぁ、頼まれた」


「権利については元々がハク様のもの…私はハク様の契約者であるアイルとの子がいるから…ハク様の名代となる。アイルは権利も報酬も不要だと…」

「正直にどれくらいを想定している?」

「アフロシア家が2割…我が家は3割で…残りは彼や子供に…」

「ならそれでいい。いや、むしろ有難いよ、ロルフ。配慮してくれたんだな」

「隣同士…我が領は比較的余裕がある。ここも堅実な運営…より栄えて欲しい。私を受け入れてくれた土地だから…」

「そう言って貰えると嬉しいよ。裕福とまではいかないが、経営は安定している。さらにキビを特産にしてサバサンドも普及すれば…鉱物の採掘にも協力し合えるとこちらも助かる」

「どちらにしても…ハク様の縄張りには今の所、アイルやイーリス意外では私しか入れない」

「そうだな…採掘の方法についてはまた後日か」


 私はダイヤモンドを手に取り

「全てとても質がいい。全てなのか、場所によるのかまだ分からない…」

「王には献上せねばならないか…?」

「われわれからであれば…ハク様からは献上しない」

「そうだな…」

「この間、採掘出来た分の一部をアフロシア家に…私から」

「受け取るよ、ロルフ。ありがとう」

 軽く目線を下げて言う。貴族同士とはいえ、最上級の感謝だ。

「アイルやハク様たちの事、一緒に守って欲しい…」

「もちろんだ。私の大切なイズの心を取り戻してくれた恩人だから…彼がいなければアーシャ様から話を聞くことも出来なかった」

「共に守ろう」

 私はダナン様の目を見てしっかりと頷いた。




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