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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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145.ロルフの研究

引き続きロルフ視点です

後書にラルフのイメージイラスト載せてます

 昨日は久しぶりにゆっくりとして、今朝も遅めに起きた。ベットの枕元には子の実を置くクッション。そこに実とリツが寄り添って寝ている。

 リツの鼻はぴくぴくしている。可愛い。その丸いお腹を出して仰向けで寝ている。一応?白銀狼という聖獣の頂点に君臨するのだが…まだ赤ちゃんだからかな?ひたすら可愛い。


 リツは魔力を食べる。ハク様がいればハク様の魔力を食べるのかな?いや、イルの魔力も好きそうだ。

 別れる前に例のイヤーカフにイルとハク様が自分たちの魔力を込めた水晶を収納してくれた。

 今はそれを取り出して与えたり、スープを食べさせたりしている。


 スープやパン、果物はこれもイルが持たせてくれた。ポーチには時間遅延を更に追加で強力なのにしてくれた。今からなら1ヶ月は保つって。 

 私のイルはやはり凄い。何かあってもすぐに食べられるようにイヤーカフにも出来立てのスープが収納された。

 本当にどこまでも優しくて、過保護だ。それが心地よいのだけど…。 


 さて、起きるかな。ちょうど扉が叩かれる。私はそっと起き上がると扉を開ける。

 リベラが朝食をお待ちしました、と言ってワゴンを押してくる。

 そのまま机に置いて下がって行った。私は研究に没頭して食事の時間を良く飛ばすから運んで貰うのだ。

 給仕も断っている。だから出来たものを置いて貰って食べる。


 出されたものは全て食べているが、その量はその都度リベラが調整してくれている。私の生活は彼がいて成り立っているのだ。

 しかし、ここを長らく留守にするなら雇っている彼等をどうするべきか…。

 実家には執事も料理人もいる。難しいな…。彼らの意見も聞くか。


 私は黙々と食事を取るとベットのリツを抱えて机に戻る。スープと果物を少し残してある。リツはもぞもぞと動いて鼻をヒクヒクさせる。


「ぴぃ」 


 相変わらず不思議な鳴き声だ。私はスープをスプーンに掬って口元に運ぶ。舌でスープを舐めている。まだ上手に舐められなくて周りはスープが溢れるし、私の手も汚れる。でもそれが全く嫌ではない。

 この子は自分の子ではないが本当に可愛くて仕方ない。果物を口に含んでもぐもぐするその姿はひたすら愛でたくなる。そっと眉間を撫でれば頭を擦り付けてくる。


「リツ…」

「ぴぃぴっ(お父さん)」

 えっ?今、言葉が…。

「リツ…?」

「ぴぃぴっ(お父さん)」

 言葉が…。でも私はお父さんじゃない。

「私はお父さんじゃない…ロルフだよ」

「ぴぃぴぴ?ぴっぴぃ(そうなの?ロル…)」

「リツのお父さんたちの…」

 私はイルの何だろうか?恋人はイーリスだし、子の親同志?なんて説明したら?


「リツのお父さんは私の大切な人だよ」

「ぴぃぴっぴい…ぴぃ(良く分からないよ…ロル)」

「リツのお父さんは素敵な人だよ…」

「ぴぃぴぃぴっ…ぴぃ!(そう言ってくれるロルも…好き!)」

 あぁリツはやっぱりイルの子だなぁ。そんなことを自然に言ってくれるなんて。

「リツ、よろしく…」

「ぴぃ(うん)」


 私はリツを抱いてベットの子の実の側に座る。そして子の実を撫でる。なんだかとても清らかな気がする。気のせいかな?

 そんな時間を過ごしていると扉が叩かれる。開けるとリベラが立っていて手紙を渡してくる。

「フェリクス様から伝書鳥が来ました。お手紙です」

 受け取って立ったまま読む。

「すぐに返事を書くよ…」

 リベラにそのまま待って貰い返事を書く。封をして渡すとリベラは下がった。


 会合は明日の午後からとなった。時間が空いたな…。しばらく領地に行ったりラルフと婚姻の届出をしたりと忙しくて研究が途中になっている。

 不思議な針が入った水晶や、青いふかふかした内包物のある水晶、波模様の青い石。

 そして地下洞窟で採掘したまるで森を閉じ込めたような水晶。


 商業ギルドへ発見と届出と新種の登録をする際に名前を付ける。さて、どうするか?その効果も詳しく鑑定しなければ。

 さらに地下洞窟で薬草を採取した。イルが見つけて私が預かっている。これも調べなくては。

 よし、久しぶりに研究室に籠もろう!その間、リツたちはどうするかな…。うん、連れて行こう。離れるなんて出来そうもない。


 私は研究用の服に着替えるとイルが私のために作ってくれた斜めがけのポーチを付けて実とリツを収納する。そして部屋の奥にある研究室へと入る。入る前に部屋の扉に研究室にいることが分かる札を掛けれて。


 久しぶりの研究室はとても落ち着く。私の、私だけの城だ。ここには家族でさえ入れたことがない。誰も入れることはないだろう、そう思ってたが…。リツが入った。人では無いけど。

 ふとイルを思う。彼ならば入ってもいいな…。たくさん話が出来そうだ。


 本当に彼の存在は離れてもどんどん大きく、鮮明になる。彼の優しい銀色と細くて白い体と。本当に不思議な人だよ…君のお父さんは。

 私はリツをするりと撫でるとポーチごと研究机の少しだけ端に置く。リツは鼻を時々ぴくぴくさせながら寝ている。可愛い。その頭にそっとキスして腰に付けたポーチから水晶などの鉱物を取り出す。

 まずは詳細鑑定からだな。


 私は鑑定の上位スキルを持っている。この世界にあるものは詳細が分かる。ただ、未知のものは凡そのことまでしか分からない。

 それを色々な知識と組み合わせてするのが詳細鑑定だ。集中しないと情報を掴み取れない。たくさんの可能性を当てはめながら、情報を拾う作業だからだ。

 過去に似た例があれば初期の鑑定でもう少し詳しく出る。さて、どれからするか。


 なんとなく青いふわふわしたのが入った水晶を調べようと思った。イルが見つけたものだ。それを凄く嬉しそうに教えてくれた姿を見て、好きなんだなと思ったから。

 確かにとても不思議だ。内包物も鉱物なのか…?それとも水晶が結晶化する時に何か別のものを内包したのか?とても興味深い。

 私はそこから2時間ほどこの青いもこもこの入った水晶の詳細鑑定をした。


 手強い。まだ全く結果を出せていない。内包物は何か?そしてその効果は?魔力分布は…。謎ばかりだ。

 でもそれが面白い。手を止めたのは扉が叩かれたから。この扉は特殊な作りで叩かれるとその音が反響して部屋全体に響く。

 そうしないと私が気が付かないからだ。

 一回、それで空腹で倒れて危なかったことがある。それからこのようにした。リベラに本気で泣かれたからな…。


 で、響き渡った音に気が付き手を止めて部屋を出る。もちろん実とリツを連れて。

 部屋にはリベラが待機して食事を机に置いてくれている。私が来たのを確認すると紅茶を入れてから部屋を出て行った。

 食事はキビサンドと肉を挟んだパンにサバサンド、野菜たっぷりのスープ、そして茹でた野菜に果物だ。

 野菜にはイルの作った機械でクリームを分離し、それを基にした調味料がかけてある。少しチーズも入っていてまろやかなのにコクがあり、茹でた野菜の甘みを引き立てる。


 食にはうるさく無かったが、イルが作るものはどれも美味しくて彼の手で作り出されるものは何でも口に合う。それを知った料理人が工夫して私に必要な物を食べさせる為に色々と考えてくれる。

 そうすれば私の食事の量が増やせるからだ。昔からリベラにはもっと食べて下さいと言われていた。興味が無かったからだが、イルと出会ってからはただ栄養を取るものから味わうものへと変わった。


 そして、気がつく。食の細い子でもイルの料理なら食べるのではないかと。

 これは病気の治療にも使える。美味しいと感じること、味わえること。とても大切だと身をもって知ったから。


 今日もいつもより多めだったが完食出来た。リベラの考える、私が食べられる量は本当に正確だ。

 うん、やはり白の森に同行出来るかイーリスに相談だな。


 リツにも食べさせながら、水晶から魔力を与える。リツは水晶を抱いてるだけだが魔力は補充出来てるようだ。

 ハク様はともかく、水晶のような鉱物には普通魔力はこめられない。そう考えられて来た。なのにイルは簡単にやってのける。

 どうやってと聞くと


「んー結晶の隙間を埋めるように魔力を流す、かな?」

「隙間?結晶なのに…?」

「結晶と結晶にある隙間」

「隙間がないから結晶…」

「結晶は繋がってるだけ。大きな一つの塊じゃ無くて…小さな塊が集まるから結晶だよ」


 私は水晶を鑑定する。


(結晶の塊。個々の結晶は小さいが集まって大きな塊となったもの)


 知っていなければ分からない詳細な情報。イルはやっぱり凄いな…。

 私は水晶を手に取り、隙間に流すよう魔力をこめる。普段なら弾かれる感覚がなく、スッと入っていく。これは凄い。でも…極秘かな。発表するのは良くない気がする。


「イル…それは他の人に言ってはいけない…見せてもダメだよ?」

「…?」

「皆が知らない…魔力をこめるのも、言わない。君を守るため…」

 イルは静かに頷いた。


 魔力を簡単に溜めて持ち運びが出来たら危険だ。今は魔石にしか魔力はこめられない、と思われている。それが水晶などにも…となれば戦が変わるかもしれない。今はここに留めておくべきだろう。


 私は自分の魔力をこめた水晶をイヤーカフに入れている。イルとハク様のもある。ちなみに他人の魔力は普通、取り込めない。ただ、私はイルの魔力を受けられる。例の地下洞窟で私に治癒の魔力を流してくれたから、私の体がイルの魔力を受け入れられるようになったのだ。私の魔力もその時に混ざり合ったから、イルに渡せる。


「無いとは思うけど、魔力が枯渇したり大量の魔力が必要になる時はこれを使って」


 そう言って私に自分の魔力をたくさんこめた水晶をくれた。本当に君は…。君の優しくて温かな魔力は今でも思い出せる。死の淵を歩いていた私を癒し、促してこちらに戻してくれた道標のイルの魔力。だから彼の魔力を私は感じられる。

 彼の作ってくれたポーチにも、子の実にもリツにも…。私はこんなにも君に囲まれてるよ?イル…。


 私は食事をしてまた眠ったリツをそっと撫でるとまた研究室に入る。詳細鑑定を進めなくては。

 でも彼があれだけ喜んでいたならもしかして…。それからまた没頭して…どれくらい経ったか。

 見つけた。その効果を…やはり癒しの波動が見えた。あぁイルはイルなんだなぁ。私は嬉しくなる。


 まず、もけもけの内包物は鉱物で、青石と呼ぼう。それを水晶が結晶化していく過程で取り込んだのだ。

 これは視覚的な癒しの効果があった。また、波動も確認出来たから僅かだが癒しの効果がある。

 なんて事だ。水晶だから魔力と馴染みやすい。それはいわゆるブーストの意味で魔道具にその威力を高めるために使われて来た。

 そこにあの大きな六角柱の結晶だ。先端は尖っていたから集めて使えばかなりのブーストが期待出来る。

 大型の魔道具をあの水晶で魔力をブーストするだけで稼働出来れば、これも歴史が変わるのだ。多くの魔導士が必要な術も、初期の魔力と水晶だけで完結するかもしれない。


 そこに癒し効果のある水晶だ。これは効果を発表出来ないな。視覚的な効果のみとして登録しよう。

 さて、名前はどうするか…。イルに伝書鳥を飛ばすか?家の鳥ならイルが移動しても魔力を追える。

 よし、意見を聞こう。


 ロルフは発見者はアイルだからと思っているが、実際はアイルと関わりたくて仕方ないのだ。それに気が付かないロルフなのだった。




ラルフリートのイメージ

挿絵(By みてみん)

生成AIで作成


※読んでくださる皆さんにお願い※


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