143.聖獣と精霊の子ども
後書にナビィの人型のイメージ載せてます
聖獣は聖獣という種族だ。銀狼や大鷲がそれに当たる。聖獣同志の子は聖獣として産まれる。その一生は凡そ300年ほど。
元々、数が多くない聖獣。それぞれの群れごとに郷で暮らしている。人が行くことの出来ない森や山の奥にあるその郷の中で産まれ、その森で一生を終える。
だからこそ伝説と言われているのだ。
それでも稀に人のいる場所に現れる個体がいる。それは郷を追われた個体か、ハクのように郷から出される子、好奇心旺盛で外に出た子だ。
もしくはブランのように獣の匂いが付いてしまい郷にいられなくなる個体か。
だからアイルのように特殊な個体故に郷から出されたハクと、獣の匂いが付いて郷に帰れなかったブランと出会うのはとても稀だ。しかも聖獣から助けを求められる。それがとても珍しいのだ。
聖なるものとは、聖獣や精霊そして妖精などを指す。澄んだ空気や自然を好む彼らは人のいる所には現れないものが多い。人が多ければ空気は汚れ、歪んだ心を持つものが増えるから息苦しいのだ。
だから森や山、川など自然が多い所にいる。稀に人と契約をしたり、祝福を与えるものもいるが少ない。
そもそも祝福を与えられるのは中位以上の精霊や妖精のみだから。
人に声が届かない小さな光は力の弱いものたち。言葉も話せず漂うばかりだ。
その聖なるものに囲まれているアイルは特別なのだが、本人は自覚がない。
さらに神獣なんてもうその存在すら御伽話で語られるのみ。それでもハクはハクだからな、なんて考えられるのはアイルだけだろう。
この世界の各国がこぞって頭を下げ跪くような神にも等しい存在なのだから。
そのハクをもふったり撫で回したり、ましてや人型と交わるなど国王たちが知ったらそれはもう王宮に拉致されることが確定なくらいの事態だ。
そして、やはりその目立ち過ぎる力はついに国の上層部へ気がつかれる事になるのだった。
目が覚めるとブランは私の脇腹辺りにくっついていて、ナビィはなぜか腰にしがみついていた。
なんで腰?毛布に完全に隠れてるけど暑くないの?
そう言えば昔から体にくっついて毛布に潜るのが好きだったなぁ。暑くないのか不安になるけど、本犬はそれが大好きで。特に冬は足の間に潜り込んで毛布の中で寝てたな。
今は大きくなったから私が抱き付く方かな?
2人の柔らかい髪を撫でる。すると動く気配がした。ブランは眠そうに目を擦りながらその大きな目で私を見上げる。可愛いぞ?今までは私が一番年下だったからな、なんか弟とか妹が凄く可愛い。
そのまま目を閉じてキスをしてくる。私はその髪を撫でながら頭にキスする。ナビィも毛布から顔を出して来た。目をぱちぱちさせから顔に抱きついて来た。
な、ナビィ…いくらお胸が無くても苦しいよ…さらに口をベロベロするキスね。それを人型でやってくる。
朝から激しかったよ。私の唇腫れてない?そう、なら良かったよ。うん。
「ブラン、体は大丈夫?」
ブランは目をパチパチさせると
「大丈夫だよー仮初の体だし」
でもやっぱり心配だよ…。こんなに細いし。
「(魔力を)受ける方じゃ無ければ負担もないよ?ねぇアイル…」
う、うん…そうかな?
「でも困らせたくないから我慢する…」
そうだね、無理はよくないからね。
「ナビィは体、大丈夫?」
「アイリ…怠いよ。だから迎え(魔力)交わりして!」
何?迎え交わりって…。初耳なんだけど。
「(魔力を)交わって?」
直球やん…。
「怠いならやめとこう?ナビィ。後が辛いよ」
「やだやだ…アイリ(の魔力)が欲しい」
う、うん…ナビィはその言葉遣い?ん?そのまま毛布に潜ると私の腰に抱き付く。
「こら、な、ナビィ…」
「アイリ(の魔力)が欲しい!」
だから言葉よ!もう可愛い子たちが裸でくっついてるし…朝だし…よろしくない状態なんだから。
言葉は正しくね。
毛布からナビィが出てきて上からまたがる。ナビィ、ダメだよ…まだ下手だから心地よさより疲れが。
目に涙を溜めている。それはそうだろ…。私はそっとナビィを抱えるとその小さな体を優しく撫でる。あっ…ピクッとしてナビィが目を閉じる。そのまま魔力をゆっくりと繋げてゆく。
私にしがみついて…。やっぱりまだ下手だから辛いよな?でもナビィは言い出したら止まらないから、少しでも辛くないように…ゆっくり…。ナビィの肩が震える。
「もっとたくさん…アイリ(の魔力)を…」
なるべくゆっくりと…魔力を動かしてゆく。あ、ふぅ…ナビィ大好きだよ。ナビィ…。
2人で脱力して抱き合いキスをする。ナビィは満足そうに笑っていた。
「子供出来るね…」
「そんなに簡単に出来るの?」
「うん、これだけ(魔力が)交われば、ね?」
「えっ…それなら一回で良かった?」
「嫌だよ…私はアイリと(魔力が)一つになりたかったの。子供はその結果なだけ」
なんて可愛いことを言うんだろうな?ナビィにキスして
「温泉に入らないか?体も楽になる」
「抱っこで連れてってくれるなら」
「あぁ、もちろん」
「僕も!」
「ブランは歩けるだろ?」
「抱っこがいい」
うるうるした目で見る。でも腕の中はナビィがいるし…。背中?
「背中は?」
「それでいいよー」
まだみんなは寝ているようだ。なんだか人の気配が分かるようになったみたいで、みんなが寝てるのが感じられる。ならいいか!
裸でナビィを抱っこしてブランを背負って温泉に行く。着替えも忘れずにな。
脱衣室に着替えを置くと温泉に入って行く。
まずは洗い場で体を流してからな。椅子に座るとまた両脇から抱きついてくる。それぞれの肩からお湯を掛けて自分にも掛けるとまずナビィの体を洗う。
そして次はブランの体を洗う。
2人ともお尻突き出さなくていいからな?ちゃんと洗えるから。うん、そう。
「私がアイリの体を洗ってあげる!」
膝の間に座って必死に洗ってくれるナビィ。ブランは背中側から洗ってくれる。
うん?なんか2人とも手つきが優しいというか、そのな…撫でるようにして。あ、だからナビィ…そこを擦らないの。ブランも…お尻をそんなにしっかり洗わなくて…、あっだから…う、うん。
2人の妖しい手つきから逃げてお湯を肩から掛ける。ふぅ…全く見た目は幼いのに。やはりそこは人外なのかね。
さてお湯に入ろう。ふぅあぁぁぁ…。生き返る。温泉は日本人の心だね!
2人も大人しくひっついたままでまったりする。うん、いいなこの感じ。
ほどほどにしてお湯から上がると着替えてキッチンに行く。朝ごはんを作ろう。
今日は普通に卵とベーコンに野菜たっぷりスープとパンだ。作っているとハクが起きてきて体を擦り付けてくる。可愛いぞ。その背中にはベビーズがいる。
手を止めてハクの首周りを撫でながらベビーズもそっと撫でて、ハクのその鼻にキスをする。ハクは唇をペロンと舐めてしっぽを振っている。可愛い。
『昨日はどうだった?』
「ん?うん…刺激的だったよ」
『もう子の実が出来たね』
「分かるの?」
『ユーグ様が抱いてる』
「そうなんだ?」
『良かった。ブランとの子は人なんだよな?』
「そうだよー。人として産まれる」
『乳の実を与えればいい』
「乳の実?」
『乳飲み子を育てる時に使う』
「女性だと母乳が出る?」
『乳の実があるから出ない。あぁ…アルの世界ではそうなんだな』
「乳の実かぁ。どこにあるの?」
『産まれた実が乳の実だよ』
「凄いなぁ。じゃあ、私でも子育て出来る?」
『子は皆んなで育てる』
「ナビィとの子は?」
『天使だな。見た目は人に近いが種族は天使だ』
「よく分からない」
『産まれたら分かるよー』
ナビィを撫でる。今はゆったりしたワンピースを着ているナビィ。小花柄が可愛い。
あ、イリィが起きてきた。気配を感じる。いや、気配っていうか感情かな?
居間の扉が開いてイリィが入ってくる。うん、朝からやっぱり美形だな。少し眠そう?
「イリィ、おはよう。あまり寝れてない?」
イリィは私に抱きつくと
「アイ、おはよう。隣にアイがいないと良く眠れない…」
イリィ、朝からそんな可愛いこと言うの?思わずその顎に手を掛けてキスをする。
「じゃあ今夜は良く眠れるな」
イリィが嬉しそうに笑うとキスをしてくる。
「ナビィとは?」
「う、うん…」
私は頬を染める。イリィはナビィをガン見すると
「ナビィ、今日僕と…」
「魔力循環だよ?けっこう難しい」
「6才のアイと(魔力循環)したいよ」
イリィ…恥ずかしいから、やめて?それとな、言い方。
「う、うん…イリィ。もっと上手になってからがいいよ?」
「アイの6才…」
イリィが震えながら目を潤ませている。あ、これは無理かな?魔力循環に慣れるまでやめてって言葉は聞こえて無さそう。
「分かった!アイリも一緒にね…」
いやそれは…。
「もちろんだよ」
はい、いつもながら決定権はないのな…私。
そしてイリィの家族も起きてきたので朝食を食べる。うん、みんな良く食べるよね?私の2倍は食べてる。まぁいいのか?たくさん作ったけど完食してた。
残るよりいいよね?
朝食後に居間で話をする。
「明日、ここを発つよ」
「ブラン…その今日は?」
「いいよー誰と?」
「「「私と」僕と」私と」
全員なのね。
「ナビィちゃんとはまたあちらで…それまでに(魔力循環が)上手に出来るようにしておくよ。でも温泉には一緒にはいろうね」
「分かったー」
(魔力循環)やることは決まってるのな。
そんな感じでオカリナを吹いて精霊たちを喜ばせたり、薬草の採取や鉱物の採取などをみんなでして1日を終えた。
夕食の後はまたみんなでお風呂。今日はブランとナビィはイリィの家族たちと仲良くお湯に浸かっている。
私はイリィと隣同士で…。
そしてブランとおやすみのキスをして別れた。私はイリィとナビィと一緒に寝る。
ベットに入る前にスポポンとナビィは服を脱いで私に抱きついてくる。イリィはその私をナビィごと後ろから抱きしめて耳にキスをする。
服を脱がされてベットへ。イリィもいつの間にか裸だ。相変わらず白くてきれいな体だ。
ナビィもイリィの体を眺めて
「きれいだね…」
さらにイリィの下半身を眺めて、私を眺めて
「大丈夫かなぁ?」
それはどういうこと?だいたい魔力循環にナニの大きさは関係ないよね?イリィは確かに私よりも…こほん、立派だけど?
「ゆっくり(魔力循環)するから大丈夫だよ?6才のアイ…」
なんかイリィのスイッチが入った。目が妖しい。色っぽい美形って破壊力が…。ナビィも目を見開いてから頬を染めている。
イリィがナビィにキスをしてその体を眺めまわし…手で撫でながら首から胸へとキスをしていく。
「あっ…」
ナビィのか細い声がして…。
「あっ、うん…イーリス…あっ」
気持ちよさそうな声をだしてイリィに抱きついている。
イリィの手がナビィの腰を抱いて、そしてゆっくりと2人は交わっていく(魔力が)
ナビィは少し苦しそうな顔をしているけどイリィはそのままゆっくりと…魔力を流して。そしてその光景はなんだかとても神聖な絵を見ているようで、私は感動して見ていた。
2人は静かに交わりながら時間は過ぎ、やがて…。最後に抱き合いキスをしてから体を離していく。
ナビィのその胸に抱いたまま何度もキスをするイリィ。
「あぁ6才のアイと一つに…」
魔力がね?いや、ナビィのそれは私ではないんだけど…。感動してるみたいだしいいかな?
今日は何事もなく寝れそう。私はナビィに寄り添うように横になった…。
何事もない訳がなかった。イリィがね…寝たいんだけどな…私。
こうして長い夜は更けていく。




