135.再会
目が覚めると濃い金髪と黒い毛。ん?黒い毛…?
ナビィ、大きくなっても変わらないね。そのお尻を私にくっつけて寝るのは。ロリィとナビィに挟まれて身動き取れないよ。まぁナビィのは本当に昔からだし。その柔らかいお尻にキスする。大きくなっても柔らかい毛はそのまま。
そしてその匂いも…懐かしくて涙が出てくる。皆んな元気かな?ナビィを見送ってくれてありがとう。私の部屋、まだあるんだね。
それだけでも嬉しいよ…ナビィ。来てくれてありがとう。その柔らかい毛に頬ずりする。ロリィが動いて私を見る。
「泣いてるの?」
「向こうのことを思い出して…」
「大丈夫?私は家族にはなれないけど…」
「ナビィが来てくれたから」
優しく頬を撫で、まぶたにキスしてくれる。
「皆んな待ってるから…起きようか」
私は頷いてロリィのおでこにキスをする。この3日間、本当にありがとう…この想いを込めて。
ロリィは眩しい笑顔で
「イルに会えて僕の世界は広がったよ…君に会えて良かった。一つになれて良かった。これからもずっと…」
そう言って起き上がった。その白くて細い体の美形は爽やかに微笑んだ。
私はナビィを起こして立ち上がり着替える。ナビィは大きく伸びをしてから体をプルプルして私に飛びついてきた。あ、はいはい。朝の挨拶だね。うんうん、ナビィ…大きさね、そう大きさ。前のちったいナビたんじゃないんだよ?
うん、ほどほどにね?そうそう。
ナビィの唾液でベトベトになった私は洗浄して顔をきれいにすると食事の用意を始めた。
あ、卵がもうないかな。また買わないと。
朝はハムとスクランブルエッグにスープと果物だ。ウルフたちには肉を焼いてあげる。
食べ終わったらテントを片付けてユーグ様の元に向かうことに。するとナビィが
『私に乗って』
でも…ナビィ。大きくなってもね、その…言いにくいんだけど。脚がね、ナビィはほら。ちょっと短いから。だってミニチュアダックスだからさ。元は。そのまま大きくなったからね…。
『アイリー大丈夫。飛べるから』
…何て?飛べるとな?
『そう飛べるのーだから乗ってー』
無邪気なナビィ。飛ぶのか。
(黒曜犬は空を翔ける伝説の犬)
もう何だかなぁ。せっかくだし乗っとくか!ロリィを見ると笑いながら
「イルに任せる」
だって。私は色々諦めてナビィに跨った。
「重くない?」
『大丈夫、ロリィも乗って』
「うん」
こうしてグレイと別れ、ナビィに乗ってユーグ様の元を目指した。
『行くよー!』
こうしてナビィは空を翔けた。早くて高い。ブランに乗って飛ぶのとは全く違う。本当に翔けていた。
瞬く間にユーグ様の元に辿り着く。
空から降りて来た私たちを見て皆が驚いている。といってもハクやブランは驚いていない。気配で分かったのかな。
ナビィから降りた私たちを見てイリィが驚くのが分かった。私を見てロリィを見てナビィを見てまた私を見て…走って抱きついてきた。
「アイ…ぶ、無事で…?」
「イリィ、心配かけてごめんね…」
私はイリィの頬を撫でてからそっと抱きしめる。イリィは縋り付くように抱きついて来た。
足元にハクの気配がした。イリィを抱きしめたまま目線を足元に移すとハクがその背を私に擦り付けている。私は手を伸ばしてハクを撫でる。ハクは私を見てからナビィを見ると鼻と鼻で挨拶をしていた。可愛い。
ブランは肩に止まって胸毛を頬にすりすりする。可愛い。そのふわふわにキスするとブランもナビィの所に言って挨拶をしていた。
ミストはハクの首元のポーチに収まっていてナビィと鼻で挨拶している。可愛い。
私はイリィの涙を指で拭ってその頬にキスをする。
「イリィ、ちゃんと帰って来たよ」
イリィは涙で濡れた目で私を見ると
「ロルフ様との子が…」
そこまで言ってまた泣き始めた。私はどう声を掛けていいか分からなかった。
泣かせているのは私自信だ。ただ黙ってイリィを抱きしめている事しか出来なかった。
ロリィはラルフ様に抱きつかれていた。そうだろうなぁ。でもイリィが知ってるのならラルフ様も知っているのだろう。ロリィも私と同じように困った顔でラルフ様を抱いている。
定めとか神の意志とかそういうことでは無く、キチンと説明しないと。子が実ったのは事実で、間違い無くロリィと私の想いの結果なのだから。
『愛し子よ、良く戻った…』
ふわりと風が起こりユーグ様が姿を現した。
「ユーグ様…ロリィのお陰です」
『知っているよ、私は全て…良く乗り越えたね。ロルフも愛し子を守ってくれてありがとう』
「いえ、私の意志。そして私も守られた…」
『それは君が命を掛けて守ったから。どれだけの防御をかけていても…病には勝てない。彼自身が作った薬を飲まなければ』
「彼の薬?」
『鎮痛剤だよ、あれは全ての病を治す』
「そうだったのですね」
『知らなくて当然だよ…だから君が居なければ愛し子はとても危なかった』
「わたしが助けたかった。それだけ」
『そうだね、だから子の実が成った。さぁその手に託そう』
ユーグ様から水色の光が溢れロリィの手に、両手に乗るくらいの実が渡された。それは水色に光る白銀の実だった。
皆がその実を見つめる。ロリィは優しく撫でると私に向かって来て、そっと手を差し出す。
私はロリィの手の上からその実に触れる。途端、眩い光が周囲に溢れ私たちを包み込んだ。
その実は暖かで懐かしい感じがした。ロリィと目を合わせると、一緒にその実を撫でる。
「この子の名前はアイリーンだよ」
アイリーン、私の名を…。
「アイリーン…ありがとう、ロリィ。素敵な名」
私に淡く微笑み家族の元に行く。
イリィは私の手を取って握りしめる。その手は冷たくて震えている。
『イーリスよ、それも定め。お前たちの絆は試され続ける。我が愛し子を頼む…』
イリィはハッキリとユーグ様に言う。
「はい、決して手放しません」
私はイリィを泣かせてしまう。一緒にいることは苦しい?私はイリィを悲しませてる?
イリィは首を振る。
「アイは僕に新しい人生をくれた。一緒にいる喜びの方が大きいよ…ずっと共にいる。だから信じて」
私は頷いてイリィに抱き付く。
「うん、私も必ずイリィの所に帰って来るから…だから待っていて。何があっても必ず戻るから」
その頬に手を添えてキスをする。何度も…。
自分に課せられた運命は共に過ごすイリィも巻き込んでしまうけど、側にいると誓ったから…必ずここに戻って来るから。
『さて、また珍しい子だね…ナビィ。あぁ、愛し子の家族か。また遠い所を旅して来たんだね。どれ、加護を授けよう』
『ユーグ、ありがとうー何くれるの?』
ナビィはしっぽをブンブン振る。
『どれだけ離れていてもアイルの側に飛べる転移魔法とかどうかな?』
『やったー!ユーグありがと』
えっとナビィちゃん…ユーグ様を呼び捨て?
『愛し子よ、彼女もまた神の使徒。私とは違うが神の意志を具現化する存在。上でも下でもないんだよ』
ほぇーナビィちゃんってば偉い子なの?まぁ、でも変わらないか…。私の可愛い家族だ。
私はイリィを抱きしめたままナビィを撫でる。
「イリィ、私の家族だよ。私を探して会いに来てくれたんだ」
「ナビィ、私の大切な…やがて家族になるイーリスだよ。仲良くしてね」
「ナビィよろしくね…」
『イーリスよろしくねー。うん、アイリの匂いがする…よろしくされたーアイリの家族は私の家族だよ』
しっぽを振ってイリィの手に頭をぐりぐりしているナビィ。
「アイ、神の使徒って?」
「あぁ、黒曜犬って種族?で創造神アリステラ様の使徒らしいよ。伝説の存在だって。こんなに可愛いのにね…?」
あれ?どうしたの。イリィ?顔を覗き込むとイリィが驚いた顔をしていて
「…だからアイ…そう言う所だよ?」
何がさ?
「あ、えーとアイル君。その黒曜犬と言うのはね…アリステラ様と共に教会の絵に描かれている黒い犬で…アリステラ様の唯一の僕と呼ばれている。
この世界を創造する時に、苦楽を共にした伝説の存在だ」
ほえーでもナビィたんは私の部屋で寝てたよな?苦労して国を創ってないよな?
「あの、その黒曜犬って足が短い?」
『アイリー何かな?私の足が短いとでも?』
「こほん、ん、んっまぁそのな…それなりに短め、かな」
ぶはっ…あ、ごめん。だからごめんて…うわぁ押し倒さないで。悪かったよ。
皆んな微妙な顔してるよ…。あ、イリィが我慢できなくなった。お腹抱えて笑ってる。凄いなぁナビィは。昔から家族が微妙な空気になってもナビィがくしゃみをするだけで皆んな笑ってたね。あぁ、変わらない。大好きだよ…ナビィ。
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