130.ダイヤモンド鉱山
ロルフ様が来た翌日、朝目が覚めると今日は淡い金髪×1だった。流石に昨日はそのままイリィの胸に抱かれて寝た。優しく力強いその鼓動を聴きながら…。
何故か朝起きると私の胸にイリィが抱きついて寝ている。不思議の1つだ。どんな体勢で寝ても、朝は必ず私が抱き枕だ…いつの間に入れ替わってるんだろ?
瞬きしてその淡い金髪を撫でる。細くて少し冷たいイリィの髪。ロルフ様…髪の毛洗ったよな?
まぁ後で聞こう。私はイリィの頭にキスしてそっと起き出した。
ロルフ様の朝食の為に魔鳥の卵を取ってこよう。ハクも美味しいから食べたいって言ったし。
魔鳥は大きな鳥で卵も大きい。だいだい6個産むんだけど、たいていは生まれる前に死んでしまう。たくさんの魔力を吸収する必要があるから、同じ場所にいるより力の強い卵が生き残るのだ。
弱った卵は死んでしまうので、その前に取って食べる。強い卵は危なくて食べられないらしい。
で、ちょうど弱ったのがいるからとハクと取りに行った。
腕に抱えるほどの大きさの卵。持って帰ると休憩室にイリィとロルフ様がいた。イリィがフードを被っていない?
「ロルフ様おはようございます。イリィ、取ってきたよ」
「アイル、おはよう。何を取ってきた?」
「アイ、お帰り…早かったね」
「魔鳥の卵です。ハクが親鳥の気を引いてる間にね。1番弱ってる子を…多分もうもたない」
「ハクの言った通りだね」
「うん、有り難く頂くよ」
そう言ってその場で調理を始める。ロルフ様がそれを間近で見ている。
私は卵を割ってから塩とレモングラスを加えてかき混ぜる。
底の浅い鍋に油を引いてから卵を入れてかき混ぜる。もう一つの鍋では暖かいスープを、もう一つの鍋では肉の塊を切って焼いている。
お腹が空いたな…。
部屋の奥からハク、ブランにミストがやって来る。グレイも一緒だ。
出来上がったスープ、パン、焼いた卵とお肉に、新鮮な野菜。ざ、朝食だね。
机に3人で座り、ハクたちには低い台が用意されてそれぞれお皿によそう。
スープは温かくてなめらかなミルク足。卵は塩とレモン風味のあっさりした味付け。でも卵の味が濃くて美味しい。肉は香ばしくて野菜はしゃきしゃきで青臭さがない。
ロルフ様は完食していた。イリィはその見かけによらずたくさん食べる。
私は変わらず少量食べた。ハク様たちは凄く食べる。そもそも食事はいらない筈だけど…美味しいからかな?それなら嬉しいな。
食べ終わると
「ロルフ様、髪の毛を洗う石鹸の話をしてなくて…」
「うん、分からなかったから…」
えっやっぱり洗ってない?
「洗ってない?」
少し恥ずかしそうに頷く。言ってくれれば…。遠慮したのかな?申し訳ない。
「今からでも良ければ…」
「うん…お願いする」
後片付けをイリィにお願いして脱衣室に向かう。ロルフ様はまたしても躊躇なく裸になる。
「アイル…自分で出来るように…練習台になって?」
私も入るの?ロルフ様は近づいて来ると私の服を脱がせる。待って待っ…遅いっ。ゆっくりと服を着て脱がされ…そしてその…頬が熱い。
ようやく私の手を取ると脱衣所を出る。そこの椅子にロルフ様を座らせると肩からお湯を掛けて、さらに頭からお湯を掛ける。
そして髪洗い石鹸(アイル作new ジャスミンの香り付き)をロルフさまの頭に付けると指で地肌を指圧しながら髪の毛を洗う。細い髪が絡まないよう気をつけて優しく…。
「ジャスミンの香り…」
薬草の専門家だけあるな。匂いで気が付いたか。
洗い終わるとまた肩から湯を掛けた後に頭からお湯を掛ける。軽く手で髪の毛を整えて終わり。
するとロルフ様が私の手を取って代わりに椅子に座らせる。その側に跪くと
「体はどれ?」
えっ、私の身体を洗うの…?ズイッと寄ってきて
「体は…?」
私は体用の石鹸を指す。ポンプ式だからロルフ様の手を取って支え、上から押す。ロルフ様の手に液体石鹸が溜まる。
それをマジマジと見ると私の肩から胸に擦り付けた。そのまま正面から私の体を撫でるように液体石鹸を塗っていく。
胸から腰、太ももから足先へ。内ももから下腹に向かいお尻を撫でるように洗われる。
イリィにも良く体を洗われるけど、明らかに慣れていないロルフさまの触り方はまた違って恥ずかしい。
だって見て確認しながら洗っているから。
ようやく洗い終わると肩から流してくれる。流し方もぎこちなくて…。
最後に泡が残ってないか全身確認して…いや、足は広げなくても見え、触らなくても分か…。体を洗われるのってこんなに疲れたかな?
すると
「私も洗って…」
椅子に入れ替わりで座ると足を開いて言う。大丈夫です、足は閉じて下さい。
「それだと見えないよ…」
見なくても洗えます…。と思ったら立ち上がった。
「これなら良く見える…」
目の前にロルフ様の下腹部が…いや、あの。目のやり場に困るので。
ロルフ様の場合、素でこれをしているのが恐ろしい。座らせようとしても座らないので目線を逸らしたまま、手で洗っていく。下半身が終わるとようやく座ってくれた。全身洗ってお湯を流す。とまた立ち上がった。
「泡…取れた?」
チラッと確認する。大丈夫です…何故見ている私が恥ずかしくて見られているロルフ様は緩く腰に手を当ててるのかな?
私も立ち上がるとロルフ様が私の手を取ってお湯に浸かる。ち、近いから…。肩が触れる。ビクリとする。そして不思議な感覚がまたした。
『共鳴は…響き合うから…お互いに…ね』
アーシャ様?
『ユウリ様の若木…思いの外、根付くのに時間がかかっている。ユーグ様が案じている。ロルフ…心を止めてはいけない。アイル…受け止めて…』
『アイル、君の肌に触れて…私はやはり君を想うよ。この気持ちを止めはしない。でも進めようとはも思わない。今はそれでいい』
愛おしく思うその気持ちが流れて来る。
『ロルフ様…』
アーシャ様の言葉の意味は分からない。ロルフ様の純粋なその気持ちは抑えてはいけないらしい。
どうしたらいいのか私にも分からない。きっとロルフ様にも正解が分からないのだろう。
私はダイヤモンド鉱山の話をしようと口を開く。
「ロルフ様…ダイヤモンド鉱山の件で来られたんですよね?」
「そう…権利とか決めておかないと」
「私は権利、必要有りません。ただ、ハクの縄張りに入るのでその取り決めを」
「要らない?見つけたのは君だよ」
「私では無くグレイです。きっとミストを託したかったからお礼のつもりで」
「なら余計に君が」
「私には活用出来ません。時々、採取するだけで充分です」
「…権利に絡みたくない?」
頷く。もう面倒ごとは勘弁して欲しい。
「…分かった。私が君の代わりに…その代わりに探索者ギルドに指名依頼を出すよ。出して達成感扱いにするから大丈夫…せめてその報酬は受け取って」
それならいいかな?あまり我が儘ばかりではロルフ様に迷惑だろうし。
こちらも頷く。ロルフ様は私の頬に手を当てると頬にキスしてふわりと抱きしめて来た。素肌をお湯越しに感じる。
離れる時にもう一度キスすると立ち上がった。だから目の前に…下腹部が。
私も慌てて立ち上がると少しヨロけた。ロルフ様がすぐに抱き止めてくれる。
そのほてった体に直に触れてドキドキした。見上げれば間近に整ったお顔が…。
「可愛いよ…」
おでこにキスすると私の手を引いて脱衣所の扉を開ける。私は乾いた布でロルフ様を軽く拭うと風魔法で良く乾かした。髪の毛もね。私は拭きながら自分も乾かす。服を着て少し休んだらダイヤモンド鉱山に出かけよう。
脱衣所を出て居間に入るとペタリと伏せたハクがしっぽだけど振る。イリィにダイヤモンド鉱山の話をすると一緒に来ると言う。
連れ立って温泉を出る。ふわふわと精霊たちが寄ってくる。
(ねぇまた音を聴かせて)
(音を…)(澄んだ音色…)
そういえばオカリナの音に反応したんだっけ?
「出掛けるからまた後でね」
(約束)(約束だよ…)
(アイル…)
(愛しい子)
(知らない子がいるよ)
(さっき来た子だ)
(澄んだ目をしてる…)
(仲間だ)(仲間だね)
(アイルが好きな仲間)
(祝福をあげる)
(森の精霊の祝福)
(木の精霊の祝福があるよ)
(精霊が好む心)
やっぱりロルフ様もなんだな。その曇りのない目は精霊たちに好まれるものなんだろう。
淡い光がロルフ様に集まりふわりと緑の光を放ち、やがて散って行った。
ここは本当ににぎやかだ。ロルフ様は驚きながらも優しく微笑んでその光を目で追った。
視線を私に戻すと頷いたので鉱山に向かう。と言っても私は分からないのでグレイの案内で。
さほど歩かなかったような…見覚えのある鉱山の入り口に着いた。
「ここが…」
頷いてグレイに続き私が先頭で次がロルフ様、そしてイリィと後ろからハクたち。
直ぐにダイヤモンドがキラキラと迎えてくれる。色とりどりのダイヤモンド。ブラック、イエロー、ピンク、ブルー、そして通常のクリアなダイヤ。
ロルフ様が絶句する。
「なんて素晴らしい…これは色が?」
「ブラック、イエロー、ピンク、ブルー」
「色付きとは…未発表だ…」
みたいですね、ビクトルがそう言っていました。
ロルフ様は振り向くと私の肩を掴み
「大発見だよ…君は何を望むの?この国さえ君は手中に治められる…」
いや、国とかいらないです…。平和な暮らしが欲しいかな?
「君は国なんていらないよね…採掘するよ」
一応、危ないので私はロルフ様の近くで採掘する。イリィたちは少し離れた所で。それぞれダイヤを採り始めた。しばらくするとイリィたちから見えないくらい離れていた。そして水の音?
入り口からずいぶんと進んだのかな?ロルフ様は近くでダイヤを鑑定している。私は水の音がする方に近づいた。そして当然バキバキッと何かを踏み抜き、私はその下に流れていた川に落ちて行った…。
そろそろ書き直しをしたい部分に差し掛かります…
更新が少し遅れるかもしれません
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