129.ロルフ様と温泉と2
ちょっと長め…
翌朝、目が覚めたら淡い金髪と白銀の長い髪が目に入る。どちらも私に抱きついている。
目を瞑っていても圧倒的な美形のイリィの…少しクセのある髪とこれまた目を瞑っていても切れ長の目の美形…真っ直ぐな長い毛のハク。
両側から抱きつかれているのと、体が怠いのとで起き上がれない。ハクとの交わりは魔力が循環して調子が良くなる筈なのに…何故だ?
イリィは新しい人生のお祝い、ハクは神獣に進化したお祝い…そう言って本当に寝かせて貰えなかった。
体力のあるイリィとハクでどうぞって思ったんだけどな…。
でも2人?にとって特別な日だから。鍛錬だと思って頑張ったよ…?いや、その…うん。
で、起き上がれない。2人はぴくりとも動かないし…。わたしはそっと息を吐いて目を瞑る。と耳元で
「おはようアル…体がキツい?無理させちゃったね…」
ハクが囁く。私もハクに顔を寄せ
「怠いよ…でも大丈夫…ハクは?」
「僕はアルの魔力を貰って元気だよ!」
私はハクの長い髪を撫でながら良かったと言った。
ハクは甘えるように私の首に鼻を寄せてキスをした。
「あ、ロルフがこっちに向かってる…」
「こっちって…この森?」
「そう、アルがここにいると思って…ダイヤモンドの事だろうな」
「あぁ、確かに。伝えないとな」
「それだけじゃ無さそうだけど…」
「?」
ふふふっとハクは笑ってそれ以上答えてくれなかった。神獣になると何か変わるのかな?力は増してる筈だし。
ハクとヒソヒソ話をしているとイリィが寝帰りを打つ。仰向けになったその顔は本当寝ていてさえ美しい。その頬に手を滑らせ軽くキスする。
イリィが目を覚ました。瞬きすると私を見てふわりと笑った。幼い子供みたいな無警戒な顔。可愛い。
私はイリィにキスする。
「アイ、おはよう…体は?」
「怠いよ…」
「しばらく起き上がれない?」
「うん…」
「無理させたね…」
「お祝いだから…大丈夫」
またふわりと笑って頬にキスすると起き上がった。その裸の上半身と髪をかき上げる仕草が朝の空気に溶けてさらに美しい…。下半身を毛布が覆い、少し見える腰のラインがまた艶めかしいのだ。
とんでもない美形なのに…私のことになると少し残念なイリィが大好きだ。
その腰に抱きついて甘える。優しく私の髪を撫でながら
「まだ足りないの…?」
違います。朝の神聖な空気の中で何を言ってるの?
後ろからはハクが抱きついて来る。こら、腰を抱き寄せないの。色々当たってるから…。神獣でも朝はやっぱり元気なのか…?
なんて考えながら少しまったりした。私はそのまま寝ていてイリィは起き出して食事の用意。ハクは犬、もとい狼に戻った。
朝食を準備するとベットまで運んでくれる。そのままイリィに抱っこされて朝食を食べた。
あの、イリィ…服着たいな。えっ…いや、その…。
「ご飯食べたら温泉に入ろうね…?だから着ても意味ないよ?」
意味はあるよ?私の心の安寧の為…。あ、ごめんなさい。だからそこを撫でないで…そのままイリィにまた押し倒され…迎え酒ならぬ迎え…。
さらにぐったりした私はイリィに横抱きにされ、温泉に入った。
効能は疲労回復。まさに今の私か…?
そんなこんなでなんとか体も動くようになり、やっと服を着て居間で寛ごうとしたら…ハクが
「ユーグ様が呼んでる、イーリスもだ」
と言うので、2人でユーグ様の所に向かった。
「ロルフがやがて着く。グレイに迎えに行かせるから」
と私に告げて出かけて行った。そのまま私は居間でブランの胸毛に顔を埋めているとグレイの気配がした。
『迎えに行って来ます』
私はミストをその背中に乗せる。
「ミストなら分かるから。行ってらっしゃい」
またソファにクタリと背を預ける。どれくらい経ったか、精霊たちのざわめきが聞こえた。ロルフ様かな?あの人も精霊たちに好かれそうだ。立ち上がり温室に向かう。そこにはミストを両手に抱えたロルフ様がいた。
会った頃より青白さが抜けて美形に磨きがかかっている。この人も本当に整ってるなぁ。感心して見た。
温泉に案内するとお湯に手を入れ、その後止める間もなく裸になった。えっえっ…いや待って…腕を捕まえる。細くてしっとりとした肌だ。
「お湯で体を流してから…」
焦ってそんな言葉を言う。違う、言いたいのはそれじゃない!でもロルフ様があぁと頷くので手を引いて椅子に座らせる。
肩から湯を掛けてその白くて細い体を液体石鹸(アイル作new 精油入り)で撫でるように洗う。
全く無抵抗でされるがままだ。手をあげたり足を上げたり…股は自分で開いてたよ?
私が変態だったらどうするんだろう?少しは抵抗しないと。いや、変態ではないよ…?私は。
洗い終わってまた肩から湯を掛ける。そしてその手を引いてお湯に向かう。ロルフ様は私の手を握ったままお湯に浸かる。
「気持ちいいな…」
そのままお湯をじっと見つめる。鑑定中かな?
「効能…」
疲れとかに良く効きます。今朝、身を持って体感済み。
不意に頬に熱が集まる。ロルフ様の裸を見たから?その細くて長い手足と吸い付くような肌。ロルフ様は湯の中から手を出して私の手を両手で握る。
私は目を伏せる。これ以上ロルフ様を見るのは良くない気がして。
ロルフ様は握った私の手にキスをした…何度も何度も。どう反応していいのか分からない。嫌ではないけど…。
私は瞬きをしてロルフ様を見た。目が合う…。頬を染めたまま、そっとロルフ様のおでこにキスをする。
「ロルフ様…とてもきれいです」
そうに言う。
何故そんなことを言ったのか、それは。無頓着に私の前で裸になったロルフ様が危なっかしくて。
「だから、その…人の前で簡単に服を脱いでは危険です」
「君なら大丈夫…」
私ならとかじゃ無くて…ね。
「ロルフ様は自分の美貌に無自覚なんですね…」
「?考えたことない」
くっ…ここにも無自覚美形が…。
イリィも大概無自覚だ。寝癖も気にしないし…服は着られればいいと思ってるし。
おっと、思考が逸れた。
「そのお顔ももちろんだけど…か、体も凄くきれいで…」
「ラルフが良く言ってる…兄様はきれいだと」
ラルフ様はね…ロルフ様が普通のお顔でも言ってそうだよ。でもね…本当に体も美しくて。
「その白い肌も細い体も…簡単に人に見せてはダメです」
「簡単には見せない…君なら見ていいし触っていい。私の体…さっきたくさん触った…」
「そ、それは体を洗うのに」
「全身、触って撫でた…よ?」
「…」
いやいやいや、慣れてるでしょ?貴族だし。それに触って撫でたって…なんか言い方が…。
違うから。困ったなぁ、伝わらない。
「俺もその…一応、年頃なので…」
違う、言いたいのはそれじゃなくて…。
「君なら抱かれてもいいけど…?」
えっえぇ…こちらの世界の美形はわたしに甘くない?
「いえ、そのそういう意味ではなく…いや、抱かれるのも…」
ロルフ様は私に近づき至近距離で見つめ合う。その目はいつものように澄んでいて…でも熱のこもった目だった。
そのまま私の顎に手を添えて唇にキスをした。なんて柔らかい唇なんだろう。そのまま何度もキスをされた。
私は固まってしまい動けなかった。頬をさらに赤く染まり、ロルフを見る。
「そろそろ上がらないと…」
それしか言う言葉が思い付かなかった…。
ロルフ様はまたしても全く隠さず湯から上がった。慌てて乾いた布でその体を覆うと、手を引いて脱衣室に入った。
ロルフ様の少し色付いた体を拭いく。水気がなくなると魔法で乾かした。そしてロルフ様はポーチから服を取り出すとゆっくりとそれを着る。脱ぎっぱなしだった服は私が洗浄して畳んでおいた。お高い服だろうしな…。
私にはイリィがいて、ロルフ様にはラルフ様がいる。それでも何故かロルフ様の側は心地良い。どうしてそう感じるのか、私にも分からなかった。
脱衣室の扉が開く音がする。そこにはユーグ様の所に行っていたイリィとハクがいた。
「ロルフ様は湯に?」
「見たら入りたくなって…」
まだ頬が熱い私にイリィが寄って来て頬に手を触れる。
私は淡く微笑む。イリィは私にキスしてくれて
「ユーグ様に会って来たよ」
「何の用事だったの?」
「ユウリ様の若木の事…根付く為に必要な事をね…」
イリィ、ロルフ様に聞かれていの?イリィがロルフ様を見て
「そうです、僕は守り人の一族。白の森の管理者。ユウリ様は亡くなり、若木を残された。その若木を根付かせる為にロルフ様の力が必要です」
「…私の…」
「無垢なる魂が多く必要だとユーグ様が。僕とアイだけでは少し足りない。生命樹を根付かせるのはとても大変だから…。
その為にロルフ様の協力を仰ぐようにと」
「すぐに答えられない…父上にも、母上にも…ラルフにも…」
「はい、来られるのなら合流地点はカルヴァン侯爵の領都で」
ロルフ様が頷く。
その後、ロルフ様を私たちの住居に招いた。何故か精霊や妖精はここにもいる。何でだろ…?
すると何処からかアーシャ様が現れた。
『ふむふむ、君もまた透明な心をしているね。ユーグ様が指名する訳か…では僕の祝福も授けよう』
そう言ってロルフ様の唇にキスをした。
『創造神アリステラ様の眷属…精霊主アーシャの祝福を与える。この無垢なる魂に…アイルと共鳴せよ』
ふわりと光がロルフ様包む。
待て待て待て、アーシャ様はアリステラ様の眷属?精霊主?情報が多過ぎて混乱中…。えっ?私は神の眷属を体に…?…。考えちゃいけないヤツだな、うん。どこかに放り出しておこう。
あれ?共鳴って…。
ロルフ様が驚いてこちらを見る。私の声…どうやって?
『ロルフ様に聞こえてる?えっ…』
『共鳴させたから…閉じれば聞こえない』
アーシャ様…閉じるってどうやって?って…沈黙しちゃうの?
『アイル…君と繋がってる…?嬉しいよ…』
『ロルフ様…なんか恥ずかしいです』
『どうして?』
『考えてることが伝わるから…』
『伝えて…たくさん』
そう、私は驚きと恥ずかしさと喜びと色々な感情が渦巻いていて、ついロルフ様の裸を見た時の…なんてきれいな肌とか長い手足とか、滑らかな肌とか…。
だから考えたら聞こえるから…。焦れば焦るほどそのなめらかで白い肌と唇に感じた柔らかな感触を思い出してしまう。
頬を染めて目を伏せ密かに悶絶していたら、イリィが心配して
「アイ、共鳴って?」
「考えてることがそのまま伝わるみたいで…」
恥ずかしさからイリィに涙目でしがみついた。
『僕の気持ちも伝わるかな?アイル、君が好きだよ…私は君の為ならなんでもしたい…君の大切なイーリスの為にも…』
ロルフ様…聞こえてます…。頬の熱が収まらない。
ロルフ様が私を大切に思ってること…私を抱きたいと思っていること、そしてその気持ちを抑えようとしていることも…。
私はロルフ様を見る。敬愛の感情を込めて…。そして感情を閉じた。
ロルフ様からは変わらず私を慈しむ気持ちが伝わって来ていた…。
その後は私が消えた後の話しを聞いて、食事をするとロルフ様は早めにに休憩室のベットで眠った。
もちろん、食後にはお湯に入って…。
そして私が作ったあの黒砂糖もお披露目。冷たいクリームにのせて…お湯上がりのほてった体にとても美味しいよ、と笑ってくれた。その透明な眼差しに頬が染まる。
そういえば髪の毛洗えたのかな…?寝る時にそんな事をふと思った。




