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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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115.ロルフの帰還

ちょっと長めです。

色々とやらかして統合したため。

 その日は兄様と領都のお店を回ったり、薬草園を見たりして過ごした。兄様と居るだけで楽しい。その横顔を見て、兄様の目線を追って同じものを見る。

 時々、視線があって緩く微笑んでくれる。


 そんな兄様を見て頬を染める女性が多数いる。仕方ない、兄様は素敵だから。なのに兄様は

「皆んなラルフを見て…照れている」

 違うよ。兄様を見てるんだ。分かるよ、兄様の周りは空気がきれいで…澄んで見える。その有り様がそう見せるんだ。ほら、また…。自然と目で追ってしまう。

 その兄様が僕と…。夢じゃないよね?兄様…。


 その日の夕食は豪華だった。

「お祝いだからな」

「私たちの子供が…嬉しいわ。あなた達が結ばれて」

 兄様がくれた花は花瓶に入れて飾ってある。後で僕の部屋に移動してくれるって。

 大切にするよ。僕の名前の由来…その花を。


 その夜も兄様を抱きしめて寝た。柔らかくて温かなその体はずっと抱いていたい。眠りにつく時はかならず僕をその腕に抱きしめてくれる。小さな頃からずっと…。兄様に誇れる自分で有りたい。

 その為にもアイルに許して貰わなくちゃ。

 そう決心した。


 久しぶりにお父様とお母様と兄様と4人で食事に行った。一見、何も変わらない家族。でも本当の家族になったんだ。兄様は優しく僕を見て、今までも家族だったけど、さらに強い絆で結ばれたね?と言ってくれた。

 僕は本当の居場所を見つけられたよ、兄様のお陰で。ありがとう、そして大好きだよ。


 3日はあっという間だった。

 いよいよゼクスに行く。隣の領主には僕らのことを伝えてある。

 着いた日の翌日にフェリクスたちとアイルたちと打ち合わせだ。私は同席出来るか分からないが、話を聞いて欲しいと思う。

 そうお父様と兄様に伝えた。会いたくないと言われたら諦めるようお父様からは釘を刺された。わかっている。

 こうしてお母様に見送られて馬車に乗った。

 フェリクスから新鮮な牛乳が欲しいと言われていたからそちらは荷馬車に牛ごと載せて一緒に出発した。酪農家たちの代表がが自ら運ぶ。


 新しい販路を確保出来る可能性にかけて。牛乳は日持ちしない為、あまり外に運べない。近隣なら何とか運べるが量が出ないから。

 今回は牛乳だけではなく、やたらと生えるけど使い道のない大量の草を持ってきて欲しいと言われた。その茎は細くて硬い。刈るのも大変だしすぐ伸びるし。 

 それと思われる絵を伝書鳥が持って来て、もし、そちらの領地にあればなるべく多く持ってきて欲しいと言われた。


 気候的には寒冷地だが、地脈の近くは土の温度が高くてその周りにやたらとその草が生える。

 刈り取ってもじゃまなだけなので、近くの農家は喜んで持ってきた。それを積んでいる。何かに使えるのなら喜ばしい。


 朝日が登ると同時に領地を出発した。それでも荷馬車と行くので、8時間ほどかかる。休憩を入れながらでも何とかお昼過ぎには着けるだろう。

 まずは明日の打ち合わせだ。

 私は兄様と隣り合って座っている。兄様は寝てていいよ?と言ってくれる。

 兄様のそのきれいな顔を見て、頷いてから肩に寄りかかって目を瞑る。兄様は優しく髪を撫でてくれて…。

 うとうとしていたようだ。


 兄様を見ると外を眺めている。その透明な目は何を見ているのだろう。ふと気がついて僕を見る。その手で頬を撫でてくれる。

「少し眠れた…?」

 頷く。淡く微笑むとまた窓の外を見る。僕はまた兄様に寄りかかって目を瞑った。


 2度ほど休憩をしてようやくゼクスの町が見えて来た。兄様は僕の肩を抱いて目を瞑っている。その髪が僕の耳にさわりと触れる。その少し冷たくて柔らかな髪の感触を僕は楽しんだ。

 西門を通過して兄様の屋敷に向かう。ゼクスの町も感謝祭に向けて賑やかだ。


 その日、兄様の屋敷には14時頃着いた。兄様はギルドにその足で出かけて行き、夕方に戻って来た。

 その日は早めに夕食を食べて兄様に抱かれて眠った。

 大好きな匂いに包まれて…。




 私は屋敷に着くと、そのまま探索者ギルドに向かった。着いたら顔を出すようイザークから伝言があったからだ。

 裏の馬車寄せに着くと中からギルマスが出て来た。

「よぉ、遅かったな。色々あったようだが待ちくたびれたぞ」

「待たせた…」

「ま、そのなんだ…おめでとう、でいいよな?」

「ん。ありがと…」

「屋台の名前、アイルに早く決めろってよ」

「お前ら後援だからな」

「分かってる…アイルに会いたい」

「あータイミング悪いな。昨日、イザークがやらかして…ちと宜しくない」

「イザークが?」

「あぁ、まぁアイルのやらかしが発端だが」

「でも、今日どうしても会いたくて」

「明日の打ち合わせ前にか?」

「ラルフの同席を許して欲しい」

「あー、どうだかな」

「彼の泊まる宿に行く」


 ロルフがアイルに会っても、打ち合わせのことを聞いていないと冷たい態度をされて残念な気持ちで屋敷に帰ったロルフだった。




 打ち合わせ当日の朝、アイルは…



 ハクと走りながらファル兄様たちが滞在する屋敷に向かう。門の所にイリィが待っていた。そのまま抱きつく。スンスン…イリィの匂いだ。森の中みたいな落ち着く匂い…スハー。うん、あれ…?耳元で同じようにスハーっと音がする。

 イリィが離れ際にキスしてから私を見る。今日も可愛いよ…イリィ。柔らかく微笑むと手を繋いで裏の訓練場へ向かう。


 すでに兄様がたは体を動かしている。

「おはよう」

 お互いに挨拶すると昨日と同じようにアップで走り始める。今日は5週過ぎても大丈夫だ。魔力が体を巡っているのが分かる。最後は息が上がったけど、イリィからそれほど遅れずに走り終えた。


「今日は大丈夫かい?魔力の巡りがいい…?」

 ファル兄様に聞かれる。私はその理由に思い当たるので頬が赤くなる。

『僕の魔力と混ざり合って巡ったからね。調子はいいはず』

「なるほど…ハク様の魔力が…。どおりで。いや、素晴らしい。ハク様とは契約者しか交わらないのですか?」

『僕の気持ち次第だよ。契約者以外と子は成せないけどね』

 えっ…ファル兄様はハクと交わりたいの…?

『誰でもいい訳じゃないよ。イーリスとは考えてもいいけど…アルと一緒ならね』


 えっ、えっ…?一緒に?それは…ダメ。恥ずかし過ぎる。ハクとの交わりは気持ち良くて、どんな顔になってるのか不安だし。でもそんなイリィを少し見たい気持ちもあったり…。

『僕は3人でも構わないよ…第3者目線でアイを観察出来るなら…ね?』

 いやいや、ね?じゃなくて…。

()()鍛錬もその方がより捗るかもよ?」

 イリィ…やめて…。

『アル、僕との交わりなら体調が整うんだからいいんじゃない?今日の夜に試しで』

 試しで、とか軽いノリですることじゃないよ?


「う、うん…次は型の訓練かな?」

 全力で話を逸らす。だってファル兄様もシア兄様もベル兄様も身を乗り出して聞いてるんだもん。

 目をキラキラさせて…。その内、皆で…とか言い出さないかと不安だよ。

「型の訓練だな。私の動かす通りに…違う時はシアとベルが直して」

「「うん」」


 本当にファル兄様もイリィも簡単にやってるけど難しい。後からベル兄様が、手を添えて直してくれる。シア兄様はよろけそうになると腰を軽く支えてくれる。

 どちらも補助なのでごく軽く触れて。何も持って無いのに…キツい。無駄な力が入ってるから余計だろうな。反復しながら一通り終わる。

 ふぅ…キツい。

 上がった息を整えながら魔法で水を出して飲む。


 次は木刀を持って素振り何だけど…すぐに腕が上がらなくなりそう。

 ファル兄様のさ、やろう!の掛け声で立ち上がる。渡された木刀はずっしり思い。

 皆はまるで紙切れみたいに振るけど、結構重いよ?凄いなぁ。あんなに細いのに筋肉付いてるなんて。見た目もマッチョ感ゼロだよ?イリィなんて腕も足もほっそりしてるし。なのにしっかり振れるんだよね?


 はい、予想通り…まともな型で振れたのは10回だけ。後はもう持ち上げるのも腕が震えて。さらに足も踏ん張れなくてぷるぷる…。まだまだ…だな。

 皆んなブンブンと綺麗な軌道で振ってるよ…。

 私はここで脱落したのでハクにもたれて見学。皆カッコいいなぁ…。


 こうして朝の鍛錬は少しだけ成長して終了。イリィとまだダウンに軽く走りながら宿に帰った。

 宿の扉を開けるとブラッドさんが立っていた。

「イザークから伝言だ。今日の午後1時から領主様のお屋敷で打ち合わせ。12時過ぎに迎えに来るから昼は食べずに。()()来るように、と。伝えたぞ」

 なんだか一方的に言われて嫌な感じだ。ムスッとして答えないで部屋に戻った。皆んな自分勝手だ。私の意思なんて無視で…。行きたくない。


『嫌なら行かなければいい』

 ハク…いいの?

「僕も行かなくていいと思う」

 私は考えて頷く。そうだね、感謝祭だって私には直接関係ないし。

 イリィは工房に行くと言うので私も着いていく事にした。守られなくていい…。縛られるくらいなら飛び立ってしまえ。

 スーザンが運んでくれた朝食を食べると

「出かけてくる。夕方まで戻らない」

 そう告げた。スーザンは朝のやり取りを見ていたから何か言いたげだったけど何も言わなかった。


 私たちはイリィと一緒に工房に行く。途中でレオとルドとすれ違ったけど隠密でやり過ごした。彼らに迷惑がかかるからね。知らない方がいい。

 その日はイリィはブロンズを使った食器を、私は精油を使った石鹸とかをそれぞれ作って過ごした。

 疲れたらソファでハクを抱いて寝転んで…。

 イリィとカモミール茶を飲んだり。まったりゆったりの楽しい時間を過ごした。





 その頃…

 お昼過ぎに訪ねたゼクスの宿にアイルたちはいなかった。

 イザークはスーザンに

「いない?何でだ?伝言はしてあっただろ?」

「今日の朝な…」

「しかし、事前に…」

「おい、打ち合わせの前なら全部事前に、になんのかよ?きょうの朝だぞ?アイツらの都合考えてないだろうがよ?」

「それは…しかし貴族家が揃うのは簡単ではなく…」

「それこそアイルには関係ないだろ?お前らの事情なんて」

 俺はそれ以上言葉を繋げなかった。そうだ、彼には関係ない。私たちに彼は必要だけど、()()()()()()()()()()。その通りだ。

「お前らアイツに甘え過ぎだ。お前たちに都合のいい駒じゃないんだぞ?」


 私は頭の中がぐるぐるして言葉が出ない。

「アイルが明確に拒否した。ただの我が儘じゃないことぐらい分かるだろ?アイツがやらかしてるのはその通りだが、それで不幸になったヤツはいるか?助けられてるだろ?なのに便利に使いやがって。もう帰って来なくても驚かないぞ」

 私は無言のまま宿を後にした。


 ダナの屋敷に戻ると、1人で帰って来た私を見てフェルが駆け寄ってくる。

「イズ、アイルは…?」

 俺は力なく首を振る。

 ギルドにロルフ達が戻ると連絡があったのが一昨日。行き違いで俺は帰った後。屋敷にも連絡が来ていたが遅くに連絡が来たので、執事が遠慮して昨日の朝にダナに伝えた。ギルドに連絡済みと聞いてこちらも伝わっていると思い込んでいた。

 昨日、町に着いたロルフからアイルが今日のことを知らないと聞いたのが昨日の夜遅く。


 全ては言い訳だが…。

 私とフェルはダナにそのことを伝えに行く。

「アイルは?」

 首を振る。

「今朝伝えたのですが…」

「昨日の時点で知らなかったとは…まさかギルドも連絡していないなんてな…」

「もう直ぐシスティアたちが来る…」

 皆で黙ってしまった。話の要であるのに、そのアイルがいない。昨日も泣かせてしまったし…。


 程なく、執事がロルフたちが来たと知らせて来る。応接室に案内して貰う。しかし、アイルはいない。

 扉が叩かれて開く。そこにはロルフの父親である現侯爵システィアとロルフ、ラルフがいた。

 部屋に入って来るとお互いに挨拶とお祝いを口にする。

 部屋を見回してからシスティア様が

「アイル君はまだかな?」

 質問した本人以外が固まる。

「実は…連絡の行き違いで彼は出てしまって…」

「何だと?話の要じゃないか?牛乳もあの硬い茎も…新たな販路になるかもと責任者まで来てるんだぞ?」

「…」

「それらは何に使うんだ?」

「牛乳は弾けるキビの味付けに…」

「誰の要望で?」

「屋台の調理担当から…だが、多分…発案はアイルだろう」


 システィア様は頭を抱えた。

「連絡が遅れただけだろう?」

「…」

「ん?何かあるのか?」

「多分…ラルフのことも…昨日…とても」

「いや、それもだろうが俺、いや私も昨日…」

「お前たち…アイルは聖獣様の契約者だろ?何やっているんだ?」

「彼は色々と発案したり…嫌とは言わずにやってくれるので…つい甘えていたようです」

「それで済む話か?」

「…」

「聖獣様は怒っていないか?」

 誰もが答えられない。


「彼には私から会いに行こう」

「それはやめた方がいい。押しかけるなど…」

「ん?自ら会いに行ってやるのだぞ?」

「それだよ。貴族に会うことを()()()()()()()

「彼が会いたいと思っているのなら別だが…そもそも貴族と関わりたく無いんだ」

「そんなはず…」

「必要ないだろ?彼には2体の聖獣様が付いていて、さらに精霊の祝福もある」

「生命樹の祝福も…」

「何だと…?」

「精霊の祝福は知らない…」

「しかも森の高位精霊だ…霊獣まで側にいる」

 全員が黙ってしまった。改めて彼の周りを固める聖獣や祝福を…1人で容易く国どころか世界をその手に握れる。その存在を。


 更には森人まで側にいる。その中でも生命樹を守る種族である守り人。その希少性と能力の高さにどの国も彼らには手を出さない。もちろん、一部のすでに滅びた国は別だが。

 その一族の長が彼に付いている。もうその戦力たるや…。なぜ忘れていたのか…。

 彼があまりにも普通だから。そして優しくて…彼の側は心地よいから…。つい…。


 システィア様も黙ってしまった。

「我々は傲って居たのだろうか…?会ってやると…知恵を貸して貰っているのに…」

 また無言の時間が過ぎる。

「彼に会いに行くのはやめよう。とにかくその、屋台の調理をしている事情を知っている誰かを呼ばないか?」

「調理を手伝っているギルド派遣の探索者なら…スーザンは無理だと思う」

「屋台の調理を主導している、宿の主人だな?」

「うん、さっき彼にアイルはお前たちの便利な駒じゃないと…」

「…」

「恩恵を受けているのはそちらだけだとも」

「…」

「そのギルド派遣の探索者連絡出来るか?」

「今からギルドに行って来ます」

 こうして私はブラッドかサリナスを探しにギルドに行った。

 俺がいない間に屋敷で起きたことは後から知ることになる。


 ギルドに行って確認すると、2人ともスーザンの所にいると言う。すぐにゼクスの宿に向かう。

 扉を開けて厨房の方に向かう。すると厨房からちょうどサリナスが出て来た。

「サリナス、牛乳が何に必要か分かるか?」

「分かるぞ。俺とブラッドの担当だ」

「今から急ぎで来て欲しいんだが、どうだ?こっちは抜けられそうか?」

 厨房からスーザンが出て来る。ダメだと言われるかと思ったが

「こっちは大丈夫だから行ってやれ」

 俺はスーザンに頭を下げた。

「頭を下げる相手が違うだろ。俺はアイツが見つけた物を形にしたいだけだ」

 そう言って厨房に戻って行く。サリナスは不思議そうにしながらもブラッドを呼んで直ぐに馬車に乗ってくれた。


「ふぅ」

 思わずため息を付くと

「新婚がシケタ顔してんな?」

「…」

「あのアイルか?」

「朝、俺が伝言を伝えたら…返事もせずに部屋に行ったぞ?この辺りが突然寒くなって…」

 あぁハク様が怒ってるのか…。私は青ざめた。ハク様が怒ったらもう止められないだろう。

 暗澹たる気持ちで屋敷に急いだ。




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