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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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108.体を鍛えよう

 この町に飛ばされた他の人たちを探す決心をした。本当はまだしばらく知らないでいようと思ったけど…やっぱり知っておくべきだと思ったから。


 それをハク、イリィ、ブランに伝えると

『アルのしたいようにすればいい』

『アイ…大丈夫。何があっても支えるから』

『きゅぴぴ(僕はアルの味方だよ)』


 皆んなありがとうと心の中で言う。


 とはいえ、感謝祭までは後2週間と少し。しばらくは動けないけど。

 この時すぐに動かなかったことを後で悔やむことになる。そのことをまだアイルは知らない。


 ファル兄様たちが借りた家に着いた…。家なのか…むしろお屋敷では?そこには高い壁に囲まれたお屋敷があった。

 ポカンと見上げていると門が開いた。中からシア兄様が出てくる。

「やぁ良く来たね。中に入って」

 イリィに手を引かれて門を抜けるとお屋敷の入り口が見えて来た。

 玄関の扉が開いていてそこにファル兄様とベル兄様が待っていた。


「良く来たね、イーリス、アイル」

「いらっしゃい」

 笑顔で迎えてくれる。

 ん?何で2人とも手を広げてるのかな?と思っていたらイリィがファル兄様の胸に飛び込んで行く。

 えっ…?シア兄様を見ると期待に満ちた目で私を見る。固まっているとシア兄様が近づいてきてガバリと抱きしめられた。

 え?えっ…?そっと抜け出そうとするけどまったく動けない。シア兄様細身なのに凄い力…?

 しかもなんか首の辺りでスーハーって音が聞こえる?

 さらに何か頭をグリグリと擦り付けられてる。

 少しして解放されたけど、その際に顎に手を添えてさり気なく頬にキスされた…。


 と思ったら後ろからベル兄様が抱きついてきて前からはファル兄様が頬を撫でながら昨日ぶりだね、と言って頬にキスをされる。

 ベル兄様苦しい…。腕をタップすると手が緩んで後ろから顔を覗き込むと素早く頬にキスされた…。

 すると横からイリィが私を抱きしめて唇にキスして

「みんな…アイは僕のだから!」

 …イリィ…嬉しいけど恥ずかしいから…。

 ファル兄様はにこやかに笑うとイリィの頭を撫でた。


「さぁ、中に入って」


 イリィは私の手をしっかり握っている。フードを取った顔は少しだけ拗ねてるみたいでそんな顔すらとてもきれいだ。見惚れていると何?というように首を傾げる。可愛いぞ?

「私のイリィは可愛いな、と思って」

 目をパチパチさせると頬を染める。うっ、美形の頬染め伏し目頂きました…。私のイリィが可愛すぎる。

 1人芝居してると部屋に着いた。お屋敷は派手ではないけどとても機能的で居心地が良い空間だった。

 その部屋は居間で、中に招かれる。


 ソファは向かい合うように配置され、側面にも1人がけのソファがある。

 イリィと私、向かいがシア兄様とベル兄様、側面にファル兄様だ。ハクは私の足元にペタリと伏せてブランは肩の上で寛いでいる。


「昨日はお疲れ様だったね。後でイリィに怒られなかったか?」

 私はイリィと目配せする。

「はい…やり過ぎだと」

 優しい目で私を見る。

「誰かの為にって思うとあれこれしたくなるんだね…」

 だって便利かな?って思うとつい。

「アイを泣かせてしまって…」

 えっそれ言うの?恥ずかしいよ…。頬が熱を持ってくる。


「2人とも目が赤いね」

 心配そうにシア兄様が言う。

「大丈夫。悩んでもアイは必ず僕の所に帰ってきてくれる。僕は信じてるから…」

 ありがとう、イリィ。うん、必ずね。


「お父様、今日は鍛錬の話で来たよ」

「あぁ、もう始めるか?」

「感謝祭が終われば森に帰るでしょ?」

 ファル兄様たちは顔を見合わせて

「その事について、イーリスに話をしようと思っていたんだ。アイルも聞いてくれるか?」

 頷く。


「ユウリ様の若木を根付かせなければならない。その為にはイーリスの力が必要だ。契約は断たれたから、イーリスは自由だ。そして、新たな契約は結ばない。それでも…イーリスが1番、生命樹との親和性が高い。それに、アイル…君はユーグ様の愛し子。ハク様、ブラン様と共に訪れて貰えば、きっと何かがおきる。だから感謝祭の後に、2人とも白の森に来て欲しい」


 私はイリィを見て、ハクを見る。

『若木か…まだ根付いていないね。イーリスの力があれば確かに。ただ、なるべく早く愛し子を決めなくてはならない。ユーグ様のように眠りにつくにはまだ若すぎる』

「僕が行けば根付くの?」

「定かではないがね…銀目の子は生命樹との親和性が高いから。もちろんアルもだよ?』


「アイ、ぼくと一緒に白の森に行ってくれる?」

「もちろん。イリィが行くなら一緒に行くよ。ハクとブランもいいよね?」

『もちろん。僕はアルと共にいる』

『きゅぴっぴ(僕も!)』

 私はハクの背を撫でブランの羽毛に頬ずりする。

 イリィを見て微笑む。


「お父様、一緒に行くよ」

「ありがとう、アイル、イーリス。キャルも喜ぶよ」

「キャルは僕らのお母様だよ。キャロライン」

 ベル兄様が教えてくれた。

 それは楽しみだ。イリィを見ると嬉しそうに

「アイに僕の故郷を知ってもらえるんだね。嬉しいよ…」

 おう、美形の照れ…どんな顔のイリィも好きだけど、一層可愛いよ?


「さて、鍛錬だね。朝がいいな。基礎体力をつけるのと型の基本からだな。明日から始めよう。6時にここに来て」


 うっ最近は朝ゆっくりだったから早起きせねば。でも強くなるって決めたから…頑張ろう。


 そこでファル兄様が話をした。

 アイル、聞いてくれるかな?あぁありがとう。

 前にダナン様が話していた通り、私たちは白の森と呼ばれる空白地帯で生命樹を守る一族、守り人と呼ばれている。

 私たちが先祖代々守っていた生命樹は愛し子を持たない。代わりに我々一族と契約をした。

 一族の中に産まれる銀目の子、末の子が18になったら生命樹にその魂を捧げると。魂を捧げた子は生命樹の繭に包まれやがて肉体は朽ち果て、魂は生命樹に融合する。


 銀目は聖獣の目の色…愛し子は聖獣の契約者で、愛し子は銀目なのだよ。

 うん、そうだね…アイル君もだ。

 ハク様やブラン様と君の出会いは偶然ではなく必然だったんだよ。そう、きっとお互いの魂が呼応して出会った。

 ん?そうだねハク様もブラン様も青目だね。しかしそれは特別な聖獣だからだね。銀目の聖獣よりもさらに特別な…。


 話が逸れたね、生命樹と融合してまた次世代の末の子を待つ。

 そうして長い年月が経った。なぜユウリ様だけが愛し子ではなく末の子を求めたのか…分からない。結局、ユウリ様は生命樹の聖なる力を切る闇の剣に倒された。

 命が尽きる前に若木を私たちに託して…。

 最後に、イーリス…やっと君の所に行ける…そう言い残して。


 私たち一族には代々ある物語が受け継がれている。

 それは生命樹に宿る精霊と人間の悲愛だ。生命樹から離れられない精霊と人は交われない。結ばれることのない愛し合う2人が、一緒になる為に選んだのは…精霊にその魂を捧げること。

 そうすれば、やがて命尽きた精霊と人は天上界で結ばれる…純愛の物語。愛する人の為に魂と肉体を捧げる人とそれを涙ながらに受け入れる精霊だ。

 魂を捧げるにはその心臓に剣を自ら突き刺し、肉体が朽ちるまで待たなければならない。

 愛しい人が命を終え、その体が朽ち果てるのを見つめていた精霊の心はどれほどの哀しみだったろうね…。

 それでもやがて一つになる為にはそれしか方法が無かった。

 待ってくれる人を信じて…哀しみに耐え、かたや愛しい人の為に命を絶つ。


 そんな物語だよ…。ユウリ様がこの物語の精霊なのかは分からない。でもそんな気がするんだ。ユウリ様は愛するイーリスに天上界で出会えたのだろうか…?

 うん、そうだね。きっと今ごろ手を取り合って愛しい人と寄り添っているね…あぁアイル君、その通りだよ。

 やっぱり君は本当に優しい子だ。

 ユウリ様とイーリスを思って泣いてくれるんだね…。

 大丈夫、彼らは今…きっと幸せだよ。


 ユウリ様の若木はもうユウリ様ではない。世代は交代した。新しい愛し子を求めるだろう。

 私はね、それは君であって欲しいと思っているんだ。

 えっ?あぁ、それは大丈夫。生命樹の愛し子はね、同じ子でもいいんだよ?

 だって聖獣が少ないし、人と契約する聖獣はさらに少ない。ここに2体も揃うことが珍しいんだ。

 ハク様はユーグ様の聖獣だから…ブラン様なら新しい若木の聖獣になれる。

 今決める必要はないよ。まだ根付いてないからね。

 でもね、守り人の私には分かるんだ。

 きっと君は選ばれる。そんな気がするよ。


 そうだね、今、白の森には我々一族がバラバラに潜伏している。生命樹が宿れば…一体は結界で保護されるから…また屋敷に戻れるし、他の者も元の生活に戻れる。

 私たちはイーリスを探しに来たから。正直、あの地にはもう帰れないと覚悟していた。私の呪いはそれだけ強かったんだ。だからキャルとも最後のお別れをしてきたんだよ?

 それがまさか、ね。アイル君…本当に君には私たち一族、助けられている。

 ありがとう。何度でも言わせておくれ。

 だから君の望むように…強くしてあげるよ。私はそれなりに剣も槍も弓も使える。上級まではすぐだよ?

 え?大丈夫さ。私は優しいからね。期待してくれていいさ。

 そしてこれからも私の大切なイーリスをよろしく頼むよ?


 こらこら、ダメだろ?ベル。えっ?シアまで…。アイル君が困ってるじゃないか。

 いやもちろん分かるさ。イーリスの番じゃなければ私が立候補してるよ。なんなら出会った時に…ね、そのまま私の腕に抱いて。

 いや、イーリス。少し抱きしめて匂いを嗅いだだけだよ?

 ん?そういうけど…アイルには嫌な思い出だろうけど…。可愛かったんだよ?

 うんそう、イーリス。怒らないでくれよ。えっ?あぁ見えたから。

 その細い肩とか腰を見たらダメだって?その時は仕方ないだろ?素肌が触れるのもダメ?わざとじゃないから。うん。分かるよ…。胸に抱いて閉じ込めたくなる。そうだね…。だからあれは…。


 こらこらアイル君が困ってるだろ?まぁ私たちはいつでも…受け入れるよ?イーリスがいいならね。

 う、そうか…ダメか。シア、ベル諦めよう。

 まぁそうだよな。せめて一度くらい…。

 あ、ほらハク様が唸ってるぞ。ブラン様も毛が逆立って…。決して強引には…はい。もちろんです。

 ほら、ダメだろ?すみません。私も調子に乗りました…。

 はい、肝に命じます。


 最後は何かカオスだったけど…ファル兄様の話を聞いて、その精霊と人は結ばれたのだろうか…泣いてしまった。

 そうだね、きっと今ごろは寄り添いあって私たちを見ていてくれるね。




※読んでくださる皆さんにお願い※


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