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異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

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104.衝撃の告白

昨日投稿予定の分です…

夜にももう一話あります

 たどたどしく語られたその内容は驚くべきものだった。突然家族と離された?

 飛ばされた?転移魔法でか…。とても遠くからたったの一人で?


 ダナンは目の前の細くて儚げな少年を見つめた。

 消えそうなくらい希薄なその存在に不安が過ぎる。今すぐ胸に抱いてもう大丈夫だと言ってあげなくては。なぜそう思ったのか分からない。でも彼の心が揺らいでるのが分かる。

 その魂はまだこんなにも脆いのか…。


 私は立ち上がって彼の側に跪くとその細い身体をふわりと抱きしめた。その細い髪を梳いて背を撫でる。

「大丈夫だよ。ここは安全だ。怖がらなくていい」

 私はこの子が消えてしまわないように必死にそう言った。

 膝の上の聖獣様も顎を必死に舐めている。肩の聖獣様はそのもふもふな胸毛を頬に擦り付けて…隣のイーリスはその手をギュッと握りしめて…。

 皆んな分かるんだな。彼が危ういと。


 少しして彼の体から力が抜ける。良かった大丈夫だ。


「すみません。時々、心が帰りたいと暴れるんです。自分でもどうしようもなくて…」

「大丈夫だ…そんな時は周りに頼りなさい。君の周りの人間は君を大切に思っているから」

 目に涙を溜めて頷く。

「それにこういう時に言うのはありがとう、だよ?」

 彼は目を見開いてから

「ありがとう」

 それ、良くおじいが言ってました…。呟くように言って涙を流した。

 その涙を拭ってやりながらどうしたら守ってあげられるか、と考えた。





 ダナン様の前で泣いてしまった。恥ずかしい…。ダナン様はもちろん私のお父さんより若くてカッコいいけど、やはり思い出してしまう。

「愛理はお父さんの可愛い娘だよ」

 屈託のないその顔はもう見ることが出来ないけど。もしあの世で会えたなら、たくさん頑張ったねって褒めてね、お父さん。


 落ち着いた所でダナン様とフェリクス様、イザークさんがハクとブランに頭を下げた。胸に手を当てる正式な礼だ。

『そういうのはいらないよ、僕はアルの契約者のハクだよ。アルに手を出さなければ何もしない。

 彼の国は結果的にアルに酷いことをしたからね…やがて滅びる』

「彼の国ですか?」

『そうだよ?全ての聖獣と精霊はあの国で()()()()()()()。全ての祝福は取り去られた。もう滅びるだけだ』


 私は後でハクに聞くことにして無言でいた。

「アイル君に酷いこと…?」

「彼は私を助けるために捉えられて…」

 ダナン様が手を上げてそれ以上は言わなくていいと伝える。

 私は震えながら固まっていた。ハクが私を舐める。大丈夫、大丈夫だよ?イリィ、ハク。


 顔をあげた三人は改めて

「いや、アイル君、君はとてつもない力があるんだね」

 私の力ではないけど…?

「君の力だよ。ハク様だって君だから契約したんだ。その穢れなき魂に惹かれて」

『そうだよ、アル』

 そうなの?なら嬉しいよ。ブランもありがと。もふもふな胸毛が柔らかくて…。


 場が和んだので今日の本題だ。とそろそろお昼ご飯の時間かな?

「ん?時間が経つのが早いね。お昼を食べようか」

「屋台で出す予定の試食を預かってさっき渡しました」

「ならここで食べるかい?」

「それがいいかと」

 ダナン様が手を叩くと執事がワゴンを押して素早く入ってくる。あっという間に紅茶を片付けて屋台のメニューを乗せていく。スープはここで用意してくれたみたいだ。

 あっ、キビスープ作れば良かった。すっかり忘れてたよ。いや、乾燥したのがあるか。

 わたしは執事さんに声をかける。お湯が欲しいと。

 怪訝な顔をしながらもポットを渡してくれる。ダナン様が目配せすると執事さんは退出する。


「お湯は何に使う?」

 私はポーチから乾燥キビスープの素をだす。カップに入れてお湯を注いでスプーンでかき回す。それをイザークさんに渡した。

 三人で眺めてからイザークさんがスプーンに掬って飲む。目を開く。

「美味い!」

 横からフェリクス様が口を出してイザークさんが掬って食べさせた。えっ?あーんなの…?

「美味しいな」

 さらにダナン様がイザークさんの手を取って口を開ける。へっ?またあーん??

「凄く美味しいな」


 貴族はやっぱり平民の作ったものには触らないとか…?隣のイリィが耳元で違うよ、単にイザークさんに甘えてるだけ。

 うわぁ、そうなの?確かにイザークさんて眉間にシワないと爽やかなカッコいい人だけど無表情だよ?

 甘えるの…?

 今も交互に食べさせて貰ってるよ…。

 あ、イザークさんも優しい目をしてる。ジロジロ眺めていたからかイザークさんが

「これもキビだな?」

「うん、食感を楽しむ為に少し粒を残してある」

 色々気にしないことにする。


「さぁ、他のも頂こう」

 それを合図に思い思いに好きな物を食べる。私はキビ挟みパンとスープだけで充分。ハクとブランにも取ってあげて賑やかに昼食が終わった。

「ふむ、どれも美味しいな。新たな農作物として充分だ」

「特に北の方は特産品も無かったのでこれを政策に組み込みましょう」

「アイル君、屋台に期待しているよ。それから後で君の護衛を紹介しよう」

「ギルドから付ける二人もじきに来ます。顔合わせしましょう」

「そうだな」


 ここで私は今日の顔合わせ用に作った品々を渡す。

「ダナン様、私とイリィで作った作品です。よろしければ受け取って下さい」

 驚いた顔で、でも嬉しそうに

「それは嬉しいな」

 まずは三人お揃いのデザインで使った色違いのカフスボタンとイヤーカフ、そしてピンキーリングだ、

 それぞれの前に置くとイザーク様がダナン様の箱を開ける。

 そこには紫水晶の付いたカフスボタン。すべて銀色がベースだ。デザインは水晶の形を変えている。

 次はイヤーカフ。透し模様で裏側に水晶を嵌めてある。これも嵌めた水晶の形が違う。


 最後がピンキーリング。

 これは華奢なリングを重ねて付ける。片方にはやはり裏に水晶と紫水晶を併せて嵌めた。

 石はダナン様が紫多め、フェリクス様が紫少なめ、イザークさんが半々だ。

 お揃いだけど少し違う。そんなデザインをイリィと考えた。


 三人とも固まっている。どうしたのかな?やっぱり貴族はこんなクズ石は要らない…?オロオロしていると

「これはまた素晴らしいな。アイル君にイーリス、ありがとう」

 ダナン様がそう言ってくれた。ホッとしていると

「アイル、石に何を込めた?」

 えっ?石なら防御だな。

「防御の魔力を少し」

「「何だって!」」

 えっダナン様とフェリクス様の声が被る。

「防御…」

 イザークさんが呟く。何?首を傾げていると

 イザークさんがため息を吐く。


「どんなだい?」

「多分、悪意を持って近づくと弾き飛ばされるかと」

「そんなに?」

 いや、たいしたことないよ?だってほんの5メルほど飛ぶだけだし。

「これか…イザーク」

「イズ、これほどまでとは」

 治癒とか解毒は外してるのにな…。反魔法もだよ?頑張ったのに。

「何にせよ、有難いことだ。アイル君、有り難く使わせて貰うよ。で、カフスは分かるが他はどう使う?」


 私はイザークさんの耳にイヤーカフを付けようと立ち上がるとフェリクス様に

「イズにお触りはダメ、私に」

 はい、お触り禁止ですね。

 フェリクス様の髪を耳にかけてその耳にイヤーカフを留める。そしてピンキーリングは小指に、と持つと

「小指用で、体温で丁度いい大きさになります」

 言うが早いか私から指輪を取るとイザークさんに渡して

「イズ、はめて…」

 頬を染めて言うのやめて?私の宙に浮いた手はどうしたら?


 諦めてソファに戻る。

 イザークさんがリングをフェリクス様の小指にはめると丁度いい大きさになる。その指輪にキスしてから

「イズには私が…」

 イヤーカフとリングをはめてイザークさんのリングにもキスしたよ…。

 ダナン様にはイザークさんがはめて、なぜ頬を染めてるの?ダナン様の耳を見て…。その手を取って恭しくリングを小指にはめて、はぁイザークさんもキスした。

 ダナン様はイザークさんのイヤーカフにキスを…。


 私たちは何を見せられてるのかな…?


「私たちにとっては祝福なんだ。ありがとう。色々と事情があってね…最近、解決の目処がたったから」

「それなら良かったです。えとこれも…」

 私は紅茶をイザークさんに渡す。珍しそうに見てからリボンを取り中の容器を取り出す。

 それをじっと見てから固まった。あれ?ただの紅茶だけど?

「この容器は…水晶か?」

 凄いな、分かるんだ。コクリと頷く。

 そっと蓋を開けてさらに驚く。隣の二人も驚いている。

「なんて芳醇な香り…」

 でしょでしょ?頑張ったんだ!ふふふっ。


 イザークさんは紅茶をポットに少し入れてお湯を注ぐ。濃厚な香りが立ちこめる。

 カップに注いで私の前に置くので飲む。うん、いいお湯加減。ダナン様とフェリクス様も口を付ける。

 少し遅れてイザークさんも…

 あれ?美味しくなかった?どうしよう…香りだけって思われてたら。焦っていると

「本当にアイル君は…とても香り高くて、でもくどくない。美味しい紅茶だ」

 ダナン様が言ってくれてホッとした。良かった…。


 やっぱりパウンドケーキ出しちゃダメ?昨日、余分に作ったヤツ。喜んでくれてるならやっぱりね、味わってほしいから。チラチラとイリィを見ていると仕方ないという風に笑ってくれた。

 私は喜び勇んでポーチからパウンドケーキを取り出す。ちゃんと切り分ける前の。

 それを机に出すとナイフでカット。お皿に乗せてイザークさんに渡す。しげしげと見てから私が食べる前にパクリと一口。

 くわっ!えっ今度は何?ビクッとすると

「美味過ぎ…」

 そう言って目を瞑って堪能し始める。よ、良かったよ。うん。でもそんなに…?


 ダナン様とフェリクス様も口に入れて固まった。そして頭を抱える。どうしたのかな…?不安になりながら見ていると

「美味しすぎる…」

 良かった。またホッとしていると

「これは危険だな」

「無自覚テロだね」

「可愛い」


 最後の誰?あ、イリィか…えへへ。

 こうして和やかに昼食は終わったのだった。




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