表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移 残りものでも充分です〜  作者: 綾瀬 律
第2章 感謝祭と諸々の騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/434

103.妄想の結末

「楽しもうね!たくさん見てあげるよ…」

 待ってごめんなさい。

 そのままベットの側まで連れていかれ、ベットに座ったイリィは私のを上から下まで眺めて微笑んでいる。

「くすっ照れてるのが可愛い。震えてるの?大丈夫だよ、とてもきれいだから。でもね…素足の太ももにベルトしてて…凄く…ふふっ」

 そう言って私の手を抑えてもう片方の手で腰を撫でる。

 あふっ…くすぐったい。

 んんっ…ダメだよ。そんな上目遣いで…額の雫がキラキラしてる。あ、お願い。恥ずかしいから…。

 イリィはお構いなしだ。


 女神のイリィを愛でる筈が…ひたすら責められ終わった。あの後ベールを脱いだイリィが私の体にベールを羽織らせ上から下まで眺めて

「透けて…るよ?」

 だって。妄想が暴走してこんなことになるなんて…。今後は気を付けよう。そして力尽きて眠りにつく直前に思った。明日は貴族の屋敷に行くんだったと…。


 目が覚めると淡い金色。いつの間にかイリィも女神の服を脱いでいる。素肌が心地よい。う、ん…。頭が私の胸の上で動いてこちらを見る。眠そうな目をして私を見ると

「昨日のアイはすごくいやらしかったよ?」

 まさかイリィが首輪を買ってるなんて…。

 涙目で見るとふわりと笑って

「ごめんね?可愛い過ぎて止まらなかった」

 キスして幸せそうに私の胸に頬ずりする。もう、可愛いから許すよ?でも…ほどほどにね。


「アイだってこのチョーカー。僕を想像したんでしょ?違うの?ねぇ…」

 ぐっそう言われると、白い肌に映えるとか思って作ったけど。服もつくったからさ。チラ見えでいいかなって思って。

 あれ?それって服がはだけて見える?あれ…

 クスクス笑うと

「じゃあ今夜はアイが僕を好きにしていいよ?」

 えっ好きにって…それは素肌にチョーカーとかそう言う…ダメダメ。考えたら体に熱が籠る。今はダメ。今夜なら…うわぁ。何考えてるんだ!

 妄想を頭から追い出す。


 あ、イリィ。せっかく妄想を追い出したのに…そんな目で…待って今日は…。

「まだ早い時間だから大丈夫」

 色っぽく笑って言う。時間の問題より気持ちの問題だから…あ……。


 朝からイリィは元気だった。色々と。


 ようやく解放されて起き上がる。うん、体が怠い。

 背中をイリィがさすってくれる。イリィに手を引かれて着替えるとベットにポスッと腰掛ける。

 イリィは正面で屈んで顔を覗きこんでくる。

「かなり怠い?」

 頷く。体が重いよ…はぁ。自分に治癒でも掛けるか?


 するとハクが近づいて来て膝に乗ると口元をペロペロ舐めた後に舌を入れてきた。

 えっ…と思ったら舌を絡めていく。ハクの魔力が…入ってくる。魔力循環だ…。溶けるように魔力が混ざり合うと怠さがスッと抜けた。


 凄い!そういえばハクと交わった後は体の調子が良くなるんだった。目をパチパチさせているとハクがドヤ顔をしている。可愛い。揺れるしっぽも可愛い。

 首元をもふって体を撫で抱きついて匂いを嗅ぐ。スーハースーハー。うん、いつもの草原の匂い。落ち着くなぁ。

 ハクが膝から飛び降りてプルプルと身体を振る。

『治ったでしょ?』

「うん、凄いね、ハク」

 しっぽがゆらゆら…。ふふっやっぱり可愛いね。


 さて、まだ時間があるから紅茶を詰めないと。ガラス瓶?でもこっちのは歪んでるしな。いっそ水晶でオシャレなポットにするか。

 取手はこうして、蓋はこんな感じて装飾して…。よし。これを包装したいけど…。薄い紙に包んでリボンで上を結んで、そこにプリザの花を一輪。カスミソウだ。可憐な白い花がアクセントになっていい感じ。

 イリィも何も言わないし、これでいいよね。

 後はもう箱に入れてあるから大丈夫。


 扉がノックされたので開ける。スーザンが朝食を持ってきてくれた。

「おい、くれぐれもやらかすなよ?」

 何でやらかす前提?

「大丈夫だよ」

 胸を張って言えば余計に不安そうになる。なんで?

「イーリス、ちゃんと見張ってろよ?むしろアイルには喋らすな」

 イリィがしっかりと頷いた。何で?


 扉が閉まると二人で朝食を食べる。ふぅ、温かいスープ美味しいね。しっかりと食べて少し体を動かす。

 少しだけ魔力を循環させて体の状態を見る。鈍ってるな。早めにファル兄様に剣を教えて貰わないと。

 こうして瞑想していると下からスーザンが呼ぶ声がする。


 イリィを目を合わせ頷くとハクとブランも一緒に部屋を出る。聖獣であるハクも連れて行くべきだろう。

 そろそろフェリクス様にも話をしていい頃だ。

 私の話はどこまでするか決めてないけど、ダナン様と話の流れ次第かな。


 入り口にはイザークさんが迎えに来てくれていた。

 ファル兄様も待っていた。

 スーザンからキビの試食あれこれを預かるとイリィとハク、ブランは肩に乗せて、ファル兄様とイザークさんで馬車に乗る。

 ハクは私の膝に。イザークさんの隣がファル兄様、私はイザークさんの向かいでイリィの隣。

 ゆっくりと馬車が出発する。

「やぁ、良く眠れたか?」

 ファル兄様が聞く。私はチラッとイリィを見る。

「ぐっすりだよ」


 確かにね、寝始めてからはぐっすりだったよね。

「緊張してるか?」

「少し…」

「大丈夫だよ、ダナンさんは孤児だった俺を拾って家族同様に育ててくれた方だ。心の広い優しい方。悪いようにはしない」

 イザークさんて孤児なんだ?フェリクス様と幼馴染ってそういうことなのか。

 私もこの世界では孤児なんだろうな…。本当の意味で。

 それがハクに出会ってブランに出会ってイリィやファル兄様と出会って。

 孤児だけど、孤独ではない。そう言えるのはきっと幸せなんだな…。他の人たちはどうしているのだろうか?


 静かに馬車は進んで行き、領主様のお屋敷に着いた。門を進み、馬車寄せに着くと屋敷の扉が開いて中から人が出て来た。

 馬車の扉が開いてイザークさんが先に降りる。続いてハクを抱いた私、イリィ、ファル兄様の順に降りる。


 それはまさしくお屋敷だった。凄いな…。神戸の異人館みたいだ。

 眺めていると

「ようこそいらっしゃいました。執事のブラウンです。旦那様は応接室でお待ちです。ご案内致しましょう」

 そう言って先頭を歩き始める。

 私は失礼ではない範囲で屋敷を見る。華麗だけど華美ではなく、落ち着いた空間になっている。

 趣味はとても共感できるな。ゴテゴテしたのは苦手だから。一見すると質素なのに一つ一つが匠の技と言うのか…イリィの作品のようにこうあるべき、という姿を見せている。

 これはまた凄い。感心しながら進んで行く。ハクは抱っこしたままだ。


 イリィもファル兄様も進みながら静かに眺めている。

 扉の前にブラウンさんが止まる。

 コンコンと叩くと中からお入りと声がした。

 どことなくフェリクス様とイザークさんに似た心地よい声だ。

 ブラウンさんが扉を開くとイザークさんが入って行く。私、イリィ、ファル兄様の順で部屋に入る。

 そこはやはり落ち着いた色合いと無駄のない空間のとても素晴らしい部屋だった。

 少なくとも私たちをきちんと歓迎しようという意図は感じられる。


 正式な挨拶が分からず戸惑っていると

「イザーク、さっそく連れて来てくれたんだね。初めまして、私がここの領主のダナン・アフロシアだ。よろしく。そのローブはどうかな?アイル君」

 イザークさんを見ると頷いたので

「ダナン様初めまして。アイルと言います。ローブはとても軽くて使いやすいです。貸して貰いありがとうございます」

「そう?なら良かったよ」


「ダナン様、隣のローブの子がイーリス。商業ギルド員でアイルとデザインを考えたり、フォークを作ったらりしています。訳があって顔は見せられないと。フードはそのままでお願いします」

「イーリス君だね、あの判は素晴らしいね。君の作るものはムダがなくて機能的だ。フードはもちろんそのままで構わないよ、君のお兄様が話をしてくれるみたいだしね、よろしく」

「ダナン様。フードの件はご配慮ありがとうございます。物作りには自分なりに拘っています。よろしくお願いします」


「こちらがイーリスのお兄様でファーブル。最近この町に来たそうです」

「ファーブルさん、かな。君は何を話してくれるんだい?その認識阻害のこと?」

「ダナン様。左様にございます。認識阻害は産まれながらに発動するものです。悪意を持ってのものでは有りません」

 そう言うと被っていたフードを取る。私にはいつも通りだけど他の皆んなは息を呑んだ。


「君は…森人か…?」

「はい。そして私はイーリスの父親です。それを言うと森人だと気づくものもおりますので…外では兄と言っております」

「これはまた…森人は大変な美形が多いとは聞くが。そなたはその、森人の中ではどれくらいなのだ?」

「それなりに…整っている方かと」

 そうなんだ?そらまぁね、美形だもんな。涼やかな目元に細くて高い鼻、引き締まった口元。パーツの配置見本みたいだよな。


「アイル君、君は驚かないな」

 私は元から見えてたし?

「彼には見せたことがありますから」

「なるほど…確かに父親ではな…余りにも若く見える」

「イーリスも同じ理由かな?」

 フェリクス様が聞く。

「少し違いますが概ねそうです」

「分かった。この話はここまでだ。フェルもイザークも他言無用だ」

 皆んな頷いてこの話は終わった。

 ファル兄様はフードは取ったままで認識阻害はまた発動したようだ。


「アイル君は顔を見せてくれるか?」

 私は頷いてフードを取る。認識阻害も解除される。因みに個人的にかけてる認識阻害は屋敷に着いた時、解除している。

 じっと私を見たダナン様はふむと頷いて

「外でフードは外さないように」

 私はファル兄様たちみたいに美形じゃないけど。

「その色だよ。銀色の髪や目は神との親和性が高い色だ。それだけ珍しい。聖獣の色でもある」


「時にファーブル。白の森の生命樹が絶えたのは知っているか?」

「はい…」

「君たちは守り人だね?あの生命樹は愛し子を選ばない。特別な契約の為だと言われている。()()()()()()()

 ファル兄様が顔を上げる。

 ダナン様はふっと笑うと

「座りなさい。少し話が長くなりそうだ」

 手を叩くと先ほどの執事が入ってくる。サッと紅茶を入れて配ると素早く退出して行った。


 私、イリィ、ファル兄様の順で座り、対面にはダナン様、フェリクス様、イザークさんが座る。

 しばし無言で紅茶を飲む。緊張で味が良く分からない。だから狙われたって?


「生命樹は命の源だ。各国に存在している。ある国でその生命樹が枯れて激減しているらしい。

 原因は不明だが。その国は原因究明と共に他国の生命樹を狩り始めた。一方で魔力を集めて何かをしようとしている、と言われていた。

 生命樹は簡単には狩れない。特に()()()()()()()()()()

 白の森の生命樹は愛し子を持たないとして長らく有名だった。特殊な契約を交わしているからと。

 愛し子が居なくとも、契約のせいでなかなか狩れない。だから守り人が狙われた、と。契約者となるものを消せば狩れる。消さなくても遠ざければ力は弱まる。長い間に集めた様々な文献からそう予想を立てて、白の森は襲われた」


 誰も口を開かない。ただ静かにダナン様が語るのみ。


「ファーブルは守り人でイーリスはかつての契約者かな?いや、予定者だろうか…君だけこの町に来て市場に出店したね?ファーブルがここに来たのは最近だ。イーリスがこの町に来たタイミングと一致するんだ、襲撃と生命樹が絶えた時期が」

 隣でイリィが震えている。私はイリィの手を握る。

 ファル兄様もイリィの背に手を当てている。


「心配しなくていい。この話は()()()()()()()()()()()()()()()

 ファル兄様がダナン様を見る。透明な目で真っ直ぐと。ダナン様も静かに見返す。

「アイル君とイーリスが共に歩むのなら、知っておかなければならない。元々、彼を調べていてたまたま知っただけだ」

 ファル兄様はダナン様に頭を下げる。


 ダナン様は私を見て

「アイル君、君は何者なの?ここに来るまでの足取りが全く分からない」

 私はハクを見る。緩くしっぽを振っている。覚悟を決めて話出す。


 私は静かに語りだした。


 私はとても遠い所から来ました。唐突に何の前触れもなく、家族とも離れ離れになって。たった一人でこの町に辿り着きました。

 何かの力に飛ばされたのか…自分でも分かりません。

 この町から少し先にある森の中でケガをしていたハクを見つけて保護しました。

 この子は白銀狼。聖獣である銀狼の特殊個体です。耳が垂れているのも背中の色が白銀なのも…その特徴だそうです。

 私はハクと名前を付け、契約者となりました。

 ハクが白銀狼であるという話は死の森の近くにある生命樹の精霊の王、ユーグ様に教えられました。

 生命樹は白銀狼の契約者を愛し子にするそうです。


 その後に今度はブランを拾いました。聖獣の白大鷹です。イノシシに襲われ、匂いが付いたために郷に帰れなくなり、親からこの子を託されました。この子も特殊個体です。


 あと、私のジョブは少し変わっていて…想像できるものなら作れてしまいます。

 スキルも…鑑定の上位互換で、色々と見えます。



※読んでくださる皆さんにお願い※


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ