100.お店の名前
祝100話
ゆるゆる系です
夜にも投稿します
「アイ…さっきのお店の名前の話。その後に何て言ったの?」
えっ?お店の名前の後?あぁ、ロゴの話か。
「お店のマークにロゴを入れるってヤツ?」
「ロゴって?」
「うん、えーと。お店の名前をマークにしたもののことだよ。斜めにしたり曲線にしたり飾り文字にしたり…大抵はマークと一緒にロゴも考えるんだ。看板に掲げるのに使うからね」
「看板って何?」
「ん?宣伝用の大きな板だよ。そこに絵を描いたり、店のマークやロゴを描くんだ。何の店か分かりやすくて覚えて貰いやすいから」
イリィがため息をつく。え?何で?
「もう、また無自覚に…危なかったよ、さっき…」
そうなの?ロゴとか看板が?
言われてみると、こっちは看板があるけど違う物?あれ…?宿の看板は何て言うんだろ。私が思ってるのと違うらしい。
イリィはふわりと微笑んで
「気を付けて…」
頷いた。
「領主に会うなら何か作らないと。何がいいかな、アイ?」
「確か、フェリクス様のお父様とフェリクス様の二人家族。あ、フェリクス様は確か結婚してる」
どこまでプレゼント持っていくべき?用意だけしてイザークさんに最終確認するか。
「領主に伴侶がいなければ、領主様とフェリクス様だけでいいと思う」
「なら例の護身用のカフスとか指輪でいいかな?」
「そうだね、前にアイが言ってた穴を開けないでいいピアスは?」
「ん?あぁイヤーカフだね」
「何だい?それ」
私は手元にあった材料でシンプルなイヤーカフを作る。小さな紫水晶も散らして。
それをイリィの耳に付けてみる。うん、似合うなぁ。美形は何をつけても似合う。あ、石に治癒だけ付与しとこう。触ると水色に光る。よし。
「アル君…今のは?」
今ってどれ?
「そのアクセサリーをどう作ったとか、材料はとか聞きたいことはたくさんあるけど…最後の水色の光だよ。あれは…」
えっ?治癒の魔力を込めただけ。首を傾げる?
ファル兄様はイリィのイヤーカフにそっと触れる。
「治癒の魔力?!」
「「!!!」」
どうしたのかな?
「アル君、君は…簡単にやってるけど…」
なぜかファル兄様が頭を抱えた。
「お父様、これがアイなんだよ。無自覚なのがね…」
「何を付与出来る?」
「治癒と解毒と防御…?」
ファル兄様はしばらく固まったのちにようやく
「人に渡すものは防御だけにしなさい」
と言った。
「反魔法は?」
「は?」
ん?
ファル兄様がまた固まってる。あれ?どうしたの…。
イリィは憐れむような顔をしてるし、シア兄様とベル兄様はもう抜け殻みたいになってる。
「これは…予想以上だな。うん、反魔法もダメだよ?いいかな?防御以外はダメだよ?」
「防汚は…」
にこやかに首を振られる。
アイルはそもそも石に純粋な魔力も、魔法の乗った魔力も籠めるのが非常に珍しい能力であることを知らなかった。いや、むしろ世間では魔石以外に魔力は籠められない。
「イヤーカフ自体に防汚は?」
「石ではなく品物になら限度はあるが少しは付与していい」
良かった。
「イリィ、デザインどうしたら?あ、つけ心地はどう?」
「これなら痛くないからいいね。穴を開ける必要もないし」
「アル君、くれぐれも石には色々込めないこと、いいね?」
神妙に頷く。
これからイリィとイヤーカフのデザインを決めていく。透かし模様にして男性用は裏側に石を入れるとか。どちらも作る事にする。
後はごく華奢なタイプも。重ねて付けられるように。
うん、モデルがイリィだと何を付けても映えるから楽しいな。
指輪は細くて華奢な重ね付けタイプのピンキーリングに。こちらは裏にラリマーと水晶、紫水晶の欠片を使う。
そして私の一押しは上腕に嵌める腕輪。形状記憶にしてさらに腕輪自体に隠蔽の魔法をかけた。細く薄くチタンを加工したから服の上からは見えない。ここにはデュモルチェライトインクォーツを仕込む。
これはもちろん防御特化。服の内側に勝手に触ると…感電するようにした。水と雷を込めてあって放出順を水、雷とした。
一応、相手の力量を計ってギリギリ死なない程度の強さを自動で調整する機能付き。
安全装置としてビクトルの思考を組み込んだから間違えはしない。治療行為とかで触るのは大丈夫。あくまでも良くない考えでイリィに触ったら…。
ふふふふっイリィの体に触ったらビリビリだ!
イリィにシャツを脱いで貰って右腕の上腕に装着。
「痛くない?重くない?」
「全然。重さを感じない。これ…アイの魔力を感じるよ?」
「うん、少しだけ魔力を込めたよ」
『イーリス、隠蔽がかかってる。看破や鑑定では見えないから大丈夫だよ。触っても分からないよう隠蔽されている。見えるのは僕の神眼とアルの洞察力だけ』
ハク、何故バラスの?
「アイ…僕の目を見て?」
ん?首を傾げる。イリィが身に付ける物はやり過ぎてもやり過ぎじゃないよね?
「んんっ、アル君…それはいったい…」
「色々と、ね」
皆んなは顔を見合わせて
まぁアイだし?
アル君だし?
何でもあり?
イーリスの為なら…?
アル君可愛い♪
…
最後の誰?
「「「「ふぅ…まぁ仕方ないね…」」」」
何で仕方ない!なの…憮然としていると
「アイ…ありがとう。でもね、僕はアイとお揃いがいいな」
イリィ…おねだり可愛い…。
即座に追加で自分のを作る。イリィが手を出すので渡すと
「服脱いで…?」
なんで耳元で囁くの?顔が熱い。
「早く…脱いで…待てないよ…?」
こ、言葉のチョイスが…あぁ、ファル兄様の目が優しい。シア兄様とベル兄様の目は輝いているし。
あ、待って…脱がさないで。恥ずかしいから。
左の肩を露わにして上腕に腕輪を嵌める。
食い入るように私の露出した体を見るシア兄様とベル兄様。気が付いたイリィがすぐに服を着せてくれる。
頬を撫でながら微笑んで
「これでお揃いだね…?」
コクコク頷く。
だからファル兄様…その暖かい視線が…。
その後は皆んなが欲しいものをイリィと私で作ったり兄様方が持っている素材で薬を作ったり…。
精油を使ったロウソクと石鹸も作った。
どうせだからと、シャンプーも作った。名前は髪専用液体石鹸。
ベル兄様が即食いついてシャワー室に駆け込んで行った。少ししてダァン!とシャワー室の扉が開く。
私の前に走ってくると私の両手をガシッと握り
「アルきゅん…なんてもの使ったの?素晴らしいよ!革命だ!」
「それほどか…」
呟くとシア兄様がシャワー室に駆け込む。えっそんなに?少ししてダァン!とシャワー室の扉が開く。
私の前に走ってくると私の両手をガシッと握り
「アルぴょん…なんてもの使ったの?素晴らしいよ!革命だ!」
デジャブ…?
「それほどか…」
呟くとファル兄様がシャワー室に駆け込む。えっまたそんなに?少ししてダァン!とシャワー室の扉が開く。
私の前に走ってくると私の両手をガシッと握り
「アルたん…なんてもの使ったの?素晴らしいよ!革命だ!」
またデジャブ…?
いや、呼び方おかしいでしょ?何?アルきゅんって…?アルぴょんもアルたんも…。
イリィを見ると優しく微笑みながらもドヤ顔してる。
うん、可愛い…。
「ふぅ…アル君は本当に…イリィも苦労するね?」
「苦労だと思わないよ?だって一緒にいるだけでこんなに心が豊かになれるんだから…きっとアイは僕の顔が普通でも、大きな傷があっても変わらず僕自信を見てくれるから…」
もちろんだよ…?だってイリィはイリィだし。顔はもちろん好きだけどやっぱりイリィという人が好き。
「当たり前だよ…?イリィが好きなんだから」
「知ってる。それがアイだからね」
二人で見つめ合ってると頬に熱を持つ。恥ずかしいなぁ。
ファル兄様たちは
「私たちの素顔を知っていてそれが言えるのが凄いよ」
「だって、アイってば僕にあからさまに関わりたくないって顔してたんだよ?素顔を見て。顔より名前に食い付いたのはアイが初めてだし…」
思い出したのかイリィがクスクス笑う。
イリィ、可愛いぞ。でも恥ずかしいから…。
『本質を見抜く目を持つアルらしい』
ハクまで…あぁ、そのしっぽモフってもいい?お尻に顔面ダイブしたいよ。
恥ずかしいから話題を変えよう。
「イリィ、お店に行くからお昼は外で食べるよ」
「何のお店?」
「革屋。ちょっと依頼してた物が出来てて…取りに行ってなくて」
「なら僕も行きたい」
「私たちも行こう。それなら皆んなで外のレストランで食べないか?」
言われてみたら外食ってしたことない。
「うん、ぜひ!」
「よし、決まりだ」
工房の片付けをして外に出る。そうだ!聞きたいことがあったんだ。
「ファル兄様…空間拡張のカバンって貴重だったりしする?」
「うん?そこまで貴重ではないよ」
「お父様…アイの質問を真に受けちゃダメだよ?
時間停止と冷蔵、冷凍にほぼ無限の容量。おかしいでしょ?」
「ん?イーリス、もう一度言ってくれるかい?
時間停止とか聞こえたよ。冷蔵とかほぼ無限とか…お父様は疲れてるのかな?」
「聞こえた通りだよ…アイがまともなことを聞くわけないでしょ?」
…何で?
「…」
「アル君。普通の空間拡張カバンはね、大きなカバン1個分からせいぜいが馬車数台分だよ。時間停止なんて迷宮から出る遺物くらいだ。貴重も貴重…空間のほぼ無限なんて特級遺物だね」
…聞かなきゃ良かった?いや、聞いといて良かった。
もうロルフさまたちにあげちゃったけど。あれはまぁ容量も控えめで時間停止ないからいいかな。
「ファル兄様たちが欲しければ作るから…」
チラッと見て言えば横からベル兄様が手を握って来た。
「アル君…僕欲しい」
反対側からシア兄様が手を握って来て
「アル君、私も欲しいな」
正面からファル兄様が肩に手を置いて
「私にも…」
はい、分かりました…だから手を外して貰っても?3方位からの美形攻撃はちょっと心臓に悪いです。
すると後ろからイリィが抱きついてきて
「僕のアイに気安く触らないで」
全方位になった…。
…イリィ…嬉しいけどその…腰を抱き寄せないで?お尻に当たってる…。
そのまま耳にキスをして、ダメだよ?お触りさせちゃ…って。はい、ごめんなさい。だからその…お尻に腰を当てないで…。
やっと全方位からの包囲を抜けた…。危なかったよ、色々と。
そして中央広場から西側に向けて工房街を進む。
革屋に着いた。さて、どんな仕上がりかな?
ここまでお付き合いありがとうございます
まだまだ続きます…
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