ハメツ/クチブエ/ユメ
Pereo
世界が破滅する日が近づいている。
噂によれば、石英の粉末を呑めば死なずに済むらしいので、山へ採りに行く。
奥へ奥へと進むうち、おなじ道を行く同性の伴侶ができた。
はじめて知る炎の味、家族も立場も放って恋だけを楽しむ。
予言された日が過ぎ、世界は滅びずに再開された。伴侶も家へ帰るという。
しかし私は、破滅への歩みをどう止めたらよいのかわからない。
* * *
Fajfo
夜に口笛を吹くと、意外に遠くまで聞こえるものだ。
そのせいで、よいものも悪いものも、たくさんよびよせてしまう。
だからぼくは、結婚してから口笛を吹いたことがなかった。
ただの迷信をずいぶん気にしたものだと思う。
けれど今はそんな迷信もあてにして、君と再会したい気分なんだ。
君、ぼくの娘よ、その小さな唇で、ひとつ口笛を奏でてくれないか。その音をたよりに、パパが君に逢いに行く。
そう、君には本当のパパがいるんだ。ママだって、いまだにぼくを愛してくれているはず。
逢えば、君はひと目で、ぼくが本当のパパだと気づくだろう。
ずいぶんみすぼらしい姿の幽霊に、ぼくはなってしまったけれど、きっと君もママも、再会を喜んでくれるだろう。
だから、娘よ口笛を、その小さな唇で奏でておくれ。
* * *
Songxo
夢は目覚めたら忘れてしまうがよい。
幾度も思い出していると、夢は表に出て長い蟲の姿を成し、体に巻きつく。
そしてその蟲を好んで食べる天使をよびよせてしまう。
天使は長い嘴で乱暴に蟲を啄むので、夢の生み主の心まで傷つくことがしばしばだ。
時の流れの飛沫がかかれば傷がしみて、そのひとを不意に涙ぐませる。
Fino
修正記録/(2023−11−01)「クチブエ」:大幅改稿、「ユメ」:呼び寄せて→よびよせて