表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/26

オンナ/ユウシャ/ホシ




 La virino



 私がまだ幼い王子であったころ、宮殿で薄衣うすぎぬの女をよく見かけた。

 近くに現れてはためらうように去り、追ってもその長い裾に追いつけなかった。

 老王として生を終える今、薄衣の女がふたたび現れ、私を抱く。

 ああ、お前は死か。

 ならば子供の私にお前が近づいたのは誰が元であったのか? 

 わかっている、私が王になり処刑した母であろう……




 *  *  *




 Bravuloj



 なんの力量を示したわけでもないのに、俺は勇者にされた。

 勇者は半年ごとに各国から一名ずつ選出され、おなじ目標をめざす。

 この世のどこかで財宝とともに眠っているという、伝説上の姫を探し目覚めさせるのだ。

 しかし何千年もくりかえされてきたわりに成果は皆無、今ではどの国でも流罪同様の役目である。

 勇者に推薦した上司と、最近まで俺の妻だった女を、おなじ寝台で永遠に眠らせ、俺は出発した。

 女はそこらじゅうにいるが、伝説を聞き少年が憧れるような姫などは、この世にいたことはないのだ。

 わかっていても、俺は、俺たちは、彼方をめざし歩まずにはいられなかった。




 *  *  *




 Steloj



 稀に星の巨体が地表近くを通り、野にくっついてしまうことがある。

 理由は不明。言い伝えでは、恋に破れた男星おとこぼしがさまよって地にたどりつくのだとのこと。根拠はなさそうだ。

 最近は外国からむけられる非難の目もあり、建設重機を使い星を無理に空へ帰してしまうが、むかしは近隣集落が総出で星の肉や油を分け合い、笑顔を交わしたものらしい。

 二百年前の大飢饉の際には、ある夜にふっくらと太った星が地上に横たわり、食糧となったので、多くの人命が救われた。

 たとえ空では醜男ぶおとこであった星でも、田舎の人間は、地に着く星をみな、神の使い、神の一部としてあつかった。

 わたしの実家は飢饉のころに建てられた星神社ほしじんじゃで、わたしの名も星にちなむものだ。

 わたしはまだ星の味も恋の味も知らないけれど、夜をさまようほどの失恋にはあこがれている。





 Fino







修正記録 (2023−11−01)ホシ:神の使いであり→であり、を削除。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ