タイヨウ/ワキミチ/イクサ
La suno
世界中がエネルギー不足なので、太陽も光を減らされた。
朝日がまるで落日の色である。
力を発揮させてもらえない太陽を慰めるため、花火が奨励されている。
火花を多く散らすものほど好ましいとか。
花火による町の大火や野火、山火事などは放置される。太陽が喜ぶからである。
住まいをなくした者は皆、花火職人にされるのだが、人々に不満はなさそうだ。
* * *
Brancxa vojoj
脇道を歩く人を、天使たちが蹴って苛む。
隊列を組み同じ道を進むのが人というもの、好みの道など歩んではいけないのだ。
でも皆と一緒の道は、ぼくには進みづらい。
――自分に合った道を行けたらな。
ぼんやりしていてつまづいた。
数歩よろけただけで、ひとり脇道に入ってしまった。
あせって戻ろうとする暇さえない、すぐに天使がきて、ぼくをののしり、蹴りはじめた。
うわさでは、かつて隊列に属し、途中まであるていどじょうずに歩けたが、その先には行かせてもらえなかった人間が、彼ら天使になるのだという。
たぶん、ほんとうだろう。ぼくを蹴る天使の、卑屈な冷酷さを見るがいい。
* * *
Milito
えらい立場の人に命じられ、戦に出かけた。
そしていつの間にか、俺たちが負けたらしい。
帰っていいのか、誰も声をかけてくれない。だからたまたま見かけた集団の、尻についてしりぞく。
敗北者の群れに、百姓たちが、蜂のようにとびかかってくる。
むごい争いがはじまるが、誰も俺を襲わない。
戦とはなんと奇妙なものか。帰ったらもう二度と村から出るまいと思う。
ひとりで山道をしばらく行き、ふと気がついた。
なぜ俺は歩かずに前へ進めるのだろう。
Fino
修正記録/「ワキミチ」本文を、数か所加筆修正。(2023−11−04)