フイウチ/ミカヅキ/アリ
Surprizo
道を歩いていると、たびたび不意打を受ける。
どうもわたしの持っている割符を奪いたいらしい。
わたしはある時は返り討ちにし、ある時は一目散に逃げる。
よこせと脅されてもあげられない。割符の役目を持つ符号は、わたしの心に刻まれてある。
いったい何者の心と合致するものなのか、わたしも知らずに守っている。
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Krescento
E郡の三日月湖には永いこと大きな蛭が棲んでおり、疫鬼はこれを恐れて周りの土地に近づかなかった。
この水溜りを埋めさせたのは、E郡の富者であった。息子が医学を修め開業するので、その商売に邪魔な蛭を封じたのだ。
帰郷した息子が流行り病で急逝したのは、因果応報か。
おかげで、子孫である私まで三日月に睨まれている。
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La formiko
私の飼っている蟻が、神殿に置かれた供物の酒樽に、穴をあけてしまった。
こまった子だ、たびたび、やらなくてよい過ちをおかす。
急いで神に謝罪せねばならないが、祈れど祈れど意志が通じない。
やむなく私は、ほかの神殿を訪ねる旅に出た。
しかしどこに行っても人の姿に出会わない。
知らぬ間に、私だけがこの世界に取り残されていたらしい。
私を除いた皆は、どこでどんなたのしいことをしているのか。
神の意地悪さは常のこと、耐えなさい、喜びなさい、と服のポケットのなかで蟻が言う。
私はポケットを叩きかけ、なんとかこらえて帰り道を歩む。
そう、これまでにも何度かあったことだ。
私が耐えていれば、そのうち誰かが神の態度を正してくれるだろう。
たとえばこの蟻が、神に正義を説いて、反省をうながすことがあるかもしれない。
そう思ってポケットをのぞくと、蟻はいなくなっていた。
だまって私を見限り、皆のいる方にむかったのである。
Fino




