星磨きの少年
1,500字程度です。
少年は小さな村で両親や祖父母と暮らしていた。彼の家は貧しく、少年も幼い頃から学校が終われば、両親の仕事を手伝う毎日を過ごしていた。
少年にはもちろん、周りの友達が持っているような玩具も何もなかったが、晴れた夜に見える星空と両親から聞かされる話にいつも心を躍らせていた。
その中でも、星磨きの少年の話は特別だった。毎晩のようにねだっては、星を磨く仕事をしている男の子の話を聞く。そして、いつも彼は星空の星を磨いている夢を見る。
ある日、少年は夢の中で男の子に出会った。埃まみれの服に汚れた顔や髪なのに笑顔を絶やさない男の子。少年はそんな男の子に話しかける。
"君はなんでそんなに汚れているの?"
男の子は星を磨いているからだと言った。少年の心は大きく高鳴った。
"どうすれば星磨きをできるの?"
男の子はあの山の向こうにある大きな山にいるおじいさんに星の欠片をもらっておいでと言った。
次の日、少年は両親にその夢の話をした。両親は笑顔でその山まで行っておいでと少年に言った。
少年は心を躍らせながら出発した。1人で山を登り、谷を越え、川を渡り、洞窟を抜け、大きな山を登った。
すると、大きな山の頂上に小さな小屋があった。暖炉の煙がもくもくと空に上がっている。
"誰かいませんか?"
少年は小屋の扉を叩いてそう言った。すると、小屋の中から返事が返ってきて、扉が開いた。ひげをたくさんたくわえた優しそうなおじいさんが笑顔で迎えてくれた。
おじいさんはおやおやこんなところまでどうしたのかなと言った。少年は夢の話をおじいさんにして、星の欠片が必要なんですと言った。
おじいさんはこれが星の欠片だよと言った。それは小さくて綺麗に輝く石だった。
"いつ星磨きができるようになるの?"
少年がそう訊ねると、おじいさんはいつかは分からないが君がその気持ちを忘れていなければきっと叶うよと言った。
家に帰った後、少年は星の欠片をペンダントにしていつも大事に身に着けていた。学校でも、仕事でも、寝るときでも、いつも大事に身に着けていた。
いつしか少年は青年になった。青年は結婚をし、子どもが生まれ、やがて、子どもが大きくなり、その子どもからも子どもが生まれ、おじいさんになった。
"いつか星磨きを仕事にしたい。"
おじいさんになったかつての少年は、足腰も弱くなり、目も次第に見えづらくなり、耳も聞こえづらくなり、話すことも難しくなったけれども、星磨きの仕事をしたい気持ちはずっと変わらなかった。
そして、おじいさんになった少年はゆっくりと息を引き取った。
"ここはどこだろう?"
気付くとおじいさんになった少年は、かつての少年の姿に戻っていた。そして、目の前には夢に見た星磨きの男の子が立っていた。少年は男の子に話しかける。
"ここは夢?"
男の子は首を横に振った。男の子はここが星磨きの仕事場だよと言った。少年が見渡すとこんぺいとうのような小さな星から山よりも大きな星までたくさんあった。
"やっと夢が叶ったんだ!"
そうして少年は今でも星磨きを続けている。どんな星でもピカピカにして、いつもキラキラと光らせるのが自慢だった。そして、たまに下を見てみると、子どもの子どもの子どもが楽しそうにこちらを見ている。それもとても嬉しかった。
ある時、女の子が立っていた。女の子は少年に話しかける。
"どうしてそんなに汚れているの?"
埃まみれの服に汚れた顔や髪の少年は星を磨いているからだと言った。
"どうすれば星磨きをできるの?"
少年は言った。あの山の向こうにある大きな山にいるおばあさんに星の欠片をもらっておいでと。
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