凡人、実験の日々。
翌朝、朝早く起きてお肉を使わせてもらった。
シンプルに塩で焼いて、油や水を通しにくい紙で作った袋に入れて・・
「真空になれ」
そう袋を閉じて、念じてみる。袋はぎゅっと空気が抜けたようにカチカチと固まる。これを職場に持っていって、お湯で温めてみて、食べられるようなら便利じゃない?ひとまずそれは、袋に漏れないように二重にしてしまっておき、今日は私が朝食を作る。
と、いってもベーコンと、卵を焼くくらいだけど・・。
ミスクさんが眠そうな顔で「おはよ〜」と挨拶して、台所へ来たので挨拶する。
「あ〜、やっぱり誰かいてくれるっていいわ〜」
「そういえば、ご家族は・・?」
「田舎へ引っ越しちゃったの!だから寂しくって・・・りつといういい拾い物をしたわ!」
「・・・・私は犬や猫じゃないですよ」
そう言うと、ミスクさんは面白そうに笑って、私が作った朝ご飯を一緒に食べた。
「私ね〜、こんな感じで変わってるから・・、親とあんまりうまくいかなくてね〜・・、だから、りつの良い人〜って魔力を見て、衝動のまま家に呼んだけど・・、良かったなぁ」
「あ、ありがとうございます」
ミスクさんは小さく首を振る。
「私、たった三日かそこらで、こんなにホッとする人・・初めてよ。私の方がお礼を言いたいくらい」
「・・ミスクさん・・・」
「あと単純に、りつって面白い」
「あー・・、その一言がなければ!!!」
そう言うと、ミスクさんはクスクスと可笑しそうに笑うけど・・、そうかぁ、魔道具作りって楽しそうなのに、変わってるって言われちゃうのか。もったいないなぁ・・なんて思った。
「レイト君も、りつが来て以来、全然違うしね〜」
「そうですか?なんというか・・完全に男の子扱いですよ」
「こんなに可愛いのに、全くうちの課の男共は見る目がない!」
「いやぁ・・逆に面白いんで、バレるまでこのまま楽しみます」
ミスクさんは、面白そう!と頷く。ノリノリですね・・。
今日は、薄いグレーと白のストライプシャツと、黒のパンツだ。まごう事なき、男子っぷりだ。
あ〜あ、ミスクさんみたいな色気が、少しは欲しかったなぁ〜なんて思いつつ、二人で今日も出勤である。
仕事場へ行くと、もう皆それぞれ作業をしている。
レイト君と目が合って、「おはよう」って挨拶したら、「・・おはよ」って小さく言ってくれた。うんうん、段々と慣れていく野良猫のようだ・・。
アル君は、そんなレイト君を信じられないような目つきで見てるけど・・、レイト君、君一体何してた??
いつもアル君と作業している台の所へ行くと、カバンから真空パックにした紙袋を出して、アル君に説明すると驚いていた。真空っていうものは知っているけど、どう扱うかは知らなかったらしい。
わかるー!私も、食べ物だけでなく、物まで真空状態で保管されてるとか知らなかったし・・。
「でも、これ・・魔道具とは違うかぁ・・」
「便利ですけどね・・、この技術」
「なんでも真空に出来る袋を作ればいいんじゃねーの?」
実験しつつ、レイト君がボソッと話す。
た、確かにーー!!!
アル君と、思わず顔を見合わせた。レイト君、すごい!!なるほどそっちか!
「レイト君、すごい!流石天才!!ありがとう!!」
「・・・・うるせぇ・・」
「あ、すみません・・・」
慌てて口を塞いだ。
アル君は、ニコニコして防水処理してある紙を持ってきてくれて、私が早速袋に折ってみた。
「って、これ・・普通にノリ塗った袋の方がいいかな?」
「いや、ノリ剥がれちゃうかも??」
二人で、ああでもない・・こうでもないと言いながら、実験を重ね、結局袋作りで一日終わってしまった。まぁ、こういう日もあるか・・。あ、ちなみに作ったお肉は温めて、お昼に食べました。美味しかった!




