雪の季節は、1人で歩く。
久しぶりの投稿なのでおかしな点がありましたら、報告お願いします。
ふと、ほんの小さな寂しさを感じた。
本当に些細な事でだ、つい5分前まで友人と遊んでいた僕は用事があるからと泊まり込みでの遊びを断り1人帰ることとなった。
駅の途中まで友人達が送ってくれた、道中たわいもない会話で盛り上がりそして「じゃあまたな」と言って別れた、友人達はこれから何をするかを話しながら楽しそうに去っていく、僕はその姿を遠目からみて胸がモヤモヤする感覚に襲われた。
すっと何かが冷めるような、どこかに僕のカケラがぽろっと落ちたようにも感じた、僕もそっちに行けなくて残念だと、きっと次会えるのはだいぶ先になるだろうと感じた。
そうして友人達の姿が夜の闇に消えて見えなくなった頃、僕は駅に向かってポツポツと歩き始めた、もう遅い時間なのだろうか誰一人としてすれ違う事もなく暗い道を一人で歩いている、なんだか不思議な感覚がした、良く本などで見るような文で例えるとこの世界に一人しか居ないような感じだ、だが切符を購入して電車を待っているとホームにはチラホラと人が立っている。
会社帰りのサラリーマン、飲み会後の酔っ払ったおじさん、そのおじさんに肩を貸して歩いている若い男性、いろんな人が居る。
しばらくしてホームにアナウンスが流れる、人が少ない為かいつもよりアナウンスが良く響いたように感じる、少しして電車がホームに到着しプシューと扉が開いて中に入る、車内は暖房が効いていてぽかぽかと眠気を誘うような暖かさでほとんど人がおらずガラガラになっていた、もぬけの殻とはこのことを言うのだろうか、そんなことを考えながら席に座る、柔らかいソファーのような席は僕が座るとぽふっと少し沈み心地いい、そして扉は閉まりガタンゴトンと揺れながら走り始める。
車内から外を眺めるが暗くて風景などはほとんど見えず時々ある民家の光だけが空に浮かぶ星のようにポツポツと映っては消えていく、まるで夜空を見ているような気分になった。
僕はもう一度車内を見渡すがやはり人はほとんどおらず1人か2人疲れているのか目を閉じてコクコクと船を漕いで寝ている、疲れているのだろうしこれだけ暖かいのだから寝てしまっても仕方がない。
そういえば今は何時だろうとふと思った僕は携帯をポケットから取り出して時間を見ようとするが、電源ボタンを押しても画面は暗いままで電源は入らないおそらく充電が切れたのだろう。
時間を知った所であまり意味など無いのだが、とうとうすることが無くなった僕は小さなため息をついて携帯を戻して目を閉じる、少しするとプツッと意識が途切れ僕は暗い世界へと沈んでいった。
ふと気がつくと聞き慣れたアナウンスが聞こえた、慌てて目を開けると僕が降りる予定だった駅に着いた音だった。
僕は慌てて席から飛び出すように走り電車から飛び出た、その瞬間後ろからプシューガタッと扉が閉まる音が聞こえた、危うく寝過ごすところだったとドキドキした胸を押さえてふーと息を吐いた。
息を整えた僕はホームの階段を上がって改札を通り駅を出る外に出た瞬間ピューっと冷たい風が吹き寒さに身を縮めた、そして目を開けると白い雪が風に揺られながらふわふわと地面に落ちてきた。
ああ、雪か。
どおりで寒いわけだと1人で納得した僕は今度こそ誰もいない夜道を歩いて家に向かった。
少しだけ降り積もった雪の上を歩いているとギュムギュムと雪を踏む音と僕の息だけが聞こえ、他の音は何もしないシーンと静かな道は光がなく真っ暗で、でも雪の色により真っ白で通ってきた道には僕の足跡が残っている、だがそれも少しずつ雪で無くなっていき最後には僕の歩いてきた道は消える、いつも歩いている道なのに何故だかあまり見かけない道のようにも思えてきてなんだか不思議だ。
この真っ白な世界に引き込まれそうな暗い空、カサカサと風で揺れる木々、本当にこの世界に1人しかいない気分になる、だからこの季節は割と好きだったりする、僕はさっき友人達と別れた時の寂しさなど忘れて雪に溺れる、雪の白さはすぐに色んな事を忘れさせてくれる、将来への不安とか日々の辛さも今この時間だけは忘れられる。
この美しい景色は永遠には続かない、季節が流れ時間が過ぎると無くなってしまう。
この時期にしか見られない美しい雪を僕は愛しているとも言っていいだろう。
ひとしきり景色を堪能した僕は家に向けて歩き始める、そろそろ現実を見なければならない時間になってきた、家に帰らなければならない。
僕は割れたアスファルトの上を歩いていく、割れた地面からは植物が大量に芽吹いて建物を侵食している、壊れた橋の上にある折れた木々の上を渡り、かつてたくさんの住人が住んでいたはずの住宅は今は誰もおらず割れたガラスや壊れた家具でいっぱいだった、そしてボロボロで崩れかけた階段を上っていく、外れかけた扉は風でキーキーと揺れている。
ただいま、と言って僕は部屋の中に入る、返事が来るはずはないのにいつもの癖でつい言ってしまう、まあでも夜だから仕方のない事だった、みんな寝静まっているんだから、仕方ない。
僕はコンコンとノックをして寝室に入る、ベットで寝ている骨になった両親を見て僕は何も写していない瞳でおやすみ、と呟いてそっと部屋の扉を閉めた。
扉の閉まる音が嫌に重々しくそして大きく鳴り響いた。