ソンゴクウ風の
…それから数十分、色々と試している間に、コツが分かってきた。
まず、この魔法は、距離や大きさをも自由に操ることが出来るようだ。
ただし、現時点では、見えている範囲内でしか魔法を発生させることが出来ないし、
大きさも、俺が想像できる範囲内のサイズしかつくり出せてない。
まぁ、そんなバカデカいものをつくる訳でもないので、別にいいのだが。
次にだが、この魔法は、つくり出す雲の性質を変化させられるという事が分かった。どういう事かと言うと、晴天時に見られるしろい雲は勿論だが、雨天時の雨雲などもつくり出せたのだ。
個人的には、この雨雲を上手く使いこなして、村の食糧難を解決したい。
だが…使い方は要注意だな。先程、どこまで変化させられるか試していたら、誤って雷雲を出してしまい、その雷鳴で山から落ちそうになった。気を付けねば…
「いや、ちょっと待て。考えてみれば、俺はいつまで山頂にいるつもりなのだ?」
考えてみれば1時間弱はここにいるぞ?俺はバカなのか?
…だが、別に言い訳を言っている訳ではないが、登るのにかなりの日数を費やした山を下るとなると、
とても大変なのだ。なけなしの食料もとっくに底を尽きているし…
最悪、山を下っている途中で転落するケースも十分考えられる…
「…乗ってくか、雲に。」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
今現在、俺は固めた雲に乗っているのだが…これは、ヤバい!!俺が何日、何十日と費やして通った道々をとてつもない速さで飛んでいく…この様子だと、僅か数日で村に着いてしまいそうだ。
途中に空を飛ぶ魔物を見かけたが、余裕でシカトしたのはこの際言うことではない。
さてと…ちょうど今、断崖を通り過ぎたところだから、後は森と砂漠、そして平野を抜ければ俺の村だ。
もし天の知識書の中身が本当に知識だけなら、俺は命が危ない状態だっただろう。本当に雲様様だよ…。
日が暮れ始め、流石に夜中まで移動する気力がない俺は、下に広がる森を見渡しながら、休める場所を探している…と、いい具合の大木があるな、あそこの上にちょっとしたオープンベッドルームをつくろう。
…やれやれ、思考さえ変えてしまうとは、恐ろしい本だな…。
そして、自分好みの寝室を想像すると、あら不思議、あっという間にベッドルームの完成☆
その簡単すぎるくだりが俺のツボだったらしく、夕暮れの森で一人笑う
恐ろしいモンスターが登場し、メチャ強い魔物が逃げていったのは黙っておこう。
すっかり日が沈んだ今、俺はベッドをつくったにも関わらず床に寝転がっている訳だが…今日は空が綺麗だな。無数の星々が光輝いている、それを見ていると、俺の心は暖かくなっていく…自然と涙が零れていく…最近の俺は、こんなに身近にあって、ずっと昔から知っていた幸せに気づいてなかったのかも知れないな。
さて、俺的にはこのタイミングで寝るのがベストなのだが…寝れない…。
仕方がない、婆ちゃんが誰かに教えてもらったって言っていた魔法を使おう。確か、白い何かを数えるんだったかな、白い…白い…白い…ハッ!!ビッグバンだ!(全てのビッグバン=白色 ではないけどね)
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えぇっと、それでは早速、ビッグバンが一回…ちょっと待って、周りの空気変わってない?そう思って辺りを見渡すと、ビッグバンの予兆が観測できた。…すぐ真横で。
「ちょっちょちょ、ストップ!スタァァァァァァップ!!」
そういうと、予兆は姿を消した。どうやら、無意識のうちに雲生成のカウント内行動をとってしまったらしい…何だこのデジャブ感は…
「フフッ…制御も出来るようにならないとな…」
そして俺は静かに、目を閉じるのであった…。
「んっ、ふぃぃぃ~、あぁ、いい朝だ…」
雲一つ無い…訳ではないが、見事な朝焼けに、その色が混ざる青空、美しい…。
とりあえずーあれだな、腹が減ったから朝食だ。そう思うと俺は、上から雲で適当に獲物を倒し、
肉を手にいれた。そして森の木材に、起こした火を付けるのだが、流石に雲が蒸発する気がしたので、
これは森の中で行う。十分に焼き上がったら、何の味付けもない焼き肉の完成だ。
…うん、ジューシーな肉が口の中でその旨さを主張してくる、良い具合にできたものだった。母さんにも
食べさせてあげたいくらいだ。…そうだな、早く顔を出さないと怒られてしまいそうだ。
「村に着いたら、親孝行でもしよう、疲れが溜まっているはずだからな」
こうして俺は村へと向かった。世話になった母さんに親孝行をしてあげようと…
親孝行をしてあげようと思って…俺は村に向かった…のに…
「なんだよ…これ…」
俺が立ち尽くす眼前に広がる景色には…俺が一番よく知っていた景色には、
崩壊した建物の残骸と、辺りに転がる無数の骸があるだけだった。