本が持っていた力
いや、ちょっと待て、一旦落ち着こう。
きっと題名だけふざけて、中身はしっかりしているに違いない!
そう思い目次を見たが…お察しの通り全て"雲"関係だった。
…しかも一章しかない。
「ふざけとんのかおんどりゃーーーーーー!!」
~10秒後…~
冷静になれそうも無い俺は、とりあえず中身を見てみることにした。
――第一章 雲をつくってみよう 《クラウド・クラフト》――
初っぱなから韻を踏んでてイラッとした。
――まず、この本を見ているということは、既にあなたの体には、雲をつくれる力が備わっています。――
あぁ、全身に流れていった"あの感覚"か…
――ならば後は簡単、つくりたい雲の形を念じながらつくりたい方向に、手を向けるだけで自由自在な形の雲がホイホイつくれます。 END――
うわテキト~…と思いつつ、俺はその場のノリで手を出していた。
俺が想像したのは銀河だった。昔から宇宙が好きだったからだろう。
すると、手に違和感を覚えた。本を開いた時とは逆に、何かが放出されているような、そんな感覚を、俺は確かに感じ取ったのだ。
次の瞬間、目の前で急速に圧縮されたエネルギー体を観測した。その時俺は、今まで宇宙に関して学んできた全ての記憶が溢れかえり、『ビッグバン』という言葉が浮かび上がった。冷静さが一気に現実に戻り、全身に悪寒が走った。
「止めろ!!」
そう叫ぶと、目の前に存在していたエネルギー体は消滅していった。
…危なかった。こんなところでビッグバンなんて起こしたら、俺も含め、辺り一帯は木っ端微だ。それどころか、この世界さえ消えかねない…。
「これは…この力はヤバすぎる…!!」
つい先程まで小バカにしていた能力は、天の知識書の名に相応しい…いや、もしかしたらそれ以上の力を持っていたのだった…