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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第5章 追憶の先生。
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日曜日の休日。

日曜日の朝の僕に目覚ましなどという言葉はない。

この身体は勝手に目覚めてしまうのだ。

「朝だ。」

一週間の僕の楽しみ。

希望。

オアシス。

僕はカーテンを開けると隣で眠る妹は迷惑そうに顔をしかめる。

しかし起きない。

よしよし、まだ眠っているがいい。

子どもの眠っている時間は全て僕の自由時間なのだ。

僕はテレビをつけてヤカンに火をかける。

ご飯をよそい、お茶漬けのもとを振りかける。

『この世の悪はライダーが討つ。この世の善はライダーが守る。ならばこの世の善悪はライダーが決めるのか。』

「始まっちゃった。」

僕はテレビの前に駆け寄ると後ろでヤカンが湧く音がする。

「え?あっ。」

ライダーを見たい、でもヤカンも止めなくては。

僕はコンロに駆け寄り火を止めた。

せっかく沸かしたお湯をこのまま覚ましてしまうのももったいない。

ヤカンからお米にお湯を注ぐ。

ライダーのオープニングもサビもサビ。

一番の盛り上がりを迎えていた。

「やっぱこのオープニングはいいよなぁ。マジ鳥肌もんよなぁ。監督わかってるよなぁ。」

うっとりしながらオープニングに見入っているとお茶漬けがあふれてしまっていた。

「あ!やば!」

僕は急いでヤカンの口をあげる。

そして布巾でちゃぶ台の上を拭いた。

さてこれで朝の支度は終わり、ここからは僕の時間だ。

「んん。兄ちゃん?」

妹が起きる。

「何時?」

「ポリキュアはまだ。」

「起こして。」

「は~い。」

妹は兄にアラームの予約をして二度寝に着いた。

ライダーを見ながらお茶漬けを啜った。

「あっつ。」


「兄ちゃん!今日はどこに遊びに行くの~!」

僕の右手の中には小さな5歳児の妹の手がすっぽりと収まる。

「ん~。美帆の好きなところかな?」

「ほんと?じゃああそこしかないじゃん!」

「そう。あそこだよ~。」

今日は日曜日。

さすがに日曜日は保育園に預けられないので僕もバイトに行くわけにはいかない。

休日?

いやいや育児の時間である。

「着いたよ。美帆。」

「ここは?」

そこは家から10分くらい歩いたところにあるそこそこ大きい……。

「公園だー!」

美帆は両手をあげて大きな滑り台に向かって走っていく。

この滑り台だけで美帆は30分は余裕で遊べるのだから子どもってすごい。

まあ僕もそうだったけれど。

僕はベンチに腰掛ける。

一応砂場のセットも持ってきてるからここで2時間はいけるだろう。

「お~い!にいちゃ~ん!滑るよ~!」

大きな滑り台の上から美帆が手を振る。

「は~い。みてるよ~。」

僕も美帆に手を振り返す。

美帆は楽しそうに笑いながら滑り台を滑り下りる。

本当に楽しそうに。

母が亡くなったのは3カ月前。

僕はまだしも美帆はまだ悲しんでてもいいはずなのに。

美帆はまったくそんな素振りを見せない。

最初の1か月はそりゃひどいものだったけれど、本当はまだ立ち直るには早いくらいだ。

「5歳ってほんと、子どもじゃねぇよなぁ。」

「にいちゃ~ん。見てて~。」

「ちゃ~んと見てるよ~。」

僕は美帆に手を振った。

美帆の悲しむ時間を取り上げてしまったのはきっと僕だ。

妹はまた楽しそうに笑いながら滑り台を滑り降りる。

それにしても今日はやけに空いている。

日曜日の公園は子どもたちの激戦区なのに。

頬に何かが当たった気がした。

空を見上げる。

空は晴れている。

しかしこの頬を濡らしたのは紛れもない、雨だ。

最初の一粒を皮切りに柔らかい雨が続く。

「美帆!」

「にいちゃん!雨!」

僕が美帆に駆け寄るように美帆も僕に駆け寄ってきた。

僕は自分の上着を美帆にかぶせるとすぐに抱きかかえた。

くそ。

晴れてるからって天気予報を見るのを怠ってしまった。

僕は美帆を抱きかかえたまま公園を走りでた。

さてどうしようか。

傘もレインコートもない。

10分も離れた家まで美帆を濡らすわけにもいかない。

公園を出た先に僕の目に飛び込んできたのはハンバーガーショップだった。


「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりでしょうか。」

「えっと。チーズバーガーのセットでドリンクはコーラで、あとキッズセットでドリンクはオレンジで。」

オーダーを終えると5分もしないうちに商品を受け取り僕らはテーブルに着いた。。

「はえ~。バイトするようになってわかる。バイトってプロだわ。」

提供の早さに感動しつつ、カバンからタオルを取り出し美帆を拭きあげる。

「そろそろキッズセット買うのやめなよ。」

5歳時にキッズセットの購入を諭される高校生は僕くらいだろう。

「だっておもちゃ欲しいんだもん。」

僕はおもちゃの袋に指を突き刺し、汚く破いた。

中から飛び出たのはライダーの2等身の人形だった。

「はあ。」

スケルトンとかいう誰も得しないキャラが当たった為僕は深いため息をついた。

「はあ。」

美帆は兄の姿をみて深いため息をついた。

美帆はチーズバーガーを頬張りながら外を眺める。

「ねえ、にいちゃん?どうして晴れてるのに雨が降るの?」

スケルトンは一周回ってありかもしれない。

「さあ。兄ちゃんもわからん。でもこういうのを狐の嫁入りって言うんだよ。」

「狐の嫁入り?」

「そ。なんか縁起がいいんだって。」

「狐さんがお嫁に行くの?」

「そう。めでたいでしょ?」

「ううん。」

美帆はチーズバーガーを頬張る。

天気はどんどん曇っていき本格的な雨に変わっていく。


「ウチは寂しい。」


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