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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第5章 追憶の先生。
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福引き。

「福引き?」

私は弟の大樹と買い物に来ていた。

「はいぃ。3000円以上お買い上げで一回福引きを回すことができますよぉ。」

商店街のおじさんが揉み手で答える。

商品の一覧を観ると旅行にテレビにギフトセットだった。

末端賞が箱ティッシュがもらえるようだ。

全くの外れでもポケットティッシュがもらえる。

ということは。

「実質はずれなし。」

私は小さくガッツポーズをお腹の横でつくった。

福引きのおじさんにレシートを手渡した。

「おねがいします。」

「はい。一回回して。」

私は福引きのレバーに手を掛けようとした時、手を止めた。

「大樹、回しなさい。」

大樹はボーっとした顔で私を見上げる。

「いいの?姉ちゃん。」

「いいわ。さっさと回しちゃいなさい。」

大樹は私の顔の次に私の手を見た。

「姉ちゃんの右手はそうはいってないみたいだけど。」

私は左手で右手を抑える。

されど右手は未だ空をまさぐっていた。

「気にしないで。」

それでも私の顔はいつもの大人なお姉さんを決めている。

「お姉ちゃんは別にガラガラを回したいわけなんかじゃないから。」

「全然決まってないよ。姉ちゃん。」

大樹はガラガラのレバーを握る。

「じゃあ僕本当に回しちゃうからね。」

「あぁ。」

私は落胆の声を漏らす。

そして大樹はレバーを回した。

小さなたくさんの摩擦音が箱の中で共鳴し大きな音となる。

その大きな音からたった一つの玉が飛び出る。

赤ならテレビ、銀ならギフトセット、金なら……。

玉を確認したおじさんがベルを高く掲げる。

金なら……旅行!

夕暮れの商店街にベルの音が鳴り響いた。

「おめでとうございまーす。4等でーす。」

玉の色は黄色だった。

「4等はライダーヒーローショーのご招待券でーす。」

「わーい。ライダーだー。」

大樹が両腕をあげて喜ぶ。

反面私は肩を落とした。

色が紛らわしい。

それが先週の話だった。


1週間明けた日曜日、私たちは早朝から隣の県まで来ていた。

どうして一商店街の福引きが隣の県のヒーローショーが紛れているんだろう。

電車に揺られながら隣で大樹はめずらしく眠そうにしていない。

朝に弱いはずの大樹はよほど楽しみだったようだ。

「初めてだね。劇場型のヒーローショー。」

「うん。」

大樹はぶっきらぼうに答える。

足はぱたぱたさせている。

「いつもショッピングモールのホールとかだもんね。劇場だよ?劇場。」

「うん。そうだね。」

大樹は無愛想に答える。

足はぱたぱたさせている。

「大樹?楽しみ?」

「う~ん。普通?」

大樹は無表情で答える。

足はぱたぱたさせている。

どうやら普通に楽しみなようだ。


劇場に着くとちょうど会場していて、入場整理が始まっている。

係員さんにチケットを渡す。

半券を受け取ると係員さんはお面を私たちに並べて見せる。

「こちらサービスになっています。お好きなのをどーぞ。」

それは各色がそろったライダーのお面と少しばかりの怪人のお面だった。

「大樹はどれに……。」

「ブラック。」

即答ですか。


劇場内に入り、半券に記された席を目指す。

大樹はライダーブラックを額につけて、私の手を引く。

手を引かれる私は額に怪人デリートのお面をつけている。

物販がかなり混んでて、結局時間がギリギリになってしまった。

席の合間を進みながら周りを進む。

遅かったこともあり、ほとんどの席が埋まっている。

大樹か、それより小さいかくらいの子どもがたくさん来ている。

さすがに大きな会場だけあって舞台も大きい。

乗り気じゃなかった私も少しアガッてくるものがある。

「姉ちゃん。ここ?」

私は半券の番号と見比べると大樹に頷いて見せる。

すると場内に大きなブザー音が鳴り響く。

そして場内の明かりが消えた。

私と大樹は急いで席に座った。

着席まもなくお決まりのプロローグの読みあげが始まる。

『欲望。それは人の数だけある。願望。それは妬みの数だけある。希望。それはライダーの数だけある。』

そしてオープニングのイントロが大音量で始まる。

これは……アガる!

不覚にもテンションが上がってしまう自分がいた。

少し口角があがり、手を小さく握った。

イントロとともに舞台に明かりがつく。

大樹の楽しそうな顔も明かりで浮かび上がった。

そして各色のライダーが勢いよく飛び出してきた。

子どもたちがお気に入りのライダーを叫ぶ。

「レッドー!」

「ブラックー!」

「ブルー!」

大樹は恥ずかしそうに口の横に手を添える。

「……ぶ、ブラックー!」

大樹も控えめに声を出していた。

大樹が楽しそうでなにより。

色々な色のライダーが同士討ちの殺陣を始める。

子どもたちの歓声が一段と大きくなる。

みなお気に入りのライダーがいるのだ。

レッドにブラック、そして……。

「ブルー!ブルー!」

私の隣の人は周りにも負けない程の声援を送る。

あまりの熱気に私は隣を盗み見る。

「ブルー!ブルー!」

そこには額にブルーのお面をつけて真っ赤に血相を変えて叫ぶ成人男性がいた。

「ブルー!ブールー!」

それは、その人はどこからどう見ても私の知ってる人だった。


「京平さん?」

「ブー!ぶぇっ!」

京平さんの血相はレッドからブルーへと切り替わっていった。

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