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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第4章 吉川美帆はガラスの靴を脱ぐ。
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新しい付き合い。

どうしてこんなことに。

「ランド?俺と?」

もう友達のままでいいって決めたのに。

「そう。松本と。」

もう忘れるって決めたのに。

「あのー。その。二人で?」

ですよね~。

そこが引っかかりますよね~。

一昨日あんな涙なみだの告白をやらかした後に何事もなかったかのように告白してくる女は怖いわよね。

「かか、勘違いしないでよね。兄貴からもらったチケットがあるから。友達としてあんたを誘ってんの?」

ウチの苦しすぎる言い訳を沈黙で見守る松本。

よく考えたら、これ松本じゃなくてもいいじゃん。

ジャストタイミングすぎて考えがまとまらないうちに言葉は発してしまったばかりにとんでもない方向に話が進んでしまったけれど。

良く考えたら、ミツキとか誘えばいいだけじゃない。

やっぱり、咄嗟の判断なんてろくなもんじゃないわね。

「ああ~。大丈夫、大丈夫。やっぱ」

「いいよ。」

これだから、咄嗟の判断という奴は。

「一緒に行くか。ランド。」

……欲が出てしまうものである。

「え?いいの?」

松本はチケットをウチの手から一枚抜き取る。

「いいも悪いも断る理由がないじゃん?ひさしぶりだな~。ランド。」

「ありがとう。」

「お。今度の土曜日でもいいか?」

「うん。」

「そっか。じゃあまた教室でな。チケットありがと。」

「うん。」

そういうと松本はチケットをウチに見せながら、生徒指導室を出て行った。


「はぁ~~~!」

ウチは大きくため息をつくとともに床にへ垂れこんだ。

「よかったじゃないですか。お友達と無事約束が取り付けられて。」

さっきできなかった睨みをここぞとばかり練山に向ける。

「練山。あんたでしょ。松本を呼びだしたの。」

「そうだったかもしれませんが今となってはそんな議論無駄ですよ。」

この間からどうもウチのペースで生活ができない。

こいつに振り回されっぱなしである。

「で?今回はどんな作戦なのよ。」

どうせ振り回されるのだったらこいつの意見を聞いておこう。

こいつの作戦をとりあえず頭に入れたうえで行動した方が良さそうではある。

現に、前回の告白はそれをしなかったがためのウチの暴発が引き起こした告白ともいえるのである。

ウチの問いに対する練山の答えは。

「?」

クエスチョンであった。

「ちょっと。作戦よ作戦。なんかあるからこんなことしたんでしょ?」

「?」

練山はただ首を傾げるのみであった。

ウチの顔から汗が噴き出る。

「じゃあなに?あんたは何も作戦がない状態でこんな暴挙に出たっていうの?」

「暴挙とは失敬な。アシストって言ってくださいな。」

「突き飛ばしただけじゃない!」

ウチは声を荒げた。

「『松本大地と付き合うには』っていう今日の議題はなんだったのよ!」

「今日もう、とりつけたじゃないですか。次のお付き合いを。」

「そんな屁理屈聞きたくないわ!」

「まあまあ、落ち着いてください。吉川さん。次の道は開かれたんです。」

練山はウチの肩に手を置く。

コイツほんとボディタッチ多いわね。

触れられる度にいらっとくる。

「道?」

「そう。とりあえず何も考えずに楽しんできてください。好きだった男の子とのデートを。」

練山はウチの両肩を掴み自分の正面に強引に向かい合わせた。

「いいですか。作戦はほとんど終了、完遂したも同然なんです。理解していますか?自分が何をすべきか。」

首を横に振る。

「わかんないよ。普通に話すのだって辛いのに、松本が自分に興味がないってもうわかってるし、あいつが誰をどれほど思ってるかだって……。」

「だからそんなの一切関係ないって何回言えば済むんですか。第一僕が言っているのは恋の話ではないんです。これからの松本さんとの付き合い方の話をしているんです。」

「付き合い方?」

練山の言葉がイマイチ理解できないでいると彼がまくしたてる。

「松本さんが誰を好きであろうと、彼があなたに興味がなかろうと。吉川さんが松本さんから離れなくてはいけない理由にはならないんです。」

「じゃあ、ウチは何を。」

練山はウチの肩を離してため息をつく。

「ここまで言ってもわかりませんか。結構具体的に言っているつもりなんですが。」

練山は自分の荷物を背負うとホワイトボードを消した。

「ちょっと、練山?」

「あんまり考えすぎると、せっかくのランドが楽しくないですからね。とりあえず楽しんできてください。」

「練山。」

「とにかく楽しんで、そして。あとは心に従ってください。」

「練山!」

ウチの言葉がやっと練山の耳に届き、ようやく彼の動きが止まる。

といっても、練山はもう扉に手を掛け、部屋を出る直前だったのだけれど。

「なにか。」

ウチは釈然としないまま、彼に言葉を掛けた。

「……ありがとう。」

練山は眉ひとつ

動かさずに部屋を出て行った。


彼が出て行き、足音が離れていくのを耳で確認するとウチはしゃがみこんだ。

そしてチケットを顔に押し付ける。

「くうおうううううううううう」

やった。

やった!

生まれて初めてのランドだ。

しかも男子と。

それも初めて好きになった男の子と。

「んぬううううううううううう」

ウチは誰もいないことをいいことに床を転げまわった。

何を着て行こうか。

アクセサリーはどうしようか。

メイクはどんなふうにしようか。

楽しみすぎて考えがまとまらない。

「痛っ!」

チケットを鼻に押し付けてしまって痛みが走る。

そういえばウチ、鼻をケガしてたんだった。

どうしてよりにもよってこんな時に。

骨とかには異常はないらしいのだけれど、内出血と打撲で少しだけ青くなってしまっている。

「はぁ。我ながら柄にもないことしちゃったなぁ。」

ウチは痛みで我に返った。

「ウチ、何をこれ以上松本に何を伝えればいいんだろう。」

床に大の字で寝そべっていたウチは扉の所に練山がいるのが目に入った。


「なによ。」

「よくこの状況で強がれますね。」


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