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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第1章 始まりのイースターエッグ。
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バイトを始めます。

俺の名前は今井良太。

この間までもっさりメガネだったが今ではさっぱりメガネに昇格した。

しかしいつもなら母親に髪を短くカットされる為、今の髪はまだ長いと感じてしまう。

今は良いが一月もすればもう次の切り時ではないか、毎月あの美容院に通うとなるとお金が続かない。

しかも高岡さん曰く俺は裸眼の方がイケてるらしいので近日中にコンタクトにする予定だ。

となると高校生の財力では限界がある。

さすればすることは一つ。

バイトである。

よって俺は今日友人の松本がバイトしているピザ屋に面接に来たのだ。

なのに……。

「じゃあ面接始めまーす。」

「ちょいまてい」

そこにはクラスで見覚えのある女子がパイプ椅子に腰かけていた。

何よと彼女はむっすり質問した。

「なんで泉野さんが面接するんですか」

「だってここあたしんちだし、面接はいつもあたしよ?」

くそったれが。

よりにもよって苦手なタイプの女子がいるとは。

こいつから発せられるイジメっこオーラは俺のトラウマをピリピリと刺激する。

知っている人が働いていれば気楽にバイトできると思った俺が甘かった。

「時間ないからさっさと面接するわよ」

おうと俺は背筋を伸ばした。

「なんでいきなり来た?」

「普通は志望動機からでは?」

「普通の相手ならな。普通の人はいきなり面接しろなんて言わないわよ。あと志望動機ってうちに就職する気かてめぇ」

駄目だ。

こいつとは話が噛み合わない。

これは落とされるかもわからんね。

「高校3年生。今井良太。年は17です。」

「知ってるわ。質問無視して勝手に自己紹介すんな。合コンかここは。」

怖い。

これが圧迫面接というやつか。

「で?うちで働くとしたら時間はどれくらい働けんの?」

「え?採用?」

「頼むからあたしと会話してよ。」

え?俺が悪いの?いつから働けるって話じゃないの?

「平日の放課後から2時間くらいなら働けます。」

「部活でももうちょいなげぇよ。」

泉野嫌い。

「今井はいつピザが食べたくなる?」

「コーラ飲むとき?」

「時間の話をしてんだよ。だれがお前の趣味知りたいんだよ。」

じゃあそういってよ。

「夜食べたいです。」

「みんなそう。なのに今井はその時間に帰るのか。しかも土日のお昼も結構はけるのにお前はこれないのか?」

「土日は遊びたい。」

泉野さんはニッコリ笑った。

「帰れ。」

もちろん黙っちゃいない。立ち上がり反論したのさ。

「ちょっと待ってよ。せめて志望動機を聞いてよ。」

「だから就職する気かお前は」

泉野さんは小さく息をつき俺に腰かけるよう指示した。

「で?なんでバイトしようと思ったの?」

「え?こういう時ってなんでうちで働きたいのとかじゃないの?」

「バイトにそんな立派な理由聞いてどうすんの。ピザへの熱意語られてもこっちが困るわ。お金必要なんでしょ?なんで?」

俺のピザへの熱意を伝える熱い志望動機は無駄になった。

俺は膝の上で手を軽く握った。

「好きな人ができたんです。その人に気に入られたいから、今の自分じゃだめだから。こんな理由じゃダメですか?」

泉野さんは少し顔を赤らめて目を輝かせた。

「え?まじ?誰?同じクラス?」

これも面接なんだろうか。ならば答えなくてはなるまい。

「同じクラスの…高岡さんです。」

静寂がピザ屋の事務室を包む。

俺も昨日のやり取りは盗み聞きしてたから泉野さんが複雑なのはわかるつもりだ。

言わない方がよかったのだろうか。

すると泉野さんは大きく笑いだしたのだ。

俺は真剣に恥を忍んで告白したのにひどい女である。

「あーごめんごめん。いやーよりにもよって高岡さんか。」

泉野さんは微かに赤く腫れた左頬に軽く手を当て俺に語りかけた。

「今井も身の程知らずだねぇ。高岡さんはかなり倍率高いよ?」

「そうなの?彼氏とかいるの?」

泉野さんはパイプ椅子にもたれ掛かり腕組みをした。

「それは自分で聞けよ。でも確かいなかったはず。いたこともないかも。モテないわけじゃないんだけどね」

「え?高岡さんてモテるの?」

泉野さんは脚を組んで宙を眺めた。

「おしゃれで。明るくて。嫌みがなくて。ダメにでも優しくて。成績も良くて。モテないわけがないでしょう。てかあんたもそれに惚れたんでしょ?」

泉野さんは俺に指を指した。

確かにそうだけれど彼女の良さに気づいたのは俺だけだと思っていた。

「でもちょっとあんたを見直したわ。あんたみたいなオタクって卑屈になってめんどい考えばっかり起こすから。高い目標立ててきちんと努力を始めようとするとこ、あたしは嫌いじゃないわ。」

泉野さんは立ち上がり自分のパイプ椅子を折り畳んだ。

「頑張りなさい。みんながバカにしてもあたしは応援してるわ」

「え?じゃあバイトは。」

「それは他あたって」

その時事務室の扉が開いた。

顔をひょっこり出したのは松本だった。

「泉野ー。いつまで面接してんだよ。オーダー来たぞ」

松本と目が合う。

「あれ?良太じゃん。新しいバイトって良太だったんだ。」

「勘違いしないで。こいつは不採用よ。」

「もったいない。こいつ二輪乗れるぜ?」

「採用。明日から来なさい。」

この店はバイクが乗れる人がいないようだった。

松本は今までどうやって配達していたのだろうか。

ともかく俺は晴れてバイトを始めることになった。

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