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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第4章 吉川美帆はガラスの靴を脱ぐ。
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告白しに来ました☆

「あっしーはぁ☆京極美智子って言いまぁす☆」

ウチは腰をくねらせ、目の横でVサインをした。

「はぁ……。」

松本は困惑の色を示す。

よかった。

松本までこれがいいと思ったらどうしようかと思った。

「あの~……。京極ちゃん?」

ウチは頬を両手で押さえ、お尻を振った。

「えぇぇぇぇ☆美智子って呼んでくださぁい☆先輩☆」

「ああごめんね☆美智子……ちゃん?」

頬を押さえていた手を後ろに組む。

「まあっ☆それで良しとしましょうっ☆」

「美智子ちゃん?あの~……。今井はどうしたかわかる?多分ここで掃除してたと思うんだけど。」

ウチは掃除用具入れに向かい足を進める。

「今井先輩はぁ☆帰ってもらいました☆あっしーがお願いして☆」

掃除用具入れに自在箒を納める。

そして、ゆっくりと扉を閉めた。

「お願い?」

「はい☆あっしーは松本先輩に用事があってきましたもので☆」

松本はごみ箱を黒板下に収めるとウチに向き合った。

教室の反対側同士、二人の距離はかなりといっていいほどある。

「して?その用事っていうのは?」

ウチは机をなぞりながら松本へ近づく。

「先輩☆せかしますねぇ☆」

その歩みはゆっくりとしたものだが確実に近付く歩み。

教室なんてそんなに広い空間じゃないのだ。

「女の子の後輩が男子の先輩を呼びだす理由なんてひとつに決まっているじゃないですかぁ☆」

この距離を詰めるのにウチは3年かかっても無理だった。

「それが見知らぬ女子ならぁ☆尚更じゃないですかぁ☆」

『よっしー』ができなかった事を、ウチが一番嫌いな『美智子』ならたったの5分でできる。

『美智子』はもう松本の目の前に立っていた。

「あっしー☆松本先輩にぃ☆告白しにきましたぁ☆」

『美智子』は大きな胸を松本に見せつけるようように仁王立ちでつきつけた。

「っぬぇ?!……あっ。な、なん」

「なんの告白?とかぁ☆ベタな逃げ方しないでくださいねぇ☆松本先輩?☆この流れで埋蔵金の在り処でも告白すると思ったんですかぁ?☆」

退路を塞がれた松本は息をのむ。

教室の窓に向かい、ウチは机の上に腰かける。

「さあさ☆先輩もぼけーっと立ってないで座ってください☆ちょっとだけお話しましょうよ☆」

「君、すごいね。見たとこ三年じゃあないよね?上級生の部屋ですごい堂々というか。」

二つに縛られた黒髪を右手でなびかせる。

「はい☆一年生ですぅ☆年下はお好みですかぁ?☆」

松本もウチの隣の机に腰を掛ける。

「年はあんまり関係ないかなぁ。」

「やったぁ☆年下もアリなんですねっ☆」

「ありはありだけれど……。」

松本の言葉を遮り、矢継ぎ早に次の質問をする。

「じゃあじゃあ☆女の子のどんなところにぐっときますぅ?☆」

言わせない。

早枝ちゃんの話をされたらもう終わりだ。

『美智子』すらねじ込めなければ『よっしー』の入る隙間はもうない!

「ぐっと来るところ?う~ん。」

松本は右手を顎に当て考え込む。

苦し紛れにはなった質問だったが、そんなに難しいだろうか。

ウチなら……。

ウチならたくさん言える。

たくさん言えるよ?松本。

清潔感のある笑顔が好き。

笑った時に下がる眉毛が好き。

真剣な横顔が好き。

首筋繋がる顎のラインが好き。

あなたのネクタイ姿が好き。

ネクタイとYシャツから覗く鎖骨が好き。

それから……。

「あーー……。」

松本がやっと声をあげる。

「なになに?☆早く早くぅ☆」

ウチも気になるのだ。

松本はウチの顔を見ずに伏せ目がちで答える。

「女子が走ってるときの胸、かな?」

サイテーかよ。

「それはぐっと来るじゃなくて☆ムラッと来るじゃないですか☆先輩の変態☆スケベ☆けだもの☆」

ウチの叱咤を松本は笑う。

「あははっ。そう。男子からするとあんまり違いないからさ。グっともムラッとも。」

「もう☆男子って恋よりも色欲ってホントなんですねっ☆」

二人の笑い声が二人だけの教室に響く。

そして、息をながく吐いて松本はウチにこう告げた。

「このクラスに『よっしー』って子がいるんだけどね?君すごい似てるよ。」

え?やばい?

「多分、よっしーも同じ返ししたろうなって思う。」

やばいやばい!

もっと『美智子』に振りきらないと。

「美智子ちゃん……だっけ。実は俺、好きな人がい」

松本の口をウチの人指し指が止める。

二人だけの夕暮れの教室。

机に腰掛ける松本の顔とその前に立つウチの顔は同じ高さにある。

「先輩?☆後輩の告白も聞かずに先にフっちゃうのはひどいですよ?」

松本は自分の口を止める人指し指の先にあるウチの顔から視線を逸らさない。

「でも松本先輩はあっしーが告白する前にフッてくれようとしたんですよね?☆あっしーが恥をかかないように☆」

ホントに優しい人。

そして……。

「ホントにズルイ人っ☆」

松本は口をふさがれて、何も話さない。

でもその瞳は動揺に震えている。

「先輩☆走ってる女の子の胸にぐっとくるんですよね?☆」

松本の口に添えた指先を話した。

そしてその手を広げ、松本の顔を抱きしめた。

「女の子の胸がお好きなんですか?☆先輩?☆」

松本の顔にウチの胸を押しつける。


「あっしーの気持ち☆聞こえますか?☆先輩?☆」

ウチの心臓の音はとても強く波打つ。

でも今だけじゃないんだよ?松本。


ずっと鳴ってたんだから。

ずっとこうなんだから。


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