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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第4章 吉川美帆はガラスの靴を脱ぐ。
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キューン☆

「それで?美智子ちゃんは何しに3年生の校舎に?」

ミツキが率直でもっともな質問を投げかける。

この質問は練山が対策済みであった。

「えっとぉ☆吉川先輩がぁ風紀の活動をしてないからぁ☆吉川先輩のぉ風紀日報を代わりに持ってきて欲しいって頼まれたんですぅ☆」

ミツキとハラッチが顔を見合わせる。

「よっしーそんなの持ってたっけ。」

「活動すらしてないから持ってないんじゃない?」

ウチは口の前に軽く握ったこぶしを持ってくる。

「はわわわ☆大変ですぅ☆あれがないとクラスに風紀委員の立ち入り検査がはじまっちゃいますぅ☆」

事実である。

だからその日報だけは毎月キチンと提出していた。

もっとも、いつも報告ないようは『異常なし。』しか書いたことがないのだが。

「それは大変。あたしも探すの手伝う。」

早枝ちゃんが鼻息を荒げる。

ウチは松本と二人きりになりたいのだから手伝いは不要である。

特に早枝ちゃんなどがいようものならウチがキューピッドになって二人をくっつけかねない。

……でもそれが本当は望まれる展開では?

松本はそれが一番幸せになれる展開なのでは?

ウチは生唾を飲み込んだ。

「ミツキも手伝うよ?美智子ちゃん。」

これはウチの我が儘だ。

「ありがとうございます☆先輩方の皆々様☆でも大丈夫ですぅ☆憧れの吉川先輩の私物を探せるなんてヨダレが止まりませんので☆一人でじっくり楽しませていただきますぅ☆」

ウチはハンカチで口元を隠す。

三人はキューン☆という音を出し、胸を抑えた。

こんな女のどこにそんなに胸キュンポイントがあるのかウチにはまったくわからない。

自分で自分が嫌いになりそうなくらい気持ち悪いのに。

「そそそそそそそっか。じゃあもし見つからなかったお姉ちゃんたちに任せて帰ってね?明日本人にきいてあげるから。」

「そうそう。なんならミツキは今よっしーのところに行くところだから聞いといてあげるよ。」

いないよ。

だってここにいるもん。

「一年が無理良くない。」

ハラッチはまだウチの頭を撫でている。

三人は可愛い後輩に骨抜きだ。

「はぁい☆ありがとうございまぁす☆適度にがんばってみまぁす☆」

ウチは小さく敬礼する。

そしてその手を口の前に持っていき小さく手を合わせる。

「もし……立ち入り検査になったら……☆ふふっ☆謝罪っ☆」

キューン☆と三人は胸を抑える。

ホントに何がいいんだこいつら。

「じゃあ、お姉ちゃんたちは帰るね?」

「美智子ちゃんも本当に無理しないでね?」

「頑張って。」

三人はそれぞれの応援メッセージを口にする。

「はい☆優しいんですねっ☆先輩方☆」

するとミツキが口を開いた。

「だって……。よっしーに憧れる後輩なんて可愛いに決まってるじゃない。」

えっ?

「よっしーを目指したらダメだけど。頼りになる先輩だから。」

ハラッチ……。

「よっしーは……。」

早枝ちゃん……?

早枝ちゃんはウチに指を指してほほ笑んだ。

「高いハードルよ?」

そういうと三人は階段を下りて行った。


さて、教室に向かおうか。

今日は松本が掃除当番の日だ。

いつもならウチと一緒にやる日なのだけれど、『よっしー』帰ってしまったのだから仕方がない。

きっと一人で教室を掃除しているに違いない。

ずいぶんと足止めを食らった為、早くしないと掃除が終わってしまう。

別人タイムの時間も迫っている。

もたもたやっている時間はない。

ウチは教室の扉を元気よく開いた。

「失礼しまぁす☆風紀委員の活動に来ましたぁ☆」

教室にいたのは今井一人だけだった。

「お……お疲れ様です。」

「ちっ!」

「今舌打ちしました?」

「え?☆静電気じゃないですかぁ?☆乾燥ってこわぁい☆」

「梅雨ですよ?今」

細かいことはいいのよ今は。

「あの~。松本先輩は?」

「松本ならごみ捨てに行ったけれど。」

そっちかぁ。

大方、一人で掃除するのが可哀相だからと今井が手伝ったという形なのだろう。

「松本になにか?」

しまった!

あせった!

表向き今は『よっしー』に用事があるという体であったのに。

黙っているウチに今井は不審な目を向ける。

ええいこうなればままよ。

「あっしー☆松本先輩の大ファンでぇ☆委員ついでにお話してみたいなぁって思って☆」

どうせ今日限りの存在だ。

目的優先、松本優先なのだ。

後の矛盾はウチには関係ない。

「委員ついでっていうかぁ☆そっちが本命だったりぃ☆」

ウチは舌をぺろりと出して見せた。

「だ☆か☆ら☆」

ウチは今井の持っている自在箒に手を掛ける。

「譲ってくださらないかしら☆先輩☆」

今井は少し顔を赤らめる。

ちょろい。

ちょろすぎるぞ今井。

こんな女子にろくなやつがいないから注意しろと今すぐ説教したいくらいだがぐっと堪える。

「じゃ、じゃあお願いするよ。松本にうまく言っといてください。」

今井はウチに箒を押しつけるといそいそとカバンを背負い、前髪をいじりながら帰って行った。

「お、お疲れさまでした。」

ウチも今井に手を振る。


「お疲れ様でした☆先輩☆」

今井が扉を閉める音が、ウチ以外誰もいない教室内に響き渡る。

そう、教室にはもうウチしかいない。

『京極美智子』しかいないのだ。

すると、反対側の教室の扉が開いた。

そこにはごみ箱を持った松本が立っていた。

「あれ?君は?」


ウチは頬笑んで振り向く。

「はじめまして☆松本先輩☆」


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