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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第4章 吉川美帆はガラスの靴を脱ぐ。
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我が校の恥。

朝の校門前をたくさんの生徒たちが通りすぎていく。

その誰もがウチの容姿を一瞥していく。

それもそのはず、ウチの首には『悪い見本。我が校の恥』と書かれたボードが下げられ、風紀委員とともに立たされているのだから。

「この晒しはあんまりじゃん?」

ウチの不満に練山は聞く耳を持たない。

「何をいうのです。これも立派な風紀委員の活動ですよ。」

諌山の笑顔がむかつく。

確かにウチは風紀委員だ。

しかも一年の頃から所属し、今年で3期目である。

理由は至極簡単。

ウチが風紀委員になることでウチのクラスから風紀委員を排除できるからである。

風紀委員なんてだれもやりたくない委員会堂々の首位の為、ウチを阻むものはいなかった。

クラスのみんなとウチの利害は完全に一致。

結果としてうまくやれたのは最初の一年だけだった。

そう、練山が入学してくるまでは?


「なにしてんの?」

そうウチに声を掛けてきたのはもちろんあの方である。

声を聞くだけで思わず突っかかりたくなる、常にマウンティングを取りたがるかのような声の掛け方をするのは彼女しかいない。

そう、早枝ちゃんである。

「……おはよう。」

「ふ~ん。」

早枝ちゃんはウチの姿を足元から髪型までゆっくりと眺めた後、その口を歪めた。

「あらあらまあまあ、へえ~、そう。これが『悪い見本』ねえ。あたしも気をつけなくちゃね。御苦労さま?よっしーさん?」

「冷やかしなら帰れー!」

ウチの怒号を意に介さず早枝ちゃんはゆっくりと立ち去って行った。

あいつはまったく人の癇に障る発言をすることに関しては天才的である。

「風紀とかいうんならああいう態度も取り締まるべきじゃない?」

ウチは練山に話しかけたつもりだったけれどその返答は返ってこなかった。

「練山?」

そこにはいつものキリリとした練山の姿はなく、ただ呆けて早枝ちゃんの後ろ姿を眺める練山の姿だった。

「……美しい。」

「はあ?」

「アイロンのかけられたYシャツ、埃ひとつないブレザー。左右対称に絞められたネクタイ。ひざ下のスカート。耳上までたくしあげられた、かつ綺麗に纏められたポニーテール。まるで規律が体をなしているかのようです。」

あいつがそんなに高く評価されるのなら規律なんてたいしたことがない。

そんなにいいの?

早枝ちゃんはそんなに魅力ある人物なのか。

確かに悪い人じゃない。

いつでも一歩引いたところで俯瞰して、必要なことだけしていく。

近づいてくる人には悪態をついてしまう不器用さもある。

そんな早枝ちゃんに練山はそんなに心惹かれるのはなぜ……?

あいつも……。

ウチは少し意地悪を言いたくなった。

魔がさしたってやつ。

「早枝ちゃんの普段の悪態を聞いたらあんたの理想なんて吹っ飛ぶわよ。」

「サエちゃんというんですか。素晴らしい。名が体を表している。」

「一応上級生なんだから『ちゃん』はやめなさい?2年生?」

そして一応ウチも先輩なんだけれど少しは敬ってほしい。

「早枝ちゃんはね。ああみえても……」

「泉野がどうした?」

ウチは突然の登場に飛び上がった。

後ろを振り向くとそこには松本が立っていた。

「え?いや!その。」

松本はウチの下げられているボードを読むと素早くスマホを取り出し撮影した。

「ちょ!なに撮ってんのよ!」

「記念すべき初活動を残しておこうかと。よっしーの初風紀記念。」

「そんな記念はいらん。」

松本は笑う。

ウチの姿をみて子どものように。

「似合ってるぜー?よっしー。ただ……。」

松本はウチの首から下げられたボードを取り上げた。

「『我が校の恥』はいいすぎかな?」

松本はちらりと練山の顔に視線を送る。

練山は無言。

だけれど松本の目に感情なく、熱意のない視線を送る。

「おい。後輩に睨み効かすのは大人げないぞ。」

松本に声を掛けたのは今井だった。

「おはよ。よっしー。」

「おはー。」

「別に睨んでねえし。君もごめんね。このボードは俺がもらってくから。」

松本はボードを手元でくるりと回すといつの間にか彼の手元にボードはなくなっていた。

さすが世界的マジシャンに引き込まれるだけはある。

「また教室でな。よっしー。」

松本はウチに手を振りながら校門を後にした。

その後ろ姿を見届けた練山が呟く。

「吉川さんが好きなるのはわかりますね。すごく熱い男子ですね。」

「なっ!」

この男!

やっと口を開いてきたと思ったら何を言うんだ!

「ウチが?松本を?なんで?」

「もう一人の垂れ目かもしれないのにどうして松本さんだと?」

しまった。

「松本さんは校内でも有名人ですからね。人気高いですよ?」

「人気もなにもそんなんじゃないし……。」

練山はウチを一瞥した。

「あなたのその規律を軽んじる姿は、素直さを履き違えた姿だと思っていました。それがずいぶんと素直じゃないじゃないですか。」

「ほんとに好きとかじゃないから。変な勘ぐりはやめて。」

練山はいじけるウチをバカにすることなく告げた。

「一年間あなたを追いまわしたんです。吉川さん、自分で思うよりも恋する少女やってますよ?」

少し寒気がした。

「今までのあんたで一番気持ちわるい発言だったわ。」

練山はポケットから腕章を取りだした。

「気持ち悪くて結構、僕、多分吉川さんの力になれますよ?」

腕章には『風紀』と書かれていた。


「男を落とすのは風紀です。」

こいつは絶対当てにならない。

ウチの本能が警鐘を大音量で鳴らした。

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