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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第4章 吉川美帆はガラスの靴を脱ぐ。
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風紀委員。

『シンデレラ』

それはだれでも知っている素敵なおとぎ話。

貧しいシンデレラが周囲のイジメを耐え抜き、たった一度のチャンスを掴み、ハッピーエンドを迎えるお話。

でもウチは思う。

シンデレラがもし、ガラスの靴を落とさなければ。

王子様がガラスの靴を見つけていなければ。

シンデレラは王子様と結ばれることができたのだろうか。

きっと見つけることは出来なかっただろう。

たとえシンデレラが舞踏会で名を明かしていたとしても、結ばれたとは限らない。

あのお話でウチが得た教訓はただ一つ。

ガラスの靴を残してくることである。

吉川美帆はガラスの靴を脱ぐのである。


「おはよー。」

コンビニの前で待つミツキに声を掛ける。

「もう、遅いよー?今日も先行こうかと迷ったじゃない。」

ミツキがウチを叱責する。

「ごめん、ごめん。ゴールデンウィークからなかなかボケが抜けなくて。」

「もう一週間は経つんだけど?」

まだ一週間である。

「そういえば先週、ハラッチどうだったの?」

「ん、兄貴が無事見つけたみたい。授業参観はほとんど間に合わなかったみたいだけど……。」

先週の金曜日、ハラッチが早退した後にスマホをいじっていたウチはたまたま電車が止まっているニュースを目にしたのだ。

すぐにハラッチに知らせようと思ったけれど、彼女のスマホは今壊れていることを思い出し、ウチは兄貴に連絡を入れた。

兄貴は仕事中だった。

その日は日勤でちょうどウチらと同じお昼休みだったらしい。

兄貴はウチのラインを確認するや否や仮病を使い早退。

ハラッチのもとへ駆けつけたのである。

我が兄ながら恥ずかしい奴だが、これがなかなか頼りになる兄である。

「よっしーのお兄さんてホントにイイ人って感じよね。」

「正確には都合の良い人ね」

ウチは皮肉たっぷりに肯定した。

「こっちのことは何でもお見通し。何事も否定せず、それでいて不満を隠さない。いつも他人の事ばかり気にかけていながらそれでいて自分の事はないがしろにしない。こんな都合の良い人間いないわ。」

友人とか上司なら最高。

兄弟姉妹としては最低。

コンプレックスにしかならない。

完璧すぎる兄なんて持つものじゃない。

……まあ……嫌いじゃないけど。

「都合の良い人かあ……。それって完璧じゃない?」

友人の闇を垣間見た気がする。

ウチはミツキの肩に手を置いた。

「あんたも疲れてるのね……。」

「よっしーはもう少し頭つかお?」

ミツキはウチに向かってほほ笑んだ。


校門が近づいてきた。

そこには少人数の人だかりができている。

「げっ」

その面々には見覚えがある。

見覚えとかそんなレベルじゃない。

面識があるといっていいレベルだ。

そこに並ぶ面々。

それぞれの腕には腕章。

生徒でありながら、生徒に仇なし教師に尻尾を振る集団。

風紀委員だ。

ウチはカバンを頭から被り顔を隠した。

そしてミツキの影に隠れ校門を通ることにした。

「よ~し~か~わ~さん?」

顔を隠していたのにやはりバレまれている。

こっちだって顔を見る前に声の主が誰なのか分かるのだから。

ウチの視界は突然開ける。

そして、目の前には風紀の腕章をつけた男子がウチの鞄を宙ブラリンにしている。

「吉川さん?何ですかその格好は?」

ウチは汗を掻きながら風紀の男子に質問をする。

「かかかか格好とは?」

風紀の男子は深くため息を着く。

「金髪!ネイル!メイク!締められていないネクタイ!スカート!問題ないのはその靴くらいです!」

「かかと!踏んでます!」

メガネの風紀女子が告げ口する。

「たった今。君の風紀が保たれている点は一つもなくなりました。」

風紀の男子はひょろい身体に小さな身長。

ウチより少し低いくらいしかない。

なのに口と態度だけはでかい。

「吉川さん浄化計画実施しまーす。」

風紀の男子の手には毛染めの箱が持たれていた。

「たかが校則でそれはやりすぎじゃない?!」

「やりすぎなものですか。ルールを守られていないのであればルールに沿わせるのが風紀です。」

「ルール、ルールてね。ルールに満足している人たちはそれで良いかもしれないけれどね。あんたみたいに親が金持ちで現状のルールに満足しているようなやつはね。」

「親は関係ないのでは?今の反論は全く論点が合致していない為議論出来かねますね。」

この男は本当に好かない。

論破さえできれば正義と思っているところがなお好かない。

「じゃあミツキはどうなのよ!ミツキだって似たもんじゃない!」

「ちょっと?!」

ウチは親友を売った。

「?!」

風紀の男子の目がミツキに向けられる。

ミツキは一瞬たじろぐ。

ミツキは男子に距離を詰めた。

「これ。地毛なんです。」

「それはさすがに無理が……。」

「染めた髪……触ったことある?すっごいゴワゴワするの。傷んじゃうの。ほら、ミツキの髪触ってみて?」

ミツキは両手で男子の手を握り、自分の頭髪に持っていく。

「ほら?サラサラでしょ?ケア大変なだから。これでも……だめ?」

男子の顔は沸騰寸前だった。

「これは!……地毛!」

「風紀が聞いて呆れるな。」

ウチは本心がそのまま口から出た。

「お先ー。」

ミツキは手を振りながら校門をくぐって行った。

「ミツキ~。」

ウチの助けを求める声は彼女には届かなかった。

「諦めるんですね吉川さん。」

「どうしていつもウチばっかり摘発するのよ!練山!」

風紀の男子、練山はまたも深くため息を着く。


「いや、あなた風紀委員でしょ。」


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