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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第3章 安原の参観日。
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おやすみなさい。

交番で大樹の捜索を手伝ってくださった警察の方々に深々と頭を下げ、ご迷惑をおかけしたことを謝罪した。

お巡りさんはみな誰も怒らず、ただ純粋に大樹が見つかったことに安堵した様子だった。

母は一度提出した捜索願の手続きが少しだけあるということで、夜も遅いため私と大樹は京平さんに先に送ってもらうこととなった。


自宅の玄関を開くとリビングからクラスのみんなが飛び出してきた。

「大樹くん!」

よっしーが大樹に飛びつく。

「……よかった。本当によかった。」

彼女もあの広いみどり公園を必死になって探してくれたのだ。

感謝の気持ちが自然とこみ上げるものである。

よっしーとミツキはたまに家に遊びに来てくれていたのでその心配たるや推し量る術もない。

十分に抱きしめたあと大樹の両肩をしっかりつかむと、大樹の目を見てよっしーは諭した。

「ばか!もしものことがあったらどうするのよ!二度とこんな真似しないで!」

よっしーの怒鳴り声が玄関に響いた後、大樹が俯き気味で呟いた。

「……ごめ……んな……さい。」

その言葉を聞くとよっしーは少しだけほほ笑んだ。

「……ホントに甘え方が下手なんだから……姉弟そろって。」

そう口にすると私の顔もちらりと覗く。

兄妹そろってお見通しというわけですか。

私は口をとがらせてそっぽを向いた。

その視線の先にはお風呂場が目に入る。

たしか、水浸しで飛び出したはずなのに、その形跡がまったくといっていいほどない。

「……もしかして。」

「簡単にだけれどね。雑なとこは大目にみなさい?」

そこには腕組をしながらこちらをうかがう早枝ちゃんの姿があった。

「ありがとう。……みんな本当にありがとう。」

大樹を探してくれて。

家を片付けてくれて。

夜遅くに駆け付けてくれて。

私を一人にしないでくれて。

感謝してもしきれないほどの気持ちが今、私の胸の中にある。

私は間違いなく、この星でもっとも恵まれた人間に違いない。

「じゃあ!大樹くんも見つかったことだし俺たちも帰ろうぜ。」

松本くんがペットボトルを片手にみんなに解散を促す。

「そうね。これ以上長居するのもハラッチに迷惑だし。」

ミツキが松本くんに賛成すると、タピオカミルクティーを口に含んだ。

「じゃあ、京平さん。よろしくお願いします。」

今井くんに至ってはコンビニホットスナックの唐揚げを頬張りながら、京平さんに送迎を懇願する。

「お前ら、家から出るなと言ったはずなんだが?僕は。」

そう、彼らの手持ちを見るに、明らかにコンビニにいった跡がある。

リビングもお菓子を広げていて、ずいぶんとくつろいだ形跡があるじゃないか。

……本当に心配してくれていたのか疑念が残るほどに楽しんだ形跡がある。

「向かいのコンビニ行くくらいいいじゃん!泉野とかちゃんと留守番してたんだし!」

京平さんは頭を掻いてため息をついた。

「もう少し話のわかる子たちだと思ってたのに。」

コンビニはこのアパートから道路を挟んで真向かいにある。

いくら深夜とはいえ、確かにこの距離で何か起こるとは考えづらい。

やはり京平さんから見たら私たちはまだまだ子ども。

大樹と変わりないってことなんだろうか。

リビングのテーブルの上にアルバムがあった。

おかしい。

あのアルバムは確かまだなにも挟んでいないはず。

私はアルバムを手にとった。

重い。

明らかに写真が挟まれている。

アルバムの表紙を開くと、そこには私が現像したゴールデンウィークの写真が収められていた。

「勝手に作っちゃったわ?迷惑だったかしら。」

よっしーの問いに私は無言で首を振る。

アルバムを作ってもらったことが不満なわけではない。

ただ、私の写真を見られたのが妙にこそばゆいだけなのだ。

「写真、人に見せたことがなかったから、ちょっと恥ずかしくて。」

「俺にキスの画像送ってきたのは?」

写真の配置の仕方がなかなかに凝っている。

重ねたり、斜めにしたり。

一枚、一枚をじっくり見るのが好きな私が想像したことのない構図だった。

アルバムの一ページに風景が広がるような。

複数の写真に流れを感じる。

そういうのを意識して撮影したことはなかったな。

そんなことを考えながらアルバムをめくる。

そこにあったのは、私と大地がアイスを食べている写真。

プールにて、よっしーが顔に水を浴びて私が後ろに隠れている写真。

夕食のバイキングで、ミツキとケーキばかり確保している私の写真。

みんなで皇帝ゲームをやっているとき、割り箸を持つ手で顔を少しだけ隠し笑っている私の写真。

私の知らない、私の写真が何枚も散りばめられていたのだ。

「……足りない分は勝手に足したけど?文句ある?」

足りない分。

私の写真に足りないもの。

足りなかったもの。

最後の一ページに収められていた写真はたった一枚。

みんなが手に割り箸を持っている。

それはとても狭苦しい車内の写真。

みんな笑っている一枚。

私はアルバムで顔を隠した。

「私たち帰るわね?また明日。」

「もう今日じゃない?」

「でた!そういうめんどくさい返しするやつ」

「おやすみなさい。」

「大樹くんまたね。」

みんなそれぞれの挨拶を口にする。


「……うん。……うん。……うん。」

私は顔を隠したまま、相槌を返すのがやっとだった。




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