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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第3章 安原の参観日。
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安原家のお弁当改革。

けたたましい金属音で目を覚ます。

時刻は朝の5時。

いつもよりも30分早い起床だ。

目ざまし時計を止めて、静かに寝息を立てる大樹に目をやる。

今日も静かに眠っている。

起こさないように布団を抜け出し、寝室を出ると玄関で母が靴を履いていた。

「あら、今日は早起きじゃない。」

「うん。」

久しぶりの母との会話だ。

母は私たちが寝静まったころ帰ってきて、朝起きる前にはもう出勤している。

休みなどない。

仕事をいくつ掛けもちしているのかすら娘の私は知らないのだ。

「なにか、あるの?今日」

「別に。」

母の薄い化粧では目の下のクマが隠しきれていない。

ファンデーションを節約しているのだろうか。

「金曜日、大樹の授業参観があるんだけど」

そう、と呟くと母はやつれた髪の毛を耳にかける。

「大樹に悪いけれど、智香……お願いしてもいいかしら」

「うん。」

そのつもりでもう先生には伝えている。

「ごめんなさいね。」

あなたが謝る必要なんかない。

こんなにも身を削って働いてくれているのだから。

「ううん。」

私は首を横に振った。

「……じゃあお母さん、行くわね。」

「いってらっしゃい。」

母は玄関を開き、仕事へ向かう。

私は玄関に向かって右手を小さく振った。

閉まりかけた扉が途中で止まり、母の顔がぬっと出てくる。

「大樹のことは助かっているけれど、受験勉強もちゃんとしなさいね。」

「うん。」

私の返事を聞き終えると、玄関の扉はしまった。

……こんな母の姿を見せられて、進学なんてできるわけないじゃない。

私は扉に向けた右手をそっと下ろした。


さて、お弁当づくりの始まりだ。

私はお鍋に水を汲み、お湯を沸かす。

そして冷凍庫から昨日のうちに仕込んでおいた加熱済みのハンバーグを取り出し電子レンジで解凍する。

ウィンナーの入った袋から6本取り出し、すべてに包丁で切りこみを入れていく。

沸騰したお湯の中に投入していく。

みるみるうちに、ウィンナー達は足を広げていく。

お弁当にお米をよそう。

1分程でウィンナーを回収する。

お弁当の定番、たこさんウィンナーの完成である。

そしてこの煮だったお湯も無駄にはできない。

お湯に少量の食塩を振り入れ、パスタを投入していく。

電子レンジがハンバーグの過熱を終えたことを告げる。

ハンバーグの状態が少し心配だ。

フライパンを温め、一応ハンバーグをさらに過熱しておこう。

過熱を終えたハンバーグをお弁当に詰め、少し肉汁の出たフライパンに少量のケチャップと中濃ソースを加える。

小さいスプーンで掬い、ハンバーグにかけていく。

茹でたパスタをザルにあけ、パスタにオリーブオイルを少量垂らしからめていく。

先ほどのソースの残るフライパンにバターを一つ落とし、カットマッシュルームと昨日カットしておいたピーマンを加えて炒めていく。

火が通ったのを確認したらパスタを加え、ケチャップと牛乳を少量入れ塩コショウでさらに絡めていけば安原家特製スパゲティの完成だ。

するとリビングの扉が開いた。

扉を開いたのは大樹だった。

時刻は5時30分の少し前だった。

いつもよりもだいぶ早起きだ。

私が起こす前に起きるなんて。

大樹は寝むそうな顔で私を探し、キッチンに立つ私と目が合うと茫然と見つめてきた。

「あら、今日は早起きじゃない。」

「うん。」

大樹はパジャマのままキッチンに来ると、調理中のお弁当をちらりと覗いた。

二度寝はしないみたいね。

私は広い器を一つとると完成したスパゲティを盛りつける。

「早いけど朝ごはんにする?」

私は盛りつけた器を大樹に差し出した。

「うん。」

大樹は器を受け取ると私の顔を見上げる。

私は垂れた髪の毛を耳にかける。

「……?大樹?」

「いただきます。」

大樹は私にお礼を言うとフォークをもってリビングへ移動した。

本当に礼儀正しい子だ。

こんなに大人しい小学生もなかなかいないだろう。

……あの旅行の時くらい、はしゃいで丁度いいのに。

手がかからなさ過ぎて姉としては心配なくらいである。

私は残りのスパゲティをもう一つの器によそうと、少しだけお弁当に分けた。

お弁当に蓋をして、ふりかけと一緒に包む。

お箸をつけたら完成だ。

時間は5時30分を過ぎたくらいだ。

後片付けを考えても起きる時間はこれくらいで良さそうだ。

私も朝ごはんにしよう。

自分のスパゲティがよそわれた器を持ってリビングに移動しよう。

リビングの方を見ると、大樹がやっぱり私を見ている。

大樹は私から目をそらしスパゲティを食べだす。

何か足りないだろうか。

私はとりあえずテーブルにつくと、自分のメニューを確認する。

……。

汁もの!そう、汁ものがないのね!

私は立ち上がると冷蔵庫に向かい、グラス二つにオレンジジュースを注ぐ。

グラス二つを持ってテーブルで待つ大樹の右手側にグラスを置いた。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

ひとまず、お弁当を作ることができた。

私、できるじゃん。

早く食べて、早く後片付けして、学校の準備しなくちゃ。

私は自分の作ったスパゲティにお礼をいう。

「いただきます。」

スパゲティを一口頬張る。

口の中に広がる、ケチャップの風味。

……ハンバーグのソースは少し余計だったかもしれない。


反省は一瞬で、私の頭の中はすでに今日の夕飯と明日のお弁当のことを考えていた。

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