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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第3章 安原の参観日。
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早退させてください。

お昼休み、私は職員室で担任の先生に相談をしていた。

「そうか、弟さんの参観日か……」

今週の金曜日、大樹の参観日があるのだ。

お母さんはもちろん仕事で参加できない為、私が参加しようというお話だ。

「はい、ですので金曜日の午後は授業休んでもいいですか?」

先生は出席簿に何やらメモを取り出す。

「安原の家庭の事情は把握しているからな、大丈夫だ。弟さんの参観日に行ってやれ。」

私は先生に深く頭を下げた。

「ありがとうございます。」

「安原は本当によくがんばってるよな。弟さんの面倒見ながらで大変なのに成績も落としてない。」

「いえ、普通のことです。」

先生は腕組をして目をつむり、何かを思い出すように天を仰ぐ。

「いやいや、素晴らしいことだぞ?うちの息子も今年から小学生だけどな、毎日仕事と育児の両立それはそれ大変で……」

「失礼しました。」

長くなりそうだったので私は職員室を後にした。


教室にもどるとミツキとよっしー、そして早枝ちゃんが席をくっつけて私を待っていた。

「おまたせ。」

「ううん、意外の早かったじゃん。」

「長くなりそうだったから切りあげてきた。」

私は席に着くと、居心地の悪そうな早枝ちゃんに声をかける。

「早枝ちゃんとお昼できるのは、嬉しい。」

「あたしは別に……」

よっしーがすかさず早枝ちゃんをいじる。

「こいつ、察して逃げようとしたんだぜ?」

「逃げてないわよ!……購買に行こうとしただけじゃない。」

よっしーと早枝ちゃんは同じサンドウィッチを机の上にあげていた。

「ほんと、仲いいね二人とも。」

二人とも血相を変えて否定する。

「たまたまよ!たまたま!」

「ほら!飲み物は違うから!一緒じゃないから!」

ふ~んと私は興味なく答える。

「だ……第一いつもどこでお昼食べてたのよ。」

「どこでもいいでしょ。」

「もしかして誰かと食べてたりした?」

ミツキの問いにほんの一瞬の間があった。

「……一人よ。」

三人は早枝ちゃんの顔をじっと見つめる。

「同情しないで!一人が好きなのあたしは!」

そういうことにしてあげましょうと私たちはお昼を始める。

私とミツキがお弁当を広げると、早枝ちゃんが食いつく。

「お弁当?いいな~!たまにはあたしもお弁当作ってもらおうかな。」

ミツキが自分の弁当を自慢する。

「いいでしょ~?」

お弁当を作っている私にはわかる。

ミツキのお弁当はかなり手が込んでいるのがわかるのだ。

娘の好きなものだけを詰め込んだようなお弁当の中に冷凍食品を一品も見当たらない。

王道のたこさんウィンナーにハート型に焼かれたハンバーグ。

心なしかミツキも少し恥ずかしそうではある。

でも親の愛情がたくさん詰まったお弁当なのは明らかだった。

「すごいといえばハラッチはもっとすごいよ?」

「なんせ自分で作ってるんだからな、しかも弟の分も」

「まじっ?!すごいハラッチ!」

早枝ちゃんが私のお弁当に視線を移したのが嫌で、少しだけ覆うようにお弁当を隠した。

「いや……そのっ。私のは冷凍食品詰めてきただけだから。大したことないよ」

「そんなことないよ~!すごい可愛いよ?」

やめてほしい。

ことミツキのお弁当と見比べられるなんて耐えられない。

……恥ずかしい。

もしかして大樹も同じ思いをしているんじゃ……。

私は背筋が凍るような悪寒が走った。

「金曜日おやすみはもらえたの?」

ミツキが私に問う。

「うん。午後だけね?」

「ええ~。休めばよかったのに。」

よっしーが信じられないといったリアクションをする。

あなたは休みたいだけでしょう。

「たった2駅分しか離れてないから、4時間目終わってからでも時間余るくらいよ」

「え?なに?どうしたの?」

早枝ちゃんが話についてこられていない為、説明してあげる。

「今週の金曜、弟の参観日なの。13時30分から。」

「へえ~。弟さんの学校てどこなの?」

ミツキとよっしーがニマニマしている。

「なによ。あんたたち。」

早枝ちゃんがまた不機嫌になる。

本当に感情の起伏の激しい人だ。

でも普通に言うのも気が引ける。

なんか……自慢みたいで。

私は早枝ちゃんにこっそり耳打ちをした。

「ええ!!名門私立じゃない!!」

耳打ちした意味。

私は恥ずかしさのあまり赤面する。

「すごいよね。ハラッチも勉強できるし、お姉ちゃんを見習ってがんばったのかな?」

「でも私はミツキに勝ったことないけれどね。」

そうだっけとミツキはとぼける。

大樹は確かにお勉強をすごく頑張っていた。

幼稚園のお友達でもお受験雰囲気を出していた子はいないのに。

どうして大樹がそんなに頑張っていたかは少しわかる気がする。

それが正しいからだ。

私が大樹の面倒を見ているのもそれが正しいから。

本当にそっくりな姉弟だ。

「それで?お姉さんはお受験どうするか決めたんですか?」

よっしーが私をからかっているつもりなのだろう。

だけれど私はまじめに答える。

いつものように、感情を込めずに、無表情で。

「しないわ?就職する。」

「ええ?もったいない!せっかく勉強できるのに。」

ミツキの問いに私は率直な疑問がある。

勉強ができる人は皆、就職しないといけないのか。

私はお母さんを楽させてあげたい、弟の学費を稼ぎたい。

だから私の次の義務は勉強ではない。

家にお金を入れて、大樹を立派な大学、はたまた好きな進路に進めてあげることだ。

それが正しいのだ。

そんなことをここでいう必要ない。

「別に。勉強したいことも、将来なりたいものもないし。」

私は玉子焼きを口に運んだ。

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