ゴールデンウィークが終わっちゃう。
「そろそろ俺バイトいかなきゃ」
ショッピングモールにあるハンバーガーショップで俺たちはお昼をしていた。
もうすぐ12時になるという時だろうか。
松本のバイトの時間が来てしまった。
「えー!まだちょっとしか遊んでないじゃーん」
吉川さんが不満を漏らす。
「午前だけっていったろ?バイト遅れるとマジ洒落になんねんだって。」
松本は手短に自分のトレイを纏めるとカバンを背負った。
「じゃあすまん!俺行くわ。また明日!」
颯爽と走り去っていく後ろ姿を俺たちはただ見送っていた。
吉川さんは机に顎をのせてため息をついた。
「つまんなーい。2時間も遊んでないじゃん」
「バイトなんだから仕方ないよ。」
バイトの合間に無理に誘った俺が悪いのだが。
「なんか今遊び終わったらゴールデンウぃークが終わっちゃう感じがするじゃん?」
感じがするというか実際もう終わるんだが。
「次は夏休みまでまだまだ長いじゃん?今のうちに遊び溜めしとかないと。」
「まだまだって。あと2カ月ちょっとじゃない。」
「その間に中間テストと期末テストがあるじゃない!まだまだ先よ!」
吉川さんは時間の量より質を意識するタイプみたいだ。
「よっしーがテスト意識するなんて意外。今まで赤点取らなければいいって感じだったのに」
吉川さんはストローでジュースを一口飲むと、手で紙コップをくるくるさせる。
「あいつがね、ウチを大学に入れるって一人で意気込んでるからさ。残業とかすごいしてんの。」
困ったように笑う。
「それ見ちゃうとねー。あんまりテキトーなことできないなーって」
「じゃあテスト勉強だけじゃなく受験勉強もがんばらなきゃね。」
ミツキがやさしくほほ笑む。
「いやいや受験は来年よ。早すぎでしょ。」
空気が凍りつく。
「いやほら。もうすぐ半年きるわけで……」
吉川さんが高笑いをあげる。
「なに?今井は半年も先のテストの為にテスト勉強してんの?」
少なくともさらに半年前からすでにやっているんですが。
ミツキが自分のドリンクを静かにテーブルに置いた。
「……もちろん、宿題くらいは全て終わらせたのよね?」
吉川さんはなにがそんなにおかしいのかまたも笑う。
「夏休みじゃないんだから宿題なんてないでしょっ」
「……あったわ。」
「……あったね。数学と物理と英語が出てたはず。」
吉川さんの表情から一瞬にして感情が消えた。
……京平さんが不憫に思えてきた。
「ミツキこれからウチで……」
「仕方ないわね。良太もそれでいい?」
まあ松本がバイト行っちゃった時点でお開きムードがあったわけだし仕方あるまい。
「うんいいよ。じゃあ今日はお開きという……わけ……で?」
ナンデソウナルノといわんばかりの眼光がミツキから向けられる。
「教科は3つもあるの。あと半日しかないのにミツキ一人にやらせる気?」
「えっ?ウチにもキレてない?」
「お手伝いさせていただきます。」
「よし」
ミツキが小さく頷くと吉川さんが控えめに手を挙げる。
「……あのー。大変申し上げにくいのですが。そのー。宿題をですね?ちょろっと写させてもらったりするだけでよろしいんですが……」
ミツキが吉川さんを睨むと、ひぃっと小さく悲鳴を上げる。
「もう12時になるという時にわざわざ家に宿題を取りにいくの?ミツキと良太の家はこのショッピングモールから反対方向に同じだけ離れているわけだからどちらに取りに行くにも遠いわけで。よっしーの家にこのまま真っすぐ向かえばここから3駅分で済むのにそんな無駄なことをさせる気?自分が楽をするためだけに。第一今さっき大学がどうの言ってた本人が宿題も一人で」
「もういいから。ミツキ。ほら、吉川さん泣いてるから。」
吉川さんは俯いたまま目に涙を浮かべていた。
ミツキは一呼吸つくと、トレイをまとめて立ち上がった。
「じゃあ、飲み物とお菓子買って早速向かうわよ?」
そんなこんなで俺は女子二人に挟まれて電車の座席で揺られている。
正直、眠気がピークなのだが、ここで眠るわけにいかない。
俺の両隣の女子がどちらも寝ているからだ。
ふたりとも俺の肩にもたれかかっている。
……すげーいいにおい。
じゃなくて、たった3駅分でどうして眠ることができるのか。
徹夜明けの俺はまだしもたった20分弱を起きていられないとはどういうこと?
ミツキは俺のラインを既読スルーで寝たくせにまだ寝るんか。
一番最悪のタイミングで寝やがって。
このかわいい寝顔も今の己の眠気と天秤にかけるといらだちを覚える程だ。
寝息をつく彼女の長いまつげに目を奪われる。
……それにしてもとてもうたた寝には見えない。
もしかして、君の寝れなかったの?
「次は~。お出口は~右側です。」
!!確か吉川さんはこの駅だったはず。
俺は吉川さんをまず起こしてみる。
「吉川さん起きてここじゃない?」
吉川さんは迷惑そうに起きると電車の表示を確認する。
「ん~。ここ。」
それを確認できたらよかった、次はミツキを起こす。
「ミツキ、着いたよ。起きて。」
ミツキの長いまつ毛が少し動くと、大きな目がゆっくりと開いた。
「……?」
ミツキは寝ぼけているのか状況が飲み込めていないようだった。
「駅!もう着いたから降りないと」
「もう!ミツキってホント寝起き悪いよね!」
吉川さんは明るめに皮肉をいうがミツキのリアクションはパッとしない。
「ミツキ?」
そしてミツキはやっと口を開く。
「……なんで?」




