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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
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プリクラを撮ろう。

「ねえねえ!プリクラとろーよ!」

四人でプリクラの中に入る。

この狭い四方形の中に男女がギュウギュウに詰める。

今世界で一番いい匂いがする空間に違いない。

「詰めて詰めてっ」

俺の二の腕がミツキの身体のに触れる。

俺の全神経は今、俺の右ひじに集中していた。

するとミツキが呟いた。

「良太、ちょっとだけ柑橘系のいいにおいがする。ワックスかな?」

旅行はすごい楽しかったけど。

どうしてだろう、今日の方が断然楽しい。

……二人きりならどんなに楽しいのだろうか。

「くるよー?」

このまま時間が止まってしまえばいいのに。

シャッター音が静かに鳴る。

何枚も写真を撮っていく。

ポーズを考えている暇のもない程絶え間なく。

女子二人は慣れている様子で淡々とポーズを決めていく。

松本は松本でアナウンスのアドバイスガン無視で顔をキメていく。

「あんた良く恥ずかしくもなくそういう顔できるわね」

「んー?かっこいいから?」

この男は素で言うから怖い。

かっこいいはかっこいいけどそこまでじゃないからな?

「むしろ良太は堅いよ?せっかくおしゃれしたんだから、ね?」

「そうはいっても、やっぱりこういうカメラっていうのは緊張しちゃって。」

ミツキは口に手を当てくすっと笑う。

「カメラって。これはゲームだよ?この後の落書きがメインなんだしテキトーでいいのよテキトーで。」

テキトーができるのはコミュ力のある自己肯定ができるやつだけだよ。

俺はひきつった笑顔のままアナウンスに要求された口の前でピースをする。

はたして男子のこのポーズはいかがなものか。

「堅い表情もおもしろいけど……。そうだ。」

ミツキは俺の右腕に自分の腕を回してきた。

密着度が増す。

「ミツキと同じのして?お願い。」

もう頭が沸騰しそうです。

俺はそこからは何も考えずミツキのまねをすることだけに集中した。

猫のポーズだったり、鉄砲のポーズだったり。

二人で次々とポーズを変えていく。

だからだろうか、自分の顔がどう映るかとかそういうことはきにならなくなっていた。

ただ変化していくミツキがどれもかわいくて見とれてしまっていた。

俺はやっぱりミツキの顔が一番すきなのかもしれない。

でもそれだけじゃない。

俺をぐいぐい引っ張ってくれるミツキが好きなんだ。

自分が嫌いな俺だからこそ、俺を変えてくれる彼女が好きなんだ。

俺の中には一つの矛盾があるんだ。

彼女のことを知れば知るほど、彼女も俺と同じなんじゃないかという勘違いが増えていく。

そんなはずがないのは今こうしていてもわかる。

彼女が俺なんかと同じはずがないんだ。

俺はきっと……。

こんなダメな自分を好きになるミツキが見たくないんだ。

……恋人ってお互い好きにならないといけないのかな?

最後のシャッター音が俺達を残した。


女子二人はカーテンのなかでなにやら笑いながら落書きしている。

「ほいよ」

近くのベンチに座っている俺に松本が自販機のモナカアイスを半分分けてくれた。

「ありがとう」

俺はもらったモナカアイスにかぶりつくと口の中に小豆の甘みが広がる。

最近ずっと気になっていることを口にする。

「松本、最近元気なくない?」

「そう見える。」

俺は黙って頷く。

「まあもうみんなと離れるから少しセンチメンタルに浸っているのはあるけどな」

松本もアイスを口に入れていく。

「なあ良太?」

「んー?」

「俺がいなくなってもバイトは続けてくれよ?」

「人員足りなくなるしな」

「それもあるけどよ」

松本は俺の目を見て話を続ける。

「泉野を一人にしないでほしいんだ」

「?泉野さんは俺なんか必要としてないだろ」

俺は手元のアイスに視線を落とした。

「頼んだぞ?」

松本に視線を戻すと松本は未だに俺から視線を外していなかった。

「泉野さんは望んでいないと思う」

松本が真剣ならば俺も真剣にこたえよう。

「泉野さんは一人になりたがっている。」

「でも……一人が好きなんじゃない。」

松本の手元のモナカが潰されアイスが押し出されている。

「あいつと遊んでほしいわけじゃない。話相手になってほしいわけじゃないんだ。バイトを続けてくれるだけでいいから」

どれだけ空気の読めない俺でもわかってしまう。

松本の気持ちが……。

松本は泉野さんのことが……。

「でもお断りだ」

「えっ……」

俺が松本の頼みを断るとは思っていなかったらしい。

「それは俺の役目じゃない」

「良太の言いたいことはわかる。でも俺は……」

「何いってんのさ。松本の夢はそんな片手間じゃかなわないだろ?」

「……じゃあどういう。」

「おまたせー!げっ!!松本なにしてんの?!アイスもったいないし!」

落書きから戻ってきた吉川さんが松本の足元のアイスを指さす。

「えっ……。あっ」

松本は自分がアイスを握りつぶしていたことに気づいていなかったようだ。

吉川さんは松本の足元のアイスを鞄から取り出したハンカチで拭いてあげている。

「もお。食べ物粗末にすんなし。」

「お前って意外と育ちいいのな」

「あ?どういう意味?」

松本と吉川さんは一瞬睨みあうと、噴き出すように笑い始めた。

「はい。これ。松本の分」

吉川さんは松本にプリクラを差し出す。

そこにはさっき撮影した画像の上に言葉やスタンプが書き込まれていた。

クレーンへたくそとか、キザ野郎とか散々な書き込まれようだった。

「みんな目でかすぎっ」

「盛れてるからいいの!」

吉川さんがプリントシールを眺めながら松本に語りかけた。

「今度はみんなで来るね?ハラッチと早枝ちゃんと」

一瞬目を見開くと、安心したように目を細めた。

「……ん。」


「太鼓のやつやろーよミツキ!」

「やった。いいよ。」

「曲は絶対美少年の……」

「ヤメテ」


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