表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
33/189

クレーンゲームをしよう。

『明日もしよかったらどこか遊びにいきませんか?』

あれから俺は一睡もしていない。

ラインが帰ってこない。

すごい勇気を振り絞って誘ったのに。

やっぱり俺なんかが誘ったら迷惑だったか?

付き合ってもないのに二人きりで誘うのは身の程知らずなのだろうか。

返事を待っていたら朝日が昇っていた。

修正しよう。

二人だけじゃなくしよう。

松本は今日シフト午後からだったはず。

泉野さんは基本的にフルタイムだから無理か。

じゃあ吉川さんも誘ってもらって。

安原さんは……弟の面倒でもう遊べないって言ってたっけ。

俺はスマホの上に指を走らせる。

『松本とか吉川さんを誘ってさ』

うち終わったところで指を止める。

……ホントは最初に見てほしかったんだけどな、コンタクト。

俺はコメントの送信ボタンを押した。

その瞬間寝落ち謝罪を現すスタンプの後、返事が返ってきた。

『やった!いくいく!よっしーにはミツキから声かけておくねー』

寝てた……か。

ホントに寝てたのかな……。

うじうじしている自分が嫌になる。

こんな考え方しかできない自分が嫌いだ。

相手の気持ちを自分の保身のために都合悪く決めつけてしまう自分が。

相手の気持ちなんて相手だってよくわかっていないのに。


準備が終わり靴ひもを結んでいると二つ下の弟が声をかけてきた。

「兄ちゃん出かけるの?」

「ああ、夕飯までには帰るから」

ふーんと関心なさそうに相槌を打つ弟は俺の服装を下から上まで眺めた。

「……デート?」

「マンツーマンじゃないけどな」

「チキンったんだな?」

ふいに図星をつかれ急に恥ずかしくなる。

「付き合ってもないのにマンツーマンはおかしいだろ?!」

すると弟は腕組みをして俺を見下してきた。

「二人きりで遊んだことがないのに付き合う方がおかしくね?」

そういうもんなのか?

「まあどうでもいいけど、その髪なんとかしていきなよ。」

俺は髪をセットしたことがない。

京極さんのところでセットしてもらったのが人生で初のワックスだった。

「でもほら。あれじゃん?俺みたいなやつがワックスとかしたら調子のってるみたいじゃん?俺には俺のキャラが……」

「兄ちゃんはそんなことを言う人を好きになったの?自分のためにおしゃれしてくれたなら普通嬉しいんじゃないかな」

「そういう人じゃないけど、すごいおしゃれな人だから……俺なんかとはホント……」

「ふーん、兄ちゃんがそんなおしゃれさんに恋するとはねぇ」

弟はポケットから小さいワックスを取り出した。

「おいで。隣に立てるようにしてあげる。」


弟のセットアップにより想像以上にパワーアップした俺は徹夜明けのテンションも相まってハイテンションであった。

「これあげるよ」

「イラナイ」

ミツキの好きな美男子アニメのタペストリーをプレゼントしたが断られてしまった。

変だな。

ミツキはこの作品が好きだったはずなのに。

……!!ポスター派か!!

「へぇ。良太がそんなにクレーンゲームが得意だったとはね。」

松本はそういいながらゆっくりと歩き、ひとつのクレーンゲームの前で足をとめた。

「俺もクレーンゲームには覚えがあってね。この景品で勝負と行こうぜ」

松本は俺に指を指して挑戦状をたたきつけた。

勝負の景品は大きなウサギのぬいぐるみでクレーンは3本爪のクレーンとなっている。

「大口叩いた割には確立機じゃねえか」

「確立機?」

吉川さんが聞いてくるので質問に答えてあげよう。

「クレーンゲームには実力機と確立機っていうのがあって。アームの強さとか押しの強さとかを考えながら景品を狙うのが実力機。店側が設定した金額に達したらアームに力が加わって景品が獲れるのが確立機なんだ。」

松本は財布から小銭を取り出す。

「良太はそんな都市伝説を信じているのか?案外ミーハーなんだな?」

俺も財布から小銭を取り出す。

プライズフィギアの為に散財した小銭は流した涙より多いこの俺に勝負を挑むなど100年早いということ思い知らせてやろう。

「いいだろう。この勝負受けて立とう」

わーいやれやれーと外野の女子がはやし立てる。

「獲れた時点で勝利ならば回数を1回でも多くやれる先行が有利。先行は松本に譲ってやろう。」

松本はコインを投入した。

「その油断が命獲りになるぜ」

馬鹿め。俺はさっきこの景品をもっている人を確認済みだ。

ということはこのゲームの投入金額は0円ということ。

大抵の設定は2000円から5000円といった切りのいい偶数金額。

お前がこれから何回挑戦しようとお前は奇数回。

……勝った。

この勝負はもう終わっているのだ。

せいぜい君に半額を支払ってもらいミツキへのプレゼントの糧としてもらおう。

松本はアームを下ろすとぬいぐるみの足をかすめて持ち上げることすらできなかった。

「松本なにやってんのー!チョー下手じゃーん」

吉川さんがケラケラ笑うが笑いごとではない。

俺の顔を汗が滴り落ちる。

奴はちゃんと掴んでやがる。

景品の下に敷き詰められたボールを。

「ざーんねん。ボールは獲っても仕方ないわな」

松本は俺にニヤケ顔を向けた。

こいつ知ってやがる!

今のボールで景品がゲット扱いになってしまった。

投入金額がリセットされる。


「俺が奇数?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ