遊びに行かない?
車が通りを過ぎる音で目が覚める。
まだ寝足りない。
美月の夜更かしがどんどんひどくなっている気がする。
昨日も遅くまで良太とラインをしながらアニメを見ていたようだ。
次の日辛いのはミツキなのだから勘弁してほしい。
しかもそのあとになんの興味もないアニメの話を延々とされるミツキの気にもなってほしい
まあメインがそうしたいのであればそれに付き合うのがミツキの役目なんだろうけれど。
今日はゴールデンウィーク最終日。
たっぷりと寝過してしまったけれど休みの最終日はこれが正しい過ごし方だと思う。
でもおかしい。
今日は何の予定もない日なのだからミツキで目を覚ますわけがない。
そういえば昨日の夜なにか大切なことをラインで話していた気がする。
ミツキはベットの上に放置されているスマホを手に取ると昨日のラインを確認した。
『明日もしよかったらどこか遊びにいきませんか?』
あいつ逃げやがった!良太からの誘いをミツキに託しやがった。
ビビってんじゃないわよ美月。
丁度その時、良太から新着ラインが届いた。
『松本とか吉川さんを誘ってさ』
お前もか!!
ショッピングモールのカフェでタピオカミルクティーに舌鼓をうつ。
ちょっと早く来すぎたかな。
待ち合わせより30分も早くついてしまった。
ストローでタピオカをかき交ぜていると後ろから声をかけられた。
「ごめん。待った?」
一度は男子に言われてみたい言葉をかみしめながらミツキが振り向くと、そこには垢ぬけた男子が立っていた。
「リョ、リョウタ?」
良太は爽やかに笑って答える。
「ははっ。なんでカタコトなの?」
髪の毛は相変わらず京極さんのとこで揃えられた良い形を保っているがそれだけじゃない。
ワックスで髪型を整えてきている。
しかも似合っている。
初心者に陥りがちなベタベタつけているわけでも、ガチガチに固めているわけではない。
一見つけているか分からない程に自然に仕上げている。
毛先とかなんかイイ感じに纏められている。
そしてなにより……。
「コンタクトにしたの?」
良太は少し照れた様子で首の後ろをぽりぽり掻いた。
「似合ってないかな?」
なにその顔?!
すっごいかわいい!!
日陰でいじけている雑草に水をあげるとこんなにも綺麗に花をつけるものなの?!
「似合う。すっごい似合ってるよ。髪型もすごくいい」
ミツキは首がもげそうなほど首を縦に振った。
「ありがとう。時間もまだあるし俺もなにか飲もうかな。」
良太はそう言い残すとカフェのレジへと向かった。
容姿が整うと不思議と物腰も自然になるものだ。
話していて自然すぎてこのミツキが少しだけ、ほんの少しだけ心を乱してしまった。
でもまだまだね、良太。
ミツキを惚れさせたいならそんなんじゃまだ落ちないわ。
ミツキは足を組んで頬杖をつきレジで注文している良太に見下すような視線を飛ばす。
まだミツキを褒めてないわ!
ミツキは褒めたのにね!
ミツキも少しばかり頑張ってきたのになんのコメントもしないのは仮にも彼氏になりたいあなたとしてはどうなのかしら?
ミツキは勝ち誇った顔で良太を見つめていると彼はトレーにグラスを乗せて歩いてきた。
向かいに座ると小さなラスクを一枚差し出してきた。
「ここのこれ実はかなりおいしいんだ。レジ横のやつ。一枚どう?」
「……ありがとう。」
「ミツキはいつもおしゃれだけど、私服は大人っぽくていいね。」
「……ありがと。」
良太は一口カフェラテを飲むとラスクを食べ始めた。
ミツキも一枚手にとり口に入れてみる。
「どう?なかなかでしょ。」
黙ってうなづいてみた。
甘いラスクはざくざくしていて、噛む度に彼の言葉は耳に届かなかった。
30分ほど経つと松本とよっしーがカフェに顔を出した。
「やほー。待った?ってええ!?誰??!」
「お前ほんとだれ??!」
二人は良太の変わりように驚いている。
良太は顔を赤らめてどもっている。
「あっいや。ちょっと。イメチェン?みたいな?」
「いいじゃん!チョーかっこいいし!」
良太はよっしーの言葉に声ともならない声を出して答える。
「なに言ってるか全然わかんねーよ。中身はあいかわらずなのね」
ちがう。
中身も全然ちがうのよよっしー!
よっしーに対してはなんでいつも通り上がってるのよ。
?!もしかして連日のアニメ語りでオタクだと思われてる?!
同族だと思われてるの?ミツキ!
確かにかなり突っ込んだ話までしてたけども!
この作監がーとか、この脚本がーとか話してたけども!!
それは全部美月なの!
ミツキじゃないのよー!
「じゃあ遊びに行こうぜ」
ままままさかね。
この完璧ギャルを決めているミツキをオタクだと思うわけがないわよね。
「おっけ!まずどこいく?」
「ゲーセン行こうぜゲーセン」
こんなに茶髪を綺麗に手入れしていて、ネイルもかっちり決めた女子をオタクなんて思うわけが。
ゲーセンについた良太はクレーンゲームの前でキメ顔でミツキに語りかけてきた。
「これ、ミツキ好きだよね?とってあげるよ」
「どれどれー?えー!ミツキこういうの好きなの?」
その景品はカッコイイ二人の美男子が抱き合っているタペストリーであった。
「ナンノコトカナーミツキシラナイナー」
「ははっ。なんでカタコトなの?」
良太は笑顔でタペストリーを落とした。




