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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
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男子は夜更けにカラオケをする。

俺の名前は今井良太。

今は旅館の最上階にあるカラオケフロアで松本とカラオケ中だ。

部屋で遊ぶというのも悪くないのだが、さすがに京平さんの眠りを妨げてはいけないので場所を移したのだった。

明日も長距離の運転をお願いするのだ。

今日はゆっくり休んでほしい。

俺はコーラを飲みながら松本の歌を聴いている。

松本はふつうに歌がうまい。

選曲も一昔前の曲を入れてくれているのでテレビを最近見ていない俺でも楽しめている。

松本は楽しめているのだろうか。

別に松本の言動がいつもと違うわけではないのだが気になることが一つある。

どうしてカラオケに女子を誘わないのだろうか。

松本なら絶対吉川さんあたりに声をかけて、みんなで遊ぶはずだ。

俺は気心の知れた友と二人だけの今の方が安心して楽しめるので良いのだが。

今日は朝から晩まで高岡さんとべったりで本当に疲れた。

心臓が持たない。

俺は息を小さく息をつく。

かわいかったなあ高岡さん。

私服も水着も浴衣もみんなかわいかった。

もっとお話したい。

もっと知りたい。

もっと俺を知ってもらいたい。

俺を好きになってもらいたい。

「さ。次は一緒に歌おうぜ」

松本が俺にマイクを差し出してきた。

空気の読めない俺が松本の気持ちなどわかるはずもなく、友がカラオケをしたいというのならばその言葉を信じてつきあうのみである。


小一時間ほど歌ったところで時刻はもうすぐ0時を回ろうとしていた。

カラオケルームの終了時間が迫る。

俺たちはドリンクバーを楽しみながら雑談に浸っていた。

「マイクカーターってあの?」

「おっ。さすが良太は知識が広いな。泉野は知らないって言うんだぜ?」

「日本じゃあまり有名じゃないもの。来日だってしたことないよね。」

「あるよ。一度だけ。」

松本は深く腰をかけ足を組む。

「一度だけ見に行ったことがあるんだ。小学生の時にな。」

「もしかしてその時から?」

松本は自分の手を前につきだし、なにもないところからコインを出現させた。

もう高校生の技ではない。

「マジックって何を見せるものだと思う?」

「奇跡とか魔法かな?」

松本は手元のコインを消してみせた。

「マジシャンだよ。」

俺はその答えの意味がよくわからなかった。

当たり前すぎる答えにひっかけじゃんとすら思ってしまった。

でも松本は真剣な表情で、かと思うと照れくさそうに笑った。

その時テーブルの上にある俺のスマホが通知音を鳴らした。

心臓がまたバクバクし始めた。

テーブルの上のスマホの画面は高岡さんのラインを知らせる画面で止まっていた。

『まだ起きていますか?』

松本と顔を見合わせるとニヤケ面で俺の脇腹をついてきた。

「うまくいってんじゃねえか。お前みたいなオタクがよ」

「まだそんな進展してないというか!まだ友達未満というか。」

あわてて答える。

女子の話題なんて今までしたことがなかったため、一瞬で頭が沸騰してしまう。

こんなんで彼女を口説くことなんかできるのだろうか。

カラオケルームの電話が鳴る。

「もう時間だしそろそろ出ようぜ」

そう言って二人で席を立った時、もう一度スマホが鳴った。

『今から少しだけ会えませんか?』

俺と松本はまた顔を見合わせる。

「だんだん腹立ってきたわ」

覚悟っという掛け声とともに俺の体にコブラツイストをかましてくる松本。

「痛い痛い痛い!ギブっ!ギブっ!」

「いいやダメだね!もっと痛めつけてやらないと!」

完全防音の密室に俺の悲痛な叫び声がこだました。


ひどい目にあった。

俺は首をさすりながら、ロビーに向かう。

『お前にはもったいないくらいの美人なんだから。恥かかせんなよ?』

そういって松本は部屋に帰って行った。

まだ顔も見ていないのに、心臓がこんなにもうるさいなんて。

廊下の角を曲がるとロビーに一人の女の子が座っていた。

背筋がすっと伸びていて、髪が綺麗な茶髪の女の子。

ジュースを2本手に持ち、華奢な指が缶ジュースの水滴をなぞっている。

この人形みたいに細く綺麗な女子は俺を待っている。

俺の足音に気付くと高岡さんは立ち上がった。

「あの、ごめんなさい。呼び出したりなんかして」

「あ、いや。ぜんぜん大丈夫」

大丈夫って何様だよ俺は。

むしろ呼び出してもらえてうれしいとか言おうか迷ったけれどそれはさすがに気持ち悪いからやめた。

二人の間に沈黙が流れる。

こういう時どうすればいいのだろうか。

いつもなら高岡さんからリードしてくれるが今回はなにも行ってくれない。

昼間の言葉を気にしてるんだろうか。

『もっとミツキを口説いてよ。』

俺は自分が傷つかないように予防線を張って生きてきた。

でも覚悟を決めるときが来たんだ。

俺は高岡さんを口説く!

「隣座ってもいいかな?」

高岡さんは少し驚くと、あわただしく髪に手櫛を加えると小さくうなずいた。

俺は高岡さんの隣に座った。

この広いロビーで、隣だ。

座席がたくさんあるのに隣だ。

誰もいないのに隣に座ったのだ。

それを確認すると高岡さんも椅子に腰かけた。

「はい、これ。」

高岡さんは笑顔で缶ジュースを差し出す。

やばい。超絶かわいい。

なんだ?いつもと違うしぐさにどきどきする。

いつものハツラツとした彼女じゃない。

おしとやかというか、健気な反応をする。

「これ、今井くんコーラでよかったかな?」

『さあ、隣に座って。良太』


今井くん……?


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