なんて言ったと思う?
ウチとミツキは部屋に入る。
部屋の電気をつけるとやはりウチらの部屋も布団が敷いてあった。
「布団なんてはじめてかも、ミツキの部屋はベットだし」
ウチはアパート暮らしなので生まれてこの方17年、ずっと敷布団だ。
兄と二人ぐらしだが、かろうじて自分の部屋はある。
タイミングが無かったとはいえ、中学まで一緒に寝ていたのは黒歴史だ。
ウチは布団にどっかり座るとミツキも隣に腰かけた。
「さっきは冷や冷やしたよもぉ~。違う人の名前でたらどうするつもりだったの?」
「どうするつもりだったと思う?」
ミツキは少し考え込む。
「まさか……そのまま告白するつもりだった?な~んて」
ミツキが冗談半分で答えた。
ウチはじっと彼女の顔を見つめるとウチの気持ちが伝わった。
「えっ?マジ?」
「さ?どうだろ~ね?皇帝様に阻止されてしまったからもうわかんない」
無論、告白するつもりでいた。
たとえあの時、あたしの名前が出てこなくても。
松本の口から『泉野さん』の名前がでてきても。
「ウチさ。1年の頃から松本のこと好きだったんだ。」
ウチは膝を抱えてミツキに笑いかける。
「ミツキとハラッチはウチの一番の親友だけど、松本とはもっと付き合いが長いんだよ?」
「ヨッシーとハラッチと同じクラスになったのは2年からだもんね」
ミツキも膝を抱えてウチに問いかける。
「いつから好きだったの?松本のこと」
ウチは正面をぼーっと眺め、二年前の秋を思い出す。
「ウチらってさ。いつも二人して職員室常連だったからさ。なんつーか。共感つーの?自然な流れで」
「確かにいっつも一緒に怒られてたもんね。一人で怒られることってないんじゃない?」
「あったよ。」
ポツリと呟く。
「一人で怒られることもあった。あいつは。でもね、ウチはないの一人で怒られたこと」
「松本の方が問題起こすこと多かったもんね。マジシャンはプレッシャーが大事とかいってさ。わざわざ授業中にやらなくてもいいのに」
「違うの。松本はね。いつでも手品してるわけじゃないの。いつもふざけているわけじゃないの」
後ろに手をつき上を天井に視界を移す。
「ウチが怒られるときなの。いつも。ウチだけじゃない。だれかが怒られそうなとき上書きしてるの」
「うちの学校まじめな人多いから、そのせいでクラスから浮きがちだけどね」
まあ授業妨害には変わりはない。
「そう、ウチもそれに気づいたときむかついちゃってさ。松本にいったの。余計なことするなーって。うざいってさ。そしたらあいつなんて言ったと思う?」
ウチは布団から腰をあげて、テーブルの上のスマホと財布を手に持った。
「ウチも飲み物買ってくるね。」
「ちょっとー!なんていったのー?」
ミツキを部屋に残し、休憩所に向かった。
ウチはこの2年間で松本のいろんなことを知ったつもりでいた。
彼のやる手品は全て覚えた。種はさすがにわからないけれど。
彼の一番のファンは間違いなくウチだ。
目立ちたがり屋で、かっこつけな男子。
器用で、やさしくて、いつも誰かのことを思いやれる人。
ウチが初めて好きななった男の子。
でも今日一日、たった一日で思い知ったんだ。
ウチはたった一つだけ知らなかったんだ。松本が好きな人を。
やさしくない、気を使わない相手がいることを。
でも関係ない。ウチは今日告白する。
好きな人がいたって構わない。
告白しない理由になんかならない。
好きだって伝えたい。
ウチの知らない顔がみたいの。
もうすぐ休憩所につく。
ここに松本を呼び出す。
ウチの気持ち
「ここに割り箸があります。」
休憩所から松本がいる。
ちょうどよかった。呼び出す手間が省けた。
「あんたまだくじ持ってたの?」
泉野さんもいる!?
ウチはあわてて通路陰に隠れた。
「いいだろ?この方が仕掛けないってわかりやすいし。ヨッシーが準備した割り箸だし」
はいはいと面倒そうに相槌をする泉野さん。
「じゃあこの割り箸をよく見ててくれ?ちゃらりらりら~」
「その歌なに?」
「お願い割り箸見て?ほら伸びてるでしょ?」
「あんたにしては古典的というか。忘年会の上司がやる手品レベルね。」
「見とけよ見とけよ?この伸びた割り箸を正面から見てもらうと?」
「?!木の板になってる!?すごっ!?」
ウチの知らないマジックだ……。
「驚くのはまだ早いぞ。この板をくるっと回すと?」
「箱だ!!?木箱になってる!?」
松本は木箱を泉野さんに突き付けた。
「開けてみて?」
泉野さんは木箱を開けると中からハンカチが出てきた。
赤い生地に、白いことりが二羽寄り添っている。
「誕生日おめでとう。泉野」
「ありがと。この木箱は邪魔だから返すわ。」
『ねえ!?ウチのことかばってるならやめてくれる!?うざいんだけど!!』
「泉野。俺……」
『ん?かばってなんかないよ。』
「俺、1学期が終わったら」
『俺はいつでも一番目立っていたいだけだよ。』
「1学期が終わったら、アメリカに行く」
『吉川さんも授業が暇ならスマホじゃなくて俺を見てくれよ』
「これで本当に最後だ。」
『な?吉川さん?いや……』
「好きだ泉野。俺と付き合ってくれ。」
『ヨッシー』




