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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
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ラストもう一回。

前回までのあらすじ。

あたしの命令により高岡さんが今井にキスしました。

高岡さんは顔を赤くして次のゲームを促す。

「さっ次!次のゲームやりましょ次」

早く過去の出来事にしたいのゲームの進行を急かしているとスマホを手にした安原さんが軽く手を挙げた。

「もう九時を過ぎたし。私はこれで」

九時なんて高校生からしたら夕方みたいなものだけれど安原さんは幼い弟を連れてきている。

「じゃあ切りもいいしこれでお開きにしますか。」

それでは収まらないのは高岡さんだ。

「良くない。全然きりよくないです。ラスト!あと一回でいいから!」

あたしたちに向かって拝み倒す姿をみて安原さんは小さく息をついた。

「あと一回くらいなら」

高岡さんは急に元気になり、割り箸をみんなの前に掲げた。

「さあ泉野さん!覚悟なさい!」

怖いけど残り一回で彼女が王様を引き当て、さらにあたしの数字を言い当てるなど確率的にどれほどのものだろう。

まあ一応確率的にはあり得る話なので?安パイとしてあたしは皇帝を引かせてもらおう。

あたしは割り箸の癖を観察し皇帝のくじを見事引き当てた。

さあこれであたしは安全地帯の傍観者になった。どのような命令が飛び交うか見ものよ。

全員引き終わり高岡さんが自分の割り箸を確認する。

反応を見る限り王様ではなかったようだ。

「はいじゃあ王様だーれ?」

「ウチだわ……」

吉川さんが自分の割り箸をあたしたちに見せる。いいだしっぺが最後の王様とはなかなかいい絵になるではないか。

「では王様なんなりと。」

吉川さんは今までとは違う静けさがあった。この一時間一番はしゃいでいたのに。

まあそれもそうだろう。トリというのはどんなものでもプレッシャーがあるものだ。

吉川さんはみんなの手元をゆっくり見渡す。あの動き覚えがある。

「王様である吉川美帆が命令します。」

……!やばっ!

「4番の人は好きな人の名前をいう。」

やられた。彼女も割り箸の癖を覚えていたのだ。

そもそも彼女が持ってきたゲームなのだから当たり前なのだが。

「お?最後の最後に王道で来ましたねぇ。4番だぁれ?」

高岡さんが4番を探す。でもそんなの探すまでもない。

「おれだ」

松本が4番のくじをを見せる。

この命令の意味を女子は全員分かっている。

『ウチは松本が好きなの』

お風呂での宣言を知っている。

あたしはこの中で一番松本のことを良く知っている。

松本はいう。絶対いう。

彼はナンパなナルシストだけれどまっすぐな奴なのだ。

必ずいう。あたしが好きだと。

そんなことをしたら告白する前に吉川さんの恋が終わってしまう。

この二人は教室では一番仲がいい。松本だって彼女が良い人だというのは理解している。

彼女が告白さえできれば、可能性はあるんだ。

この中で止められるのは皇帝のあたしだけ。

止めたら彼女の無意味な失恋を止めることができる。

でもあたしが止めるということは。

彼の告白をあたしが止めるということはどういう意味になってしまうの?

彼の好きな人をあたしが知っていることになるんじゃないの?

そのあと問い詰められたりしたら面倒なことにならない?

第一、吉川さんと松本の中を応援する必要がある?

もし吉川さんと松本が付き合えたりしたら、あたしは……。

今度こそあたしは……。

「おれが好きな人は……」

「皇帝がこの命令を却下します。」

あたしは自分の割り箸をみせ、宣告した。

「もう!聞きたかったのに!」

吉川さんはさもなにも知らなかったかのように悔しがっている。

裏表のない子だと思っていたけれど侮れない。

「え?俺は別にいってもいいんだけど」

「皇帝が認めません。」

「皇帝ゲームで皇帝が最後に止めるなんてできすぎね」

女子がこぞって松本をおさえる。今彼は人間関係の爆弾なのだ。

「さあて。明日もお風呂に入りたいし、今日はもう寝ますかね。」

女子たちは手早く身の周りの整理をして男子部屋を後にする。

「じゃあお邪魔したわね。」

「ううん。こっちこそ引きとめて悪かったわね。」

「また明日ね。」

安原さんは弟を探しにゲームコーナーにむかった。

吉川さんと高岡さんとあたしの三人で部屋に向かう。

「あんたもうやっぱり松本くんのことが好きなのね。ビビり」

どうやら吉川さんはあたしの本意には気づいていないようだった。

「そんなんじゃないわ。あのまま告白の流れになったら安原さんが抜けるタイミングがなくなるから気を使ったの」

我ながらそれっぽい理由だ。

「ふ~ん。そういうことにしといてあげるわ」

もう皇帝ゲームでのどがカラカラだったあたしは部屋へ行く廊下を曲がらなかった。

「あたし飲み物買ってから行くわ。」

「ほいほ~い」

二人に軽く手をふりあたしは休憩所にむかって歩き出した。


休憩所についたあたしは自販機の前で羽織のポケットから財布を取り出す。

すると一緒に何かが床に落ちた。

それは最後にあたしが引いた、『皇帝』のくじだった。

さっき持ってきてしまったようだ。

ここは缶のごみ箱しかないし仕方ない、部屋に戻ってから捨てよう。

あたしは小さめの缶のミルクティーを買った。

缶は部屋でかさばるな。買ってから少し後悔した。

今もどってさっきの続きをやるのも面倒だし、ここでミルクティーでも味わってから行こう。

今日はもう朝からいろんなことがあって頭がいっぱいだ。

あたしは缶にひとくち口をつけるため息をつき天井を仰ぎみた。

そこには松本の顔があった。


「よう。」

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