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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第2章 混沌のゴールデンウィーク。
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ゲームをしましょう。

バイキング形式の夕食を終えると皆、松本と俺とあと京平さんの部屋に集まっている。

いわゆる男部屋だな。

時刻は夜8時を回ったところで食後のゲームでもしようかと話になった。

大樹くんは少しうとうとし始めている。

長旅にプールに温泉に、極めつけはバイキングで好きなものでおなかいっぱいとあっては眠くもなるだろう。

その様子を確認した姉の安原さんが大樹くんに声をかける。

「さっ。大樹。私たちはそろそろ」

「寝るのか?大樹。夜はこれからだぞ?」

「まだっ。……遊ぶ」

大樹くんをそそのかしたのは京平さんだ。

安原さんは少しむっとしている。

「大樹?良い子はそろそろ寝ないと」

「大人は夜更かしするもんだぞ大樹」

信頼する姉と今日初対面したばかりのおじさん。

その間で揺れる大樹くん。

「大樹。下にゲームコーナーがあったからやりにいこうか。」

眠そうな大樹君の目が輝く。

「太鼓のやつ、やりたい。」

大樹君は表情が変わらない分、目が素直である。

「よし、やりにいこうか」

「ちょっと!」

安原さんが二人を制止しようとすると、京平さんは安原さんに手のひらを向けた。

「高校生は高校生で楽しみなさい。今日だけ、な?」

京平さんと大樹くんは部屋を出て行った。

安原さんは少し面白くなさそうに出入り口を眺めていた。

普段感情を表に出さないだけにその少しうかがわせる表情からはどれほどの感情が渦巻いているのだろうか。

「ハラッチすわろ?あいつあんなんだけどさ。ほら。ウチで子どもには慣れてんだ。だから、ね?」

吉川さんが着席を促すと不服そうにみんなの円の中に混ざった。

「では。お菓子でも食べながら宴と行きましょう。」

高岡さんが上機嫌な調子でお菓子を広げ出す。

「下の売店で買ってきたぜ」

便乗して松本もレジ袋からスナック菓子を取り出した。

「あんたらまだ食うの?もうおなかいっぱいだよ」

泉野さんが不満を漏らす。何せバイキングの後だ。俺ももうポテチ一枚も入る気がしない。

「いやいや。宴よりももっとイイことしましょ?」

吉川さんは割り箸を6本突き出す。

「まさか」

「それは!」

「王様ゲーム?!」

「また古典的な!!」

「初めてみました!!!」

噂には聞いていた王様ゲーム。

王様の命令は絶対というなんの強制力もないのにしたがってしまう伝説のゲーム。まさか令和まで生き残っていようとは。

「ちっちっち。そんなチャチなゲームじゃないですぜ。」

吉川さんは割り箸を広げるとやはり『K』と書かれた割り箸が混ざっていた。

「『K』……、キング!ほらやっぱり王様ゲームじゃない」

「いやまて!よく見てみろ!」

『K』と書かれた割り箸と数字が書かれた割り箸、そしてもう一本『E』と書かれた割り箸があった。

「『E』ってなに?敵?」

高岡さんが質問すると吉川さんは『E』と書かれた割り箸を拾い上げた。

「『エンペラー』。つまり皇帝よ。知ってる。王様は一国の主だけれど帝国はさまざまな国を束ねるの。つまり帝国の主『皇帝』は『王様』より偉いの」

なるほど。

このゲームには権力者が二人いるのか。

「じゃあ皇帝が命令するの?」

「いやいや。皇帝はそんな一国一国の政治まで口は出さない。それじゃあ王様がいる意味がないもの。命令は王様の仕事」

吉川さんは『E』と書かれた割り箸を『K』の字につき当てた。

「でも王様の暴走を止めることはできる」

「はっ!つまり王様は好きな命令ができるけど皇帝はそれを止めることができると」

指をぱちんと鳴らして松本に指をさす吉川さん。

「そういうこと」

「な~んだ。ようは拒否権のある王様ゲームってわけね。本家よりぬるくなって刺激が足りないわ」

泉野さんがそういうとみんなの視線が集まる。

「へえ~。泉野さんはシ・ゲ・キ的なオ・ト・ナなゲームがしたかったんだ~」

「やらしぃ~」

吉川さんと松本でからかうと泉野さんは顔を赤らめて否定する。

「違うわよ!皇帝に止められないように命令を考えるのが面倒だなって」

泉野さんの肩に高岡さんが手を置く。

「これ以上は自分の首を絞めないで。泉野さん。どんどん変態になってくわ」

どうやら一番むっつりなのは泉野さんだったらしい。

「さあさ。じゃあ始めましょう。ぬるい王様ゲーム。『皇帝ゲーム』を」

吉川さんは割り箸を右手にまとめてみんなに引くように促す。

「じゃあまずおれから~」

松本が割り箸を引こうとした時、吉川さんがルールを付け足した。

「ひとつ言い忘れていたわ。皇帝は名乗りでないこと。名乗りでるのは拒否権を行使するときだけ。ゲームが終わっても伏せたまま回収ね」


みんなくじを引き終わる。

こういう時俺見たいなキャラが一番恐れている事態。

それは無理難題をふきかけられることではない。

魔のくじ王様を引き当てることである。

俺はその魔のチケットを一発で引き当ててしまった。

「じゃあいくよ~?王様だーれだ。」

俺は右手を上げる。

「今井かぁ。変態なのはやめなよ。むっつりくん?」

「泉野さん。お願いだから。これ以上傷を広げないで」

高岡さんが泉野さんを制止する。

さっきの一件があったのでクイーンオブむっつりの称号は泉野さんから揺らがない。

でもこの状況は非常にまずい。

他の人がどんな要求をするのか様子見もできない。

俺の欲望が試されてしまう。

かといって簡単すぎるとつまらないと白けさせてしまう。

どうするどうする。

そうだ。

これはゲームだから程よく辛い系でいい。

そうだ。

それでいこう。

「さあ王様。ご命令を。ウチらに命令できるなんてもうないかもしれないよ?」

やめてくれ。

これ以上意味を持たせないでくれ。

「えっと、じゃあ。3番の人は一人でラジオ体操をやる」

「なにそれ~」

「小学の夏休みじゃねえんだから」

「ラジオ体操とか懐かしすぎ」

良かった。そこそこ受けた。これなら程よく恥ずかしいし。

「じゃあ3番は?」

「はははっ。ミツキ~」

俺音楽出すよと松本がラジオ体操の音楽をネットからかける。

「も~。はずかしい~」

俺は誤算をしていた。

俺たちが高校生であることを、浴衣であることを。

高岡さんのラジオ体操は流してやっているものの、浴衣を乱すには十分であった。

その下には昼間みた水着姿が思い出される。

「これはなんというか……あたっあたたたたたたた!」

そういうと松本の首は泉野さんにがっつりホールドされる。

ラジオ体操がこんなにエロいなんて知らなかったんだ。

女性陣の視線が痛い。

やめて、そんな目でみないで。

地獄の3分間を終えると息を少し乱して高岡さんが俺に告げた。

「良太のエッチ」

そして吉川さんが宣告した。


「おまえこれからキングオブむっつりな」



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