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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第1章 始まりのイースターエッグ。
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正直に言いなさい。

私の名前は高岡美月。

子どもの頃から大人に誉められるのが好きで先生や親のいうことは忠実に守ってきました。

自分で考えることが苦手だった。

同年代の子どもと遊ぶのが苦手だった。

勉強は好きだった。

答えがあるし、大人も褒めてくれる。

そして必ず将来役に立つ。

友達はいなかったけども1人は好きだったし、勉強に集中できるし、悪いことに誘われないからそんなに嫌じゃなかった。

でもドラマとかマンガの中の青春に興味あった。

友達と喫茶店行ったり、カラオケ行ったり、恋人ができたり。

こんな生真面目な自分にもいつか、きっといつか青春を送れるんだと思っていた。

私も高校生になればと…。

でも中学二年生の夏。

突然転機が訪れた。

私のクラスは不良がいたり、学級崩壊していたわけではないのだけれど、気の弱い先生の教科では騒々しくなった。

みんな人を見て判断するのである。

その日は数学だった。

教師になったばかりの若い女教師が授業をしてくれていたが私以外、誰も授業を聞く気などなかった。

もともと小さい授業の声は日に日に小さくなりクラスの喧騒でまったく聞こえない。

そしてとうとう、チョークが黒板につき当てたまま止まった。

その指先は震えていた。

数学の先生は黒板にチョークを置き、うつむきながら足早に教室を出ていった。

きっと泣いていたのだと思う。

教室が一瞬で静かになる。罪悪感など彼らにはない。

この後の展開を察知しての行動だ。そして激怒した担任の先生が教室に入ってきた。

「お前ら!授業中騒いでるじゃねぇよ!」

静まり返るクラス。

誰もリアクションすることはない。

「今騒いでたやつは誰だ!立て!」

誰も立つはずがない。

沈黙がクラスの解答なのだ。

「お前ら!新人の女の子泣かせた上に嘘までつくのか!」

担任の先生は埒があかないので作戦を替えた。

名指し作戦である。

「倉本!一番騒いでたのは誰だ!」

「誰もさわいでないです。」

嘘つくな!と先生は黒板を殴った。

だが倉本は顔を変えずに続けた。

「本当です。先生はあたしたちを信用できないんですか?」

この返しに先生は口ごもった。

子どもというのは本当に悪知恵が働く。

生徒だから使えるズルいワードを知っている。

全く意味のない言葉だがこの投げ掛けに100点の答えはない。

あとは揚げ足をとるだけでいいのだ。

だが先生、ここで矛先を私に向けたのだ。

「本当か?高岡。」

教室の空気が張りつめる。

「なあ高岡?みんなは静かにしていたのか?」

私が先生に逆らえるわけがない。

嘘はいけないことだし、ここで否定すると先生はもうこのクラスで指導できないだろう。

それは先生にもクラスの皆にもいいことではない。私は震える声で答えた。

「…騒いでました。」


あとは想像するに容易い。

イジメが始まった。

実に幼稚なイジメ。

男子も女子も関係ない。

先生がが助けてくれることもなかった。

そんな日々が2学期通して続き、冬休みがあけ、憂鬱な3学期が始まる。

私は間違ってない周りが幼稚我が儘先生のせい悪口聞きたくない周りの視線が怖い笑い声も罵声も聞きたくない行きたくない行きたくない学校行きたくない。

そして中学2年の三学期の朝。

ミツキがうまれた。

ミツキはその日学校をサボり、駅前の美容院を尋ねた。

「京極さん。ミツキをとびきり綺麗にしてください。」

京極さんはミツキの髪を明るい茶色に染め上げてくれた。

輝く茶色は全てに反発し、雑音が気にならなくなった。

背中まであった髪の長さは肩に触れない程短くしてくれた。

視界が広がったのにやつら顔は目に入らなくなった。

ミツキと美月は記憶は共有できるけど気持ちはわからない。

美月がどんな気持ちでイジメを耐えていたのかミツキには本当にわからない。

イジメしてる奴らが強いわけじゃない。

同じ14歳だ。

クラス全員が敵なんじゃない。

40対1じゃない。

みんな1人なんだ。

ミツキが顔色を伺う必要なんてないんだ。

そして次の日ミツキは初登校を迎えた。


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