付き合ってるの?。
俺は今青春を目撃しているのだろうか。
人間不信だった友人の青春を。
俺の名前は松本大地。
マジシャン目指してます。
ただお菓子を買っているだけいるだけなのだが妙な雰囲気が漂っている。
なんというかピンク色の点描が漂って見えるのだ。
「あの二人、付き合っているの?」
物陰から覗き見している俺の下から顔を出したのは泉野だ。
「ちょっと前に好きだって話は聞いたけど。どうなの松本?」
「さあ。あんま恋バナとかしないからな。」
つまんねみたいな顔をする泉野。
仕方あるまい。
男子とはそういうものだ。
男子が恋バナをするのは修学旅行の夜と相場が決まっているのだ。
「まだ付き合ってないわ。ウチ金曜日に聞いたもん。告ったけミツキがふったらしいよ。」
俺の上から押しつぶしてきたのはよっしーだ。
結果、俺と泉野は少し押された感じによろける形となった。
「押さないでよもぅ。」
泉野が不満をぶつける。この二人はすこぶる仲が悪い。
「あんたが聞いてきたんでしょ?」
「あたしは松本に聞いたの。」
そんな突っかかるほどの話題かこれ?
俺は大きくため息をついた。
こいつらの喧嘩の板挟みで小1時間車に揺られただけで少し参っているのに車降りてまで巻き込まれたくはない。
俺は自販機に飲み物を買うため足を運んだ。
今回の旅行は共通点のない二人の恋路を応援してやろうと俺とよっしーで企画したものだが早くも主旨からずれている気がする。
そもそもあの二人共通点はないにしてもそれを二人で縮める努力が垣間見えるのだから俺らいらなかったじゃないか。
そんなことを考えながら俺は自販機で注文したコーヒーがカップを満たすのを待った。
自販機からカップを取り出し振り返ると、そこにはハラッチと弟君の姿があった。
弟君の機嫌もまたご機嫌斜めのようだ。
ハラッチが参加を渋った理由がうかがえる。
これも俺が招いた結果だとしたら無視はできない。
乗り気じゃない彼女を巻き込んでしまったのだ。
「どうしたの?」
ハラッチは無表情のまま答える。
「別に。ごめんね。すぐ戻るから先車に戻ってて?」
確かにそろそろ車に引き上げる頃合いだが、別に俺は急かしに来たわけじゃない。
小さい子を連れてくるっていうのはこういうことなのだろうか。
その子よりも周りに気をつかってしまう。
いつもなら弟に合わせてあげられるものの、こと団体となれば弟をあわせなければならない。
乗り気じゃなかったのは本心だったのだろうか。
本音は行きたいと感じてしまったのは俺の勘違いだったのだろうか。
「やあ。大樹くんだっけ。俺は大地っていうんだ。名前似てるね。大地って呼んでくれよブラザー。」
ハラッチ弟はうつむいたまま俺を睨んでいる。
「俺がファーストコンタクト滑るなんて」
「あなたはいつも滑り散らかしてるから大丈夫よ。子どもが正直なだけ。」
俺は高校生活3年で衝撃の事実を聞いてしまった。
俺はクラスの人気者だと思っていたのに。
女子の高岡、男子の松本の二大巨塔だと思っていたのに。
落ち込んではいられない。
大樹くんの機嫌を直さねば。
「大樹くん。お菓子買いにいかない?お兄ちゃんが買ってあげるよ?」
「やだ。松本君がいうとすごい犯罪者っぽい」
ハラッチがドン引きして顔が青ざめている。
頭のうえの団子むしりとるぞこの野郎。
肝心の大樹くんはやはりノーリアクションだ。
うしろではガチャポンを回したくて親に泣いてせがんでいる子どもがいる。
むしろあれくらい要望がはっきりしていればわかりやすいのに。
「じゃあ…」
俺が言いかけた時ハラッチに制止された。
「いいから。ありがとう。ここは私に任せて。松本君は、ね?」
俺は兄弟もいないし小さい子をあやしたことなんかない。力になれない。でもいいのかな。ここでハラッチを一人だけにして。俺になにか…
「はあ~。こころくなガチャポンないじゃん。子ども心わかってないなあ。」
後ろで声がした。
体の大きな、ワイシャツ姿の良い大人が。
「おっ。これは良いじゃん。ライダーシリーズ全五種かあ。ラインナップがぱっとしないな。」
声の主はよっしーのお兄さんだった。
ガチャポンの前に座り込みかじりついてみている。
「まあ内3つは当たりってとこか。一回やってみるか」
ガチャポンに硬貨を二枚投入し、レバーを回した。出てきたおもちゃを見つめ顔をしかめる。
お望みのライダーじゃなかったようだ。
「ブルーかよ。外れ引いちまった。おい大樹、ブルーは好きか?」
ヨッシー兄が大樹君にライダーの二等身フィギアを見せるとポツリと答えた。
「好きなほう」
「でも一番じゃないんだろ?」
ヨッシー兄は口角を少し上げ、大樹君に200円を差し出した。
大樹君は二枚の硬貨を受け取り、ガチャポンを回した。
ギミック音と落下音が静かに鳴る。
カプセルをあける大樹君の顔は依然無表情のままだが、目は純真な好奇心で綺麗だった。
「ライダーブラック…」
「ブラックはおじさん好きよ?」
「ボクも好き。いつも一人で何でもできて、気まぐれで。最高にかっこいいの。」
大樹くんはヨッシー兄に少し口角をあげて呟いた。
「一番じゃないけど。」
ハラッチ姉弟が手を繋ぎ車に向かい歩いている。
俺は青いライダーのマスコットを振り回してるおじさんと歩いている。
「子ども慣れてるんですね。」
「別に。慣れてるってほどじゃないよ。僕はガチャポンで遊んでただけだし。」
「でも大樹君の要望がわかってたじゃないですか」
「わかんねーよそんなもん」
振り回してたマスコットが手のひらに収まる。
「子どもだって馬鹿じゃないんだ。自分の機嫌の落としどころいつも探してる。そこに自分の機嫌を取ろうとする大人がぞろぞろと集まったら固まっちまうだろ」
彼は俺にマスコットを手渡してきた。
「まあ、子どもはそれほど子どもじゃないし、大人はそれほど大人になれてないってこと」
「やっぱ慣れてるんですね。体験談ですか。」
「いやあ…」
車の横によっしーが未だに不機嫌な面持ちで立っている。
彼のお兄さんは目を細めて続けた。
「昔話だよ」




