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ミツキとつきあいたい!  作者: 石戸谷紅陽
第1章 始まりのイースターエッグ。
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あたしも連れて行きなさい。

俺は今井良太だ。

眉毛しくじり系男子だ。

ゴールデンウィークにみんなで旅行に行くらしい。

そこに泉野さんが自分も連れていけというのだ。

「うちのバイト二人貸してやるからあたしも連れていって」

一瞬空気が凍る。

吉川さんが笑顔のまま固まっているのだ。

「よっしーのお兄ちゃんの車って何人乗れるんだっけ?」

高岡さんが気を使って発言する。

沈黙を破ってくれた。

「6人乗りーざーねん」

吉川さんが笑顔のまま否定した。

「えっ?さっき8人乗りって」

吉川さんが松本の足を踏んづける。

悶絶する松本。

「ほら荷物とかつけると座席埋まるからさ」

「おはよー」

そこに安原さんが教室に入ってきた。

「ハラッチおはよー」

「昨日のラインみたけどごめんね。弟置いていけないわ。」

泉野さんは不敵な笑みで吉川さんを睨み付ける。

「そっかぁ。残念。あ、よかったら泉野さんもくる?」

吉川さんの問いに泉野さんは気品よく答える。

「ありがとー。ぜひ行かせて頂くわ」

吉川さんが狼的な怖さだとすると泉野さんはまるでゴリラだ。

トゲのある吉川さんに威圧感の泉野さんといったところか。

「でもハラッチ本当に行けない?ミツキはハラッチと行きたいよ?」

「そうだぜ?なんなら弟さん連れて来なよ。」

吉川さんと泉野さんのバトルを無視し、安原さんの勧誘が続いた。

「いや、弟のわがままに付き合わせるのも悪いし。ほら、ね?お金とかもないしさ」

みんなで出し合うよとか松本と高岡さんで交渉している。

そんなに無理に引き留めるのもどうかと思うんだよな俺。

体よく断りたいだけかもしんないじゃん。

「うちのアニキの運転だし、アニキに全員分の宿代出させるから心配ないよ」

吉川さんはサラッと提案するが、俺は心底吉川兄に同情した。

「じゃあ、まあ。ありがとう」

ハラッチは顔を赤らめ小さくお礼を言った。

どうやら本当は行きたかったようだ。

俺は本当に空気が読めない。


「で?どこ行く?ランド?ランド?」

高岡さんはランドに行きたいらしい。

吉川さんは得意気な顔で答える。

「ふん。もう行き先は決めているのだ。じゃーん」

吉川さんはチラシを見せつける。

そこには花巻温泉の文字が書かれていた。

「温泉~!」

みんなびっくりして、大声がでる。

てっきり観光か遊園地かどちらかだと思っていた。

「いい!すっごくいい!」

高岡さんのテンションは爆上げだ。

「確かに一泊するならみんなでずっと同じ建物内っで過ごす方が楽しめるかもな。」

「なんか松本が言うとエロい」

いたずらっぽく松本を戒める泉野さん。

「温泉…!」

ハラッチさんは心ここにあらず、ドストライクだったようだ。

こうして俺たちはゴールデンウィークに高岡さん、泉野さん、吉川さん兄妹、安原さん姉弟、松本、俺の8人旅が決まったのだった。

かくいう俺も猛烈に楽しみにしている。

友達と遊びに行ったこともないのにいきなり男女混合の旅行に行けるなんて。

ちょっと涙が出そうなくらい楽しみなのである。

何か話すと泣いてしまいそうなくらい感動している。

すると高岡さんが俺の制服の裾をクイッと引っ張った。

「ごめーん。ちょっと良太借りてくね?」

アニメ?旅行?なんの話だろ。

俺は引っ張られるまま高岡さんに連れ出された。

「やっぱり…あの2人…」

吉川さんと松本は悪い顔で見つめあった。


「ちょっと?高岡さん?」

「ミツキ。」

「あのミツキさん?」

「ミツキ」

「ミツキ」

よしとミツキは頷いた。

「ここ男子トイレなんですが」

俺は男子トイレの便座に座らせられている。

「いいから。その手をどけなさい。」

俺はビクッと肩をすくめる。

「それだけは勘弁してください。」

「いいから。」

「無理!お願い!ほっといてよ!」

「あぁ!もうめんどくさい!乙女かお前は!いいからどけろ!」

俺は両手を強引に捕まれ便座裏の貯水タンクにおしらやれた。そしておれのゴキブリの触覚のような眉毛が露になってしまった。

見られたくなった。さめて君にだけにわ。

「やっぱりミスったのね」

「眉毛の整え方が…わからなくて…直そうとするほど変になって…」

ミツキはちょっと安心したようなため息をついた。

「最初から上手くできるわけないでしょ?まったく」

ミツキは自分の化粧ポーチをいじり出す。

「…笑わないの?」

「…?なんで?」

「だってこんな眉毛。自分でもちょっと面白いのに」

ミツキは太い鉛筆みたいなものを取り出した。

「おかしくないわよ。だって…」

ミツキは俺の眉毛をきれいに書いてくれた。

「あたしのためにかっこつけてくれたんでしょ?」

ミツキは仕方なさそうな笑顔を見せた。

「普通のおしゃれって難しい…」

俺は心の声がそのままでた。

普通になりたい。

普通の身だしなみくらいできるようになりたい。

でもある日突然勝手にできるようになる訳じゃないんだ。


「それなら隠さなくても大丈夫ね。さ、教室帰りましょ?」

ミツキが男子トイレの前で振り返る。

「ミツキならいつでも相談に乗るから…ね?」

その姿は見とれるほど可愛かった。

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