第51話 森で
僕たちは次の街へと向かう為、北西の方向に歩き続けていた。
今はミルタさんとイリアが会話に花を咲かせている。
「ミルタさんはエルフなのですよね、失礼かもしれませんが、何歳なのでしょうか?」
「・・・数えてない」
「そうなのですか?」
「・・・うん、でも、多分百歳くらい」
「なるほど、ではエルフの中ではまだそれほど歳は取られていないのですね」
「・・・イリアは?」
「今は18歳です、つまりミルタさんとは80歳差以上離れているのですね」
「・・・そう」
「でも、ミルタさんは見た目で言えば私と同い年くらいですね、さすがはエルフ、少し羨ましいです」
「・・・エルフ、成長が遅いだけ」
「ですが、かなり長い間若いままでいられるではありませんか、私は欠陥品で、若くなることが出来ないので羨ましいです」
「・・・?若くなる?」
「あ、いえ、なんでもありません、ではミルタさん、髪の手入れは・・・」
2人は楽しそうだ。良かった。
目の前に森が見えてきた。
この森の奥に街があったりするのかな?
イリアか、もしくはミルタさんにその辺りのことを聞いてみたいけど、会話が進んでいるし、途切れさせるのは申し訳ないよね。
まあ、こっちが北西の方角だし大丈夫だよね。
よし、とりあえず進んでみよう。
僕たちは森の中に入った。
森の中に入ってしばらく時間が経った。
それなりに歩いてきたし、この辺りで食事にしようかな。
「ピィー(おなかすいたー)」
「よし、この辺りで食事にしよう」
魔物はアミュレットで寄ってこないし、動物が寄ってきたら食料になって貰えばいいしね。
「繋がれ、無限の空間、万物の収納箱、[アイテムボックス]」
僕は[アイテムボックス]から村で使っていた机と椅子を4つづつ取り出した。
そしてその上に、昨日のお店でアイテムボックスに入れた料理をおいた。
「みんなで食べよう」
「・・・私もいいの?」
「勿論だ」
「ありがとうございます、主様」
僕たちは食事を始めた。
「・・・これ、昨日の?・・・少し暖かい」
「[アイテムボックス]内の物は基本的に時間が止まっているからな」
「・・・そう、美味しい」
「ピィー(おなかいっぱいー)」
「どうしたんだピィナー?全然食べてないぞ?」
「ピィー(たべられないー)」
さっきお腹すいたって言ってたのに、少し食べただけでもうお腹いっぱいらしい。
多分昨日の食べ過ぎが原因かな?
「ならまた後で食べればいい、無理して食べる必要はないぞ」
「ピィー!ピィー(うん!すこしねるー)」
ピィナーは椅子の上で丸くなって眠り始めた。
まぁ、まだみんな食べるのに少し時間がかかるだろうから、寝かせておいてもいいかな。
「・・・あの」
「ん、どうした?」
「・・・今、どこに向かってる?」
あ、そういえばミルタさんには、別の街に行くとは言ったけど、どこの街かは言ってなかったよね。
「今はフォルルートに向かっているところだ」
「・・・え?なんで森、入った?」
「ん?それは当然」
北西にまっすぐ進んでいたからだ、と僕が言おうとした時に、[生物感知・魔法]に反応があった。
動物が料理の匂いにつられてやって来たのかな?
僕はそう思って反応があった方を振り返った。
だけどそこには動物じゃなくて、女性がいた。
「食料!む?人だと?むむむ、いかん、他者に食料を恵んでもらうなど、武士の名折れ、落ち着くのだ!武士は食わねど高楊枝、武士は食わねど高楊枝」
ぐうう〜
女性のお腹からすごい音が聞こえて来た。
「くっ、目の前には美味しそうな料理、耐えるのだ!これもまた精神修行だ!拙者は空腹などに負けん!」
いきなり現れた女性は一人でブツブツ何かを呟いている
どうしたんだろう?でも楽しそうだ。