第49話 歩み
「おはよう、イリア」
「おはようございます、主様」
「ピィ!(おはよう!)」
みんな目を覚ました。
「今日は他の街に行こうと思う」
「他の街ですか?」
「ああ、この近くにはダンジョンはもうないらしいからな、俺が強くなるためにも、イリアを強くするためにもダンジョン攻略は欠かせない、だから他の街に行くぞ、っと、その前に情報屋に行かないとな」
情報屋に着いた。
今日は情報屋からダンジョンのことを聞こうと思う。
昨日は魔石を売っただけだったからね。本当はそこで色々聞いても良かったけど、ピィナーがお腹すかせていたし、急ぎでもなかったから。
別に忘れていたわけじゃないよ?本当だよ?
「あ、いらっしゃいっすー、本日はどのような要件っすか」
「ああ、この間頼んでいたダンジョンの場所を知りたい」
「あ、えっと、まだ調べられてないっす、流石にもっと時間がかかるっすよ」
「そうか」
そうだよね、この情報屋さんには知らないことはないけど、移動型ダンジョンの現在地とかまでは分からないよね。
「俺たちはしばらく街を離れる、またいつかこの街には戻ってくるが、それまでに大体の場所の検討だけでも付けておいてほしい、お金は先に払っておこう」
「了解っす、頑張るっすね!」
移動型ダンジョンは一定の場所を一定周期で回っているはずだから、大体の場所くらいは調べればわかるよね。
僕はお金を払って情報屋を後にした。
情報屋を出た時、偶然ミルタさんとバッタリ出会った。
ここで会うってことは情報屋さんに用事があるのかな?
「おはようミルタ、偶然だな、情報屋に用があるのか?」
「・・・うん」
「そうか」
そうだ、ちょうどいいし、ここでミルタさんに街を離れる事を言っとこう。
「俺たちは今日この街を離れて別の街に行く」
街を離れるって事は、ミルタさんとはお別れかな。
一応、一緒に食事もしたし、前に聞いたよりも多少仲も良くなっていると思うから、最後にもう一度だけ、パーティに入らないか聞いてみようかな?
「ミルタ、俺のハーレムに入って一緒に行かないか?」
「・・・ごめん、まだここでやること、ある」
お?断られはしたけど、ミルタさんがここでやることが無かったらパーティに入ってくれていたのかな?
ならそのやることを手伝って終わらせれば、ミルタさんは僕のパーティに入ってくれる?
「手伝うか?」
「・・・いらない」
断られちゃった。
「なら、そのやることが終わるまでこの街で待っていれば、ミルタは俺のハーレムに入ってくれるか?」
「・・・ハーレムは嫌」
「そうか」
ダメだった。
やっぱりイリアが特別なんだね。普通は冒険者じゃない僕のパーティには入ってくれないものなんだろう。
早く冒険者になりたいよ。
よし、早く冒険者になるためにもダンジョン攻略頑張ろう!
・・・もう一個攻略不可能ダンジョンを作っちゃったけどね。
いや!そんな事はない!きっと攻略法はある!
それも考え続けないとね。
「じゃあな、ミルタ、またどこかで会おう」
「・・・うん、また」
「それではお元気で、ミルタさん」
「・・・うん、イリアも、元気」
「はい」
僕たちは街の外に向かって歩き出した。
街の門を出た。ここからどこに向かおう?
そう言えば、近くの街の場所とか聞き忘れちゃった。
どうしよう?
「イリア、ここからどこに行けば近くの街に行けるか分かるか?」
「確か、ここからならフォルルートの街が近かったと記憶しています、方角はここから北西の方角です」
すごい、イリアは今の僕より物知りだ。
「ありがとうイリア、イリアがいてくれて助かった」
良かった、もしイリアがいなかったら、とりあえず街に着くまで真っ直ぐ歩こうと思っていたからね。
たとえその方向に一切街がなくても、ずーっと歩いていればレイルガルフの街までは帰ってこれるから。
お兄ちゃんが言っていた。僕たちが立っているこの星は丸いんだって。
丸いけど、真ん中に向かって重力が働いているから下にいる人も落ちないんだよって。
つまり世界に端は無くて繋がっているからまっすぐ歩いていればレイルガルフに帰ってはこれるんだ。
多少時間はかかるけど。
でも、イリアがいるから、早く他の街に着けそうだ。
「い、いえ、家の本で読んだ知識ですので、間違っているかもしれませんが」
「大丈夫だ、間違っていても構わない」
間違っていたら星を一周すればいいからね。
「よし、行くか」
「はい」
「ピィー!(しゅっぱーつ!)」
これから、たくさんの困難が待ち受けていると思う。
最初の街でこれだけ色々あったんだ、当然待ち受けているんだろう。
でも、僕はお兄ちゃんなんだ、お兄ちゃんなら困難なんて軽く超えていく。だから僕だって、軽く超えられるように頑張ろう!
僕は歩き続ける、お兄ちゃんの名を世界に広めるため、お兄ちゃんのハーレムを作るため、お兄ちゃんを最強にするために、そして、僕がお兄ちゃんになり続けて、困っている人々を救うために。
僕はまだまだ未熟だ、だけど、いやだからこそ、少しずつでも確実に、完璧なお兄ちゃんに近づけるように歩み続けよう!
僕たちは、次の街へと歩き出した。
「・・・待って!」
ん?街の方からミルタさんの声が聞こえてきた。
僕は振り返った。
あ、歩みが止まっちゃった。
べ、別に物理的な歩きが止まっても問題は無いんだけど、なんだろう、決意に水を差された気分だ。
悲しい。