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第47話 宿屋で

「俺はイリアのことがもっと知りたい」


「え、あ、あの?それは私に興味があるということでしょうか?」


「ああ、そうだ、イリアは俺のハーレムだからな」


 僕はイリアのことをほとんど知らないからね。同じパーティなんだから、もっと色々知ってないとダメだと思う。

 せっかく意思疎通が図れるようになったから、色々話をしてみよう。


「あ、あの、その、」


 ん?イリアが顔を赤くしている。


「どうしたんだ?」


 もしかして怒っているのかな?僕何かイリアを怒らせるようなことを言っちゃった?

 でもミルタさんは確か顔を赤くした時、恥ずかしがっていたんだっけ?


 ならイリアも恥ずかしがっているのかな?


 うーん?難しい。


「わ、私も少し主に聞きたいことがあります」


「なんだ?」


「私は[魔力抜き]をすることすらできない、MPが0の欠陥品の吸血鬼です、それなのに、どうして主は私を奴隷として買われたのですか?」


「それはもちろん、奴隷がそんなものだとは知らなかったからだ、知ってたら奴隷を買うことは無かった」


「そう、ですか」


 でも、そうなるとイリアと出会えなかったってことだよね。

 イリアだけは唯一僕のパーティに入ってくれた。

 そのおかげでお兄ちゃんの夢を一つ叶えることができたんだ。


「だが、俺は知らなかったからこそ、イリアと出会うことができたんだ、俺はイリアと出会えて幸運だった」


「あ、あの、主は、私を必要としてくれているのでしょうか?」


「当然だろう?俺にはイリアが必要だ」


「あ・・・その、はい、ありがとうございます」


「次は俺が質問させてもらう、イリアは何故名前と種族を隠しているんだ?」


「それは、」


 イリアは顔をしかめて言葉を詰まらせた。聞いたら不味かったのかな?


「話したくなければ話さなくてもいい、イリアを不快にさせてまで聞きたいわけではないからな」


「すみません、今は、思い出したくありません」


 よっぽど辛いことだったのかな。


「構わない、人には隠し事の1つや2つはあるものだ、話したくなった時に話してくれればいい」


 僕もたくさん隠し事しているしね。


「ありがとうございます」


「じゃあ次はイリアが聞きたいことを聞いていいぞ」


「それでは、何故主はあれほど強いのですか?レベルはまだそれほど高くはないのですよね?」


「ああ、それは俺が特別だからだな」


 お兄ちゃんは特別だからね。


「私でも主のように強くなることは可能なのですか?」


「それはもちろん可能だ、と、言いたいところではあるが、今日イリアはかなりレベルが上がっただろう?」


「はい、私はレベル13になりました」


「13か、厳しいな」


 13ということは最低の2倍でも26レベル、3倍だと39レベル、4倍で52レベルということになる。

 そして50倍なら650レベルの魔物を倒さないといけない。

[単独魔物撃破レベル?倍]称号はかなり強いから取っておかないと僕のように強くなれないけど、もう[単独魔物撃破レベル50倍]称号の獲得はほぼ不可能だろう。


「私では主のように強くなることはできないのですか?」


「そうだな、俺ほど強くなることはもうほぼ不可能だ」


「そう、ですか」


「ああ、もうイリアでは精々ツェーンを倒せる程度の実力しか付けられない」


「そうですよね、所詮私では、ツェーンを倒せる程度の実力しか・・・え?」


「レベルとは不可逆なものだからな、一度レベルを上げてしまうともう下げることは不可能だ、だからもう既に獲得がかなり厳しい称号がある、故にイリアではツェーンを倒せる程度の実力しか付けられない」


「あ、あの、ツェーンとは、あの相殺する審判竜のツェーンさんのことですよね?」


「ああ」


「えっと、・・・え?私がツェーンさんを倒せるようになるのですか?」


「今のツェーンならな、当然イリアが実力をつけている頃にはツェーンも強くなっているだろうから、その時に倒せるかはわからないがな」


「で、ですが私はMPが0なのですよ?」


「そうだな、だがMPが無くても戦いようなどいくらでもある、確かに吸血鬼の種族スキルは殆どMPを消費する関係上、今のままでは使えないだろう、魔法スキルも同じだ、だが、種族スキルや魔法スキルが使えないなら技巧スキルで戦えばいい、魔法攻撃が必要ならアイテムや装備品でカバーすればいい、いくらでもやりようはある」


「なら、私は、強くなれるのですか?」


「ああ、当然だ」


「っ!、お願いします!私を強くしてください!何でもしますから!厚かましいとは思います、奴隷の分際で、何をとお思いになられているかもしれません、ですが私は強くなりたいのです!強くなれば、強くなることができれば私は、」


 イリアが鬼気迫る勢いで頼みこんできた。

 それだけ強くなりたいんだろう。


「構わないぞ、イリアは俺のハーレムなんだからな」


 同じパーティメンバーが強くなるのを手伝うのは当然のことだよね。

 女性は守るものだから、強く無くても関係ないんだけど、そこまで強くなりたいなら、応援しよう。


 強くなりたいって気持ちは僕もわかるから。


「っ!ありがとうございます!私は強くなって、主のお役に立てるように頑張ります!」


「俺の役に立つ立たないなんて、そんなことは気にしなくていい」


「え?」


「イリアのやりたいようにやればいい、強くなりたいなら強くしてやる、だが俺の役に立つなんて考える必要はないぞ」


「え、あ、あの」


「俺にはイリアが必要だ、さっきもそう言っただろう?イリアは俺のハーレムなんだ、たとえ役に立たなかろうが、そんなことは何の関係もない」


 イリアがいればお兄ちゃんの夢のハーレムが達成されるからね。


「あ、あう」


 またイリアの顔が赤くなった。

 もしかして、イリアはよく顔が赤くなる人なのかな?

 きっとそうなんだろうね。


 だから僕が怒らせたわけじゃないと思いたい。


 怒ってないよね?


「そ、そう言えば、主様の他のハーレムの方はどなたなのですか?」


「ん?他のハーレム?」


「はい、後輩として挨拶をさせていただきたいのですが」


「ハーレムメンバーはイリアだけだぞ?」


「え?あの、私だけ、なのですか?ピィナー様は?」


「ビィピィー(ころころー)」


 ピィナーは部屋の隅の方で転がって遊んでいる。

 楽しそうだ。


「ピィナーはペットだ、ハーレムメンバーじゃない」


「あの、私一人だけということはそれはハーレムではないのではないですか?」


「何?」


 ハーレムって自分以外が女性のみのパーティの事だよね?

 それは間違いない。だけどもしかしてまた僕は何か思い違いをしている?


「頼む、教えてくれ!ハーレムとは何だ!?」


「え?えっと、ハーレムとは1人の男性が多くの女性を侍らせることを言うのでは?」


 はべらせるってなんだろう?って、え?複数の女性?


 え?もしかして、女の人が1人だとダメなの?


「ハーレムとは、1人じゃダメなのか!?」


「え、ええ、それは当然では?」


「そ、そうなのか」


 イリアはまるでそれが常識のように言っている。

 ハーレムって女の人が複数人いないとダメなんだ。


 そう、だったんだ。自分の無知さ加減が嫌になる。


 でもよく考えたらそうだよね、お兄ちゃんの夢がこんなに簡単に叶うはずがなかったんだ。


 ならやっぱりこれからもハーレムメンバーは探さないと!


 良かった、今のうちに勘違いに気づけて。


「ありがとうイリア、おかげで大切なことに気づけた、感謝する」


「え、は、はい」


 やっぱり僕は無知だ。どうしようもなく無知なんだ。


「イリア、俺は無知だ、本当なら俺は、全てを知っていなければならないのに、俺は、何も知らない」


 こんなこと、お兄ちゃんは言わない。絶対に言わない。でも、僕はお兄ちゃんになれていない。全てを知っているお兄ちゃんには。


 何も知らない僕はきっとまた何か重大な勘違いをしてしまうと思う。だから協力者が必要なんだ。

 色々なことを知っている協力者が。


 きっとそれはイリアが適任だ。

 僕の側にいて、もう僕の無知なところをだいぶ知られているから。

 僕の正体を知っている情報屋さんにはいくら無知なところを知られても問題ないけど、情報屋さんはいつも側にいるわけじゃないからね。


 だからイリアにだけは素直に分からないことを聞いていこう。

 こう言う近くに聞ける人がいれば、奴隷について勘違いしたまま過ごすこともなかったはずだからね。


「だから俺はこれから全てを知っていく、もし俺の知識が間違っていたり、俺の知らないことがあれば色々教えてほしい」


「はい、分かりました」


「ありがとう」


 こうして僕は協力者を得た。

 これでもう僕が勘違いをすることはなくなるね。






「ちなみに主様、子供は女性のお腹の中から生まれて来ると言う説があるのですが」


「なんだそれは?子供が女性のお腹から生まれる?そんなことはあり得ない、子供はコウノトリが運んで来るものだ、それは間違いない」


 だってお兄ちゃんがそう言っていたからね。


「そ、そうですか」

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