第45話 魔石コレクター
「ま、魔石コレクターは」
随分と溜めるね、それだけ重大な情報って事?
もしくは情報屋さんが情報を言うときはこれだけ溜めるものなんだろうか?
でもダンジョンの場所を聞いたときはサラッと答えてたから、そう言うわけじゃないよね?
ならなんだろう?魔石コレクターの居場所がそんな重要な事だとは思えないけど。
そう言えば最初に魔石コレクターの話題を出した時、情報屋の女の人は知らなさそうな雰囲気を出していたように見えたけど、実はそうじゃなくって、何か言いにくい理由があったとかなのかな?
魔石コレクターの居場所を聞いた時も戸惑っていたようだったし。
うーん、情報屋さんには知らないことなんてないから、知っているけど言いにくいこと?
あ、そうか。もしかしてそう言うこと?それなら言いにくいのも納得できるかな?
「なるほどな、そういうことだったのか」
「な、なにがっすか?」
「なに、隠さなくてもいいんだぞ」
「ギクッ、い、いや、隠してないっすよ!ちゃんと魔石コレクターの居場所を知っているっすよ!本当っすよ!」
ん?情報屋の女の人何故か怯えているみたいだ。
別に怯える必要なんてないのに。
とりあえず安心させたほうがいいよね?
「分かっている、大丈夫だ、怒ったりはしないさ、むしろ見破れなかった俺が未熟だっただけだ」
「え、ほ、本当っすか?本当に怒らないっすか?許してくれるっすか?」
「ああ、勿論だ」
「はぁー、よかったっす、自分、怒られるんじゃないかってヒヤヒヤしてたっすよ、すみませんっすね、自分、魔石コレクターの居場所なんて」
「お前が魔石コレクターだったんだろう?」
「知らなっ・・・え?」
あ、言葉を遮っちゃった。
そのせいで、情報屋の女の人が何を話していたかが良く聞こえなかった。なんて言ってたんだろう?
「すまない、なにを言いかけていたんだ?」
「え?・・・い、いえいえ!なにも言いかけてないっすよ!そうっすそうっす!自分魔石コレクターっす!」
「やはりそうだったか、やけに言い淀んでいる様子だったからな、自分から魔石コレクターと言うのは恥ずかしかったのか?」
「そ、そうっす!そうっすよ!そうっすそうっす!いやー、言うタイミングがなかなか掴めなかったっすよね!よく分かったっすね!流石っす!」
「そうだろう、そうだろう、と言うわけで魔石を買い取って貰いたい」
「了解っす!・・・はぁ、出費が痛いっす、ま、あとでギルドで売れば同じっすか」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえいえ、何でもないっすよ?で、どんな魔石っすか?さっきダンジョンで得た魔石って言ってたっすから、自分が教えたダンジョンの魔物が落とした魔石っすよね?」
「ああ、そうだ」
「あそこは弱い魔物しか出てこないっすから、それほど高く買い取ることはできないっすよ?」
弱い魔物しか出てこない?ああ、やっぱりそうなんだ。
幻鬼とかジャライネズミとかは、他の魔物と比べると、直接戦闘能力は低いからね。
その分搦め手が得意な魔物なんだけど、しっかりと対策を練っていれば弱いからね。
そうだよね、やっぱり初心者のダンジョンにつまづいているようじゃ、ダメだよね。
僕はまだまだ弱い、最強の道は遠い、だから頑張ってもっと強くなろう!
魔石は高くは売れないようだけど、まあ仕方ないよね。今日行ったところは初心者のダンジョンだもん。
それほど期待はしないほうがいいよね。
でもとりあえず買い取ってもらおう。
「ああ、分かっている、とりあえずこれを買い取って欲しい」
僕は魔石コレクターの情報屋さんに、今日ダンジョンで得た魔石を渡した。
「了解っす、あ、あれ?随分と重いっすね、そんなにたくさん魔物を倒したっすか?」
「いや、それほど沢山というわけではないと思うが」
それほどエンカウント率は高くなかったからね。
「そうっすか?とりあえず中を確認するっすね・・・え?」
「ん?どうした?」
「えっと、これ、え?本当にあのダンジョンで得た魔石っすか?」
「ん?いや、中にはダンジョンに向かう道中で倒した魔物の魔石も入っているが、大半はダンジョンの魔物だぞ?」
「え?ダンジョンって自分が教えたダンジョンっすよね?」
「そうだが?」
「え?どういうことっすか?何であのダンジョンでこんな魔石が出るっすか?」
「ん?」
こんな魔石?何だろう、この魔石は良くない魔石とかなのかな?
さすが魔石コレクター、一目見ただけでいい魔石と悪い魔石を見分けることができるなんて。
魔石に良い悪いがあるかは知らないけど。
「あ、聞いたらまずいことだったっすかね?」
情報屋の女の人は何か小声で呟いていた。
「えーっと、とりあえず、申し訳ないっすけど、いまこんな魔石を買うお金はうちにはないっす」
やっぱり魔石が小さすぎて買い取ってもらえないのかな?もしくは悪い魔石だった?
そうだよね、所詮初心者のダンジョンで手に入れた魔石だしね。
こんな魔石を買うお金が勿体無いってことだよね。
じゃあ、これからはこれくらいの小さな魔石は拾わなくていいかな?でも小さくても良い魔石とかあるかも知れないし、一応拾うだけは拾っておこうかな?
ギルドなら買い取ってもらえるのかもしれないけど、魔石コレクターに売るのなら、やっぱりコレクター魂を疼かせるような魔石を持ってこないとダメってことだよね。
「ああ、分かった、済まなかったな」
僕は魔石の入った袋を懐にしまおうとした。
でもそれを情報屋の女の人に止められた。
「あ、待ってくださいっす!とりあえずこれだけ、全部は買い取れないっすけど、これくらいは買い取らせてもらうっす」
そう言って、半分くらい袋から魔石を取り出した。
「いいのか?」
こんな小さな魔石を買い取ってくれるのだろうか?
「いいっすよ、自分は魔石コレクターっすから」
ああ、多分これは情報屋さんの好意なんだろう。
本来なら買い取る価値もないものだけど、それを僕の為に買い取ってくれた。
僕は今はお金がそれほどない。
前そんなようなことを話してしまったことがあったから、それを覚えていた情報屋の人が無理をして買い取ってくれようとしてくれているんだろう。
「ありがとう」
「いえいえ、ちょっと色々調べてみたくなったっすから、こちらこそ感謝っす」
この人は気遣いができる素晴らしい人なんだな。
僕に気負わせない為にこんなことまで言ってくれる。
本当に感謝しかない。
「それじゃ、またのお越しをお待ちしてるっすよー!」
僕たちは情報屋を後にした。
いつかこの恩は必ず返そう。