第44話 情報屋
僕たちは街に帰ってきた。
ミルタさんはこれからどうするんだろう?
「ミルタはこれからどうするんだ?ギルドに行くのか?」
「・・・ううん、ギルド、行かない」
「そうか?」
ギルドの名前を出した時、ミルタさんは嫌そうな顔をしていた。
どうしたんだろう?実はギルドが嫌いだったとか?
「とりあえず俺は今から行くところがあるが、付いてくるか?」
「・・・うん」
どうやらミルタさんは付いてくるようだ。
「イリアはどうするんだ?」
「私はどこまでも主について行きます」
「そうか?わかった」
イリアも僕についてくるようだ。
やっぱり会話が出来るのはいいね。会話が出来れば意思疎通が図れるから、変な勘違いするようなこともないしね。
「ピィナーはどうする?」
「ピィー!(おなかすいたー!)」
「それはまた後でな」
ピィナーはいつもお腹が空いている気がする。
育ち盛りだからかな?
とりあえず、目的地に向かおう。
目的に向かっている道中、イリアが僕に質問をしてきた。
「あの、主はピィナーちゃ、ピィナー様と会話が出来るのですか?」
「ああそうだ、俺はピィナーが言っていることが分かるし、ピィナーも俺が言っていることは分かるぞ」
「そうですか、さすがです主、あの、私もピィナー様と会話できるのでしょうか?」
「いや、残念ながら難しいだろう」
僕がピィナーと会話出来るのはピィナーが持つ[従妖精 (仮)]の称号の効果によるものだ。
ピィナーの主(仮)じゃないイリアとの会話は難しいだろう。
それはピィナーがまだ幼いと言うこともあるし、
「そうですか、後輩として先輩に話を聞いておきたかったのですが」
イリアはMPが無いから[テレパシー]などの意思疎通系スキルを使えないと言うのもある。
ん?さっきイリアが小声で何かをつぶやいていたような?
「何だ?」
「いいえ、何でもございません」
「そうか?」
気のせいだったのかな?
「・・・どこに行くの?」
「情報屋だ、少し知りたいことがあってな」
「・・・そう」
ミルタさんは街に入る前に服を着替えていた。
着替えたと言っても、深めのフード付きのマント?ローブ?のようなものを羽織っているだけだけど。
どうしたんだろう?オシャレかな?
うん、きっとオシャレだね。なんだかミルタさんの雰囲気に合っているし。ミステリアスな感じっていうのかな?
とにかくローブ姿がよく似合っていると思った。
「そのローブ、よく似合っているぞ」
「・・・そう?」
「ああ、とてもしっくりくる感じがする、まるで欠けていたピースの嵌ったパズルのようだ」
「・・・あ、ありがとう」
「ローブを身につけたミルタは、理不尽なくらいに強そうに感じるな」
「・・・強そう?」
「ああ、まるで・・・まるで」
何だろう?
「・・・どうしたの?」
「いや、すまない、とにかくよく似合っているぞ」
「主はミルタさんを口説かれているのですか?」
「口説かれている?」
えっと、口説かれているって何だっけ?
「いえ、何でもありません」
「そうか?っと、着いたな」
情報屋に着いた。
僕たちは店の中に入った。
「いやっしゃいっすー、本日はどのような要件っすか」
お店の中には前と同じ、軽い感じの女の人がいた。
軽い感じの女の人は、何だか僕たちが店に入った時、軽く驚いていたように見えた。
どうしたんだろう?
「あ!?」
軽い感じの女の人はいきなり声を上げて驚いていた。
えっと、本当にどうしたんだろう?
大丈夫かな?なにか僕この人を驚かせるようなことをしちゃった?
軽い感じの女の人は驚いた後何かを考え込んでいる様子だった。
何を驚いたんだろう?別に驚かれるようなことした記憶はないんだけど。
「どうしたんだ?」
「あ、い、いえいえ、何でもないっすよ」
「そうか?」
でも、何でもないって言っているけど歯切れが悪かった、何か困っていることとかがあるのかな?
「そうっすよ、それで、本日はどのような要件っすか?」
うーん、とりあえずは僕の要件を先に済ませてから、その辺りのことを聞こうかな?
「ああ、魔石コレクターがどこにいるのかを知りたい」
今、あんまりお金に余裕がないからね。
できるだけ早く魔石を売っておきたいから、僕は情報屋にきたんだ。
「魔石コレクターに魔石を買い取って欲しいんだが、肝心の魔石コレクターがどこにいるのかがわからなくてな、一人一人確認していってもいいんだが、情報屋で聞いた方が早いと思ってな」
「え、えっと、魔石コレクターっすか?」
「主、魔石コレクターとはなんですか?」
「魔石コレクターとは、街や村に必ず一人はいる魔石を買い取ってくれる人のことだ、その人に今日のダンジョンで得た魔石を売るために魔石コレクターを探している」
「主、魔石はギルドで買い取ってくれるはずですよ?そちらに売ればいいのではないですか?」
それは出来ない。
「悪いがギルドに売るわけにはいかない、魔石は魔石コレクターに売ると決めているんだ、ギルドに売ることは俺の矜持が許さない」
魔石は換金用のアイテムで魔石コレクターに売るだけのものってお兄ちゃんは言っていたからね。
「そうですか、失礼しました、ですがこの街にはそれなりの人口がいますから、魔石コレクターを探すのに時間がかかりませんか?」
「安心しろ、だから情報屋に来たんだろう?この情報屋は何でも知っていると言っていたからな、当然魔石コレクターの居場所くらい知っているだろう」
そう、この情報屋の軽い感じの女の人は何でも知っているんだ。僕の正体のことすらも。
「え、えっと、っすね」
だけど何故か軽い感じの女の人の歯切れが悪い。
どうしたんだろう?もしかして、魔石コレクターの場所を知らない?
さっき、イリアが質問してきた前も魔石コレクターに着いて知らなさそうな雰囲気を出していたし。
「もしかして、知らないのか?・・・俺に嘘をついたのか?」
お兄ちゃんに嘘をついたの?
違うよね?僕の早とちりだよね?
お兄ちゃんに、嘘をつくはずないよね?
「知ってるんだよな?」
「と、当然知ってるっすよ!当たり前じゃないっすか!」
よかった、僕の早とちりだったみたいだ。
そうだよね、情報屋さんには知らないことなんて何もないもんね。
「なら教えてくれ」
「ま、魔石コレクターは」