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外伝7 情報屋 3

 何故か、どこを見回してもドラゴンがいなくなっていたっす。


 ドラゴンは空を飛んでいたっすから見えなくなるなんてことはないと思うっすけど。


 もしかして、空を飛ぶことをやめたっすか?

 でも、あれだけの大きさなら陸にいても見えそうなものっすけど。


 もうどこかに行ったっすか?でも帰ったにしても、方向転換したにしても、あのドラゴンの移動速度的に、まだ見える場所にいてもおかしくなさそうっすよね?


 ならどうしたんすかね?


「どうしたの?」


「いや、ドラゴンが・・・」


 それからしばらくの間ドラゴンはいなくなっていたっすけど、その後またドラゴンが現れたと思ったら、街から離れて行ったっす。






 街は大騒ぎっすね。

 なんてったってドラゴンを撃退した英雄がいるっすから。


 その英雄とはミルタ・ウィンターさんっす!


 どうやらミルタさんはドラゴンと戦いに行っていたらしいっす。

 そしてドラゴンを撃退したとか。

 ドラゴンが一時的にいなくなっていたもの、きっと何かエルフの秘儀とかだとか冒険者の人たちは騒いでいるっす。

 実際にレベル40のドラゴンに勝てる可能性のある人なんてこの街にはウィンターさん以外いないっすし、ウィンターさん以外は誰もドラゴンに向かってないそうっすからね。


 今ちょうどウィンターさんが冒険者ギルドに帰って来たところっす。


「「「「「うおおおおおお!!!!!」」」」」


「「「「「きゃー!!!!!」」」」」


「・・・え?」


「「「「「英雄!英雄!英雄!英雄!」」」」」


「「「「「ウィンター様ー!!!!」」」」」


「・・・え?えと、な、なに?」


「ありがとうございます!ミルタさん!この街を守ってくださって!」


「・・・え?」


「まさかウィンターさんがそれほど強かったなんてな!ありがとよ!」


「・・・?」


「ウィンターさん!貴女はこの街の救世主だ!」


「・・・救世主?」


「ウィンター様!ありがとうございます!ドラゴンを撃退してくださって!」


「・・・え?」


「さすがジャイアントキラー殿!まさかドラゴンまで撃退してしまうとは!」


「すげぇんじゃね!?これ伝説になるんじゃね!?俺たち伝説に立ち会ってんじゃね!?」


「きゃー!ウィンター様ー!」


「・・・え?」


 すごい騒ぎっすね、人が、冒険者がウィンターさんの周りに集まって団子状態っす。


 これは近づけないっすね。

 一応情報収集のため[リスニング]のスキルを発動しているっす。


 これは対象の発言を聞き逃さないためのスキルっすね。

 今、周りの声がうるさすぎて普通ならウィンターさんが何言ってるかわかんないっすけど、このスキルの対象をウィンターさんにしてウィンターさんの声だけは鮮明に聞こえるようにしているっす。


 距離が離れると聞こえないっすけど、この距離なら周りがどれだけ騒ごうと問題なくミルタさんの声は聞こえてくるっす。


 それにしてもずいぶん戸惑っている様子っすね。ここまで騒がれたことがないっすかね?でもジャイアントキラーをよくしているはずっすから、この程度慣れたものだと思うっすけど、性格的に慣れないとかっすかね?


「ウィンター様、ギルドマスターがお越しです」


「お、おい!ギルドマスターが部屋から出て来ただと!?」


「マジで!?あの引きこもりが!?」


「おい!失礼だぞ!引きこもり言うな!」


「だって俺ギルドマスターを部屋の外で見たことなんてないぞ?」


「いや、私もないが、引きこもりって言葉は失礼だろ」


「いっつも何か用があるときは呼び出しなのにな、ま、流石にドラゴンを撃退して街を守った英雄様に対しては自分の方から出向いてくるよな!」


 え?あの不動のギルドマスターが部屋から出たっすか?

 仕事が忙しすぎるのか、それとももう歳だからなのか一切部屋から出ないギルドマスターが?


 実際情報屋としてギルドマスターが本当に部屋から出てこないのかを3ヶ月に渡り調べ続けた時期があったっすけど、3ヶ月間1度も部屋から出てこなかったっすからね。


 カツン、カツン、


 ギルドマスターが現れたっす。

 ギルドマスターは杖をつきながらゆっくりと階段を降りて来ているっす。


 今までざわついていた人たちも静まり返り、ギルドマスターとウィンターさんの間にいた人たちが左右に割れたっす。


 そして、ウィンターさんの元までギルドマスターがゆっくり歩いて行ったっす。


「ミルタ・ウィンター様、我が街レイルガルフをかのドラゴンからお守りしていただき、誠に感謝致す」


「・・・えと、ちが」


「そなたがこの街におられなかったら、今頃は我が街、レイルガルフは滅んでおった、心より御礼を申し上げる」


「・・・あ、あの、私じゃ」


「我がギルドはそなたへの感謝の意を込めて、特別報酬を授ける、勿論、ドラゴンを撃退した報酬とは別でな、しかし今すぐに報酬を支払うだけの資金がこの街にはない、故にしばらく待っていて欲しい、無論我々ギルド職員一同、全力を持って今回の成果に相応しい報酬を用意する所存」


「・・・いらない」


「なんと!?英雄様は謙虚でいらっしゃる、しかしそれではこちらの気持ちが治らない、どうか受け取っていただきたい、英雄様も満足頂けるものを必ず用意致す故」


「・・・あの」


「分かっております、英雄様は忙しい、しかし大丈夫です、例えすぐにこの街を離れることになろうとも、必ずや報酬は我がギルドが責任を持って届けます故に、ここで足を止める必要はありませぬ」


「・・・えと、私、ちが」


「さぁ!皆の者!ドラゴンを撃退し、この街を見事に救ってくださった英雄、ミルタ・ウィンター様を精一杯祝おうではないか!英雄様のご活躍を祝し、今日は祭りだ!蔵を解放せよ!」


「「「「「うおおおおお!!!英雄!英雄!英雄!英雄!」」」」


「・・・あの、私、違う」


「「「「「きゃー!!!ウィンター様ー!!!!」」」」」


「・・・ドラゴン、私、違う」


「っしゃー!!!蔵を解放ってことは今日はタダ飯ってことだろ!?」


「飲み放題ってことだね!」


「ウィンター様ー!きゃー!今ウィンター様と目が合っちゃったー!きゃー!」


 さーて、今日は自分もたくさん飲むっすかね!なんと言ってもタダっすから!しかもギルドの蔵って言ったら年代物のいい酒もあったはずっすからね!今夜は楽しくなりそうっす!


「・・・私、違う、イーシスなのに」


 ん?今、ウィンターさんからイーシスって言葉が聞こえてきた気がしたっす。

 気のせいっすかね?


 その日はみんな大騒ぎで、たくさんの人が集まったっすから、ギルド内では手狭で、ギルドの外の道にまで広がって飲めや歌えやの大騒ぎっした。


 いつのまにか今回の主役のウィンターさんやギルドマスターはいなくなってたっすけど、それに気づいていた人はあまりいなかったっす。

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