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第41話 ボス戦 2

 その後、いくら攻撃しても、どんな攻撃をしても、超剛金鐡肢マークⅣのHPを削ることはできなかった。


「・・・これ、減らない?」


 僕だけじゃなく、ミルタさんも何度か攻撃を行なっている。

 それでもHPが減ることはなかった。


 どうして?


 ダメージが0なんてよっぽどない。

 どれだけ相手の防御力や魔法防御力が高くて、こちらの攻撃力や魔法攻撃力が低くても、攻撃が当たれば特別な称号がなければ1ダメージは入る。


 それは間違いない、お兄ちゃんから聞いたことだから、間違っているはずがない。


 なら特別な称号を持っている?

 どんな称号だろう?このロボットが獲得できる可能性のある称号で、ダメージが0になる称号、でも色々な攻撃を試したから、一部の攻撃の無効化じゃなくて全部のダメージを無効化するような称号、そんなのあるかな?


 ロボット、称号、ダメージ無効・・・待機形態?・・・あ、ああ!あー!


 もしかして、僕、やっちゃった?やらかしちゃった?

 ああ、どうしよう、あー!


 僕はボス部屋に入る前、超剛金鐡肢マークⅣと戦闘に入る前にコアメタルを抜いてしまった。

 その時の超剛金鐡肢マークⅣは、戦闘に入っていないため、当然待機形態だった。


 超剛金鐡系の魔物は形態によって効果が変わる称号を持っている。

 その効果により待機形態ではダメージが一切入らない。


 でも戦闘になったらすぐに戦闘形態に変形するから、待機形態は本来なら最初の不意打ちが効かないってだけなんだけど、僕は待機形態でコアメタルを抜いてしまったため、超剛金鐡肢マークⅣは永遠に待機形態のままになってしまった。


 コアメタルを超剛金鐡肢マークⅣに付け直そうにも、コアメタルがあった場所は体の内側の方にあるから付けることができない。


 つまりこの魔物には永遠にダメージを与えることが出来なくなって、倒すことが出来なくなってしまった。


 物理的に殺そうにも、超剛金鐡系の魔物は食事を取れない。

 つまり食事を必要としていないということ、餓死はしないということだ。


 そして、この狭い部屋ではピィナーにグランドドラゴンの姿になってもらって押しつぶすということもできない。


 広い空間に運ぼうにも、ボスはボス部屋から出ることも出すこともできない。


 コアメタルは別だ。コアメタル自体は物という判定で、そのほかの超剛金鐡肢マークⅣの部品などはすべて魔物という判定になっているらしい。


 確かお兄ちゃんの攻略本にはそんなことが書いてあった気がする。

要するに、ソードゴブリンは剣を持って産まれてくるけど、その剣自体は魔物ではなく物であるみたいなことだ。


 だからコアメタルだけは部屋の外から[スティール・アイテム]で取ることが出来たわけだけど、そのせいで倒せなくなってしまった。


 え?本当に詰んだ?どうしようもないのかな?


 ダメージも入らない、物理的にも殺せない、動かない、動かせない。


 ・・・詰んだ。ああ、僕は一つ攻略不可能なダンジョンを作ってしまった。


 ボスを倒さなければダンジョンを攻略したことにならない。

 ダンジョンを攻略できなければ称号は手に入らない。


 ボスは倒せばしばらく経つと復活する。倒せば、だ。


 倒さなければずっと復活はしない。ダンジョンを入り直そうがどれだけ時間が過ぎようが、倒していなければボスはずっと同じ個体のままだ。


 つまり本当にどうしようもない、どうしようもなくなってしまった。


 勝負は、始まる前から勝敗が決まっているものだ。

 お兄ちゃんがそう言っていた。


 本当にその通りだ。その通りだった。


 僕はこのボスを倒せない、何をしても倒せない。

 倒せないということはダンジョンを攻略できないということ、つまり僕の負けだ。


 戦う前から、コアメタルを抜いた時点で僕の負けは決まっていたんだ。


 また、負けた。

 ダメだ、ダメダメだ、ダメダメダメだ。


 僕は何度負ければ気がすむんだろう?こんな体たらくでお兄ちゃんを名乗るなんて許されることじゃない、恥だ。


・・・壊セ、砕ケ


 お兄ちゃんの名を名乗っておきながら、お兄ちゃんの姿をしていながら、なんて様だ。


お兄ちゃんなら、こんな単純なミスなんてしないのに。


全テガ憎イ、全テヲ壊セ


お兄ちゃんなら、こんな初心者のダンジョンでつまずくことなんてありえないのに。


お兄ちゃんなら、きっともうダンジョンを3つや4つ攻略できているはずなのに。


全テヲ無カッタコトニスレバイイ


僕はお兄ちゃんの凄さをイリアやミルタさん、ピィナーに100万分の1も伝えられていない。むしろダメなところばかり見せている。


こんなことじゃ、お兄ちゃんを名乗っている意味がない、むしろお兄ちゃんの名を傷つけているだけだ。


滅ボセ、憎イ、憎イ


 僕なんかが、お兄ちゃんを名乗るべきじゃなかったのかもしれない。







 ・・・でも、僕しかいないんだ、お兄ちゃんの素晴らしさを、偉大さを、壮大さを人々に伝えられるのは、僕しかいないんだ。


 僕がやらなきゃダメなんだ。


 僕がお兄ちゃんを最強にするんだ。

 僕がお兄ちゃんのハーレムを作るんだ。

 僕がお兄ちゃんになって人々を救って感謝されるんだ。

 そして、僕がお兄ちゃんの名を世界に轟かせるんだ。


僕にしか出来ないことなんだ。でも、僕は失敗ばかり。

 でも、だからこそ学ぶんだ、もう失敗しないように学ぶんだ。

 経験を積むんだ。まだまだお兄ちゃんは僕からはほど遠い存在だ。でもそんな程遠い存在に僕はならなければならない、絶対なるんだ。


 僕は諦めない、諦めることは絶対にダメだ。

 僕が諦めたら、本当にお兄ちゃんは死んでしまう、消えてしまう。


 それだけは、絶対にダメだから。

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