第37話 ダンジョン 1
中は洞窟だった。多分これは下に降りて行くダンジョンなのかな?
洞窟の中には太陽の光は届かないけど、壁が薄く光っていて、真っ暗なんてことはなかった。
早速魔物が現れた。
名前
種族 スライム
LV 1
HP 2/2
MP 138/138
レベル1のスライム、まあ最初だし、それに初心者のダンジョンなんて呼ばれているくらいだからこんなものかな。
ダンジョンの魔物は基本的に最初の方は弱くて、奥に進めば進むほどどんどん強くなって行く。
とりあえずどんどん進んで行くかな。
僕はスライムを蹴って先に進んでいった。
ダンジョンを進んでいる途中で、ミルタさんが質問をして来た。
「・・・称号って何?」
まだ序盤だし、罠もそれほど怖い罠は無いからゆっくり会話しながら進んでも大丈夫かな。
ミルタさんは称号について聞きたいようだ。
「称号とは、ある条件を満たした際に手に入るものと、生まれた時から持っているものがあり、称号は持っているだけで特別な効果を発揮する、基本的には条件を満たして手に入れるものがほとんどだ、生まれた時から持っている称号は、たとえば[勇者]であったり、[魔王]であったりだな」
「・・・え、えと、特別な効果?勇者?魔王?」
「そう、特別な効果だ、たとえば[インヴィンジブル]という称号を持っていた場合、自分のHPが1割上削れた際、その後11秒間はHPの減少が起こらなくなるという効果を持つ、この称号は1度も死んだことがなく1度の攻撃で50万ダメージ以上を受けることが獲得条件だ」
「・・・何、それ」
「他にも[オートリジェネ HP]系の称号は、自然にHPが回復していく効果を持つ、獲得条件は累積HP消費量が100万を超えれば一番最初の[オートリジェネ HP 微]が手に入る、[オートリジェネ MP]系も似たようなものだな、累積消費MPが20万を超えれば最初の[オートリジェネ MP 微]が手に入る」
「・・・」
「その他にも[単独魔物撃破レベル?倍]称号や[単独魔物撃破レベル?差]称号、[レベル1固定縛り]や[生物]、[魔物]など様々な称号があるが、今回手に入れに来た称号は[???の攻略者]という称号だな」
「・・・」
「これはダンジョンの攻略者が手に入れることができる称号だ、???のところにはそのダンジョンの名前が入る、効果はダンジョンによってバラバラだが、難易度が高いほどいい効果の称号になっている、わかったか?」
「・・・」
返事がない、ちゃんとミルタさんは僕について来ているけど、考え込んでいて僕の言葉が聞こえていないんだろうか?
「ミルタ?」
「それが、あなたの秘密?」
秘密?なんでだろう?今称号の話しかしてないよね?僕アルターっぽかった?そんなことはないと思うけど。
「こんなこと秘密でもなんでもないぞ?」
もしも本当に秘密なら話さないだろうし、僕の秘密はアルターだっていうことだけだ。
称号の話とアルターだということに繋がりはないはず。
だから今の話に秘密は何もない。
「・・・そう」
しばらく先に進んで行くと、扉が見えて来た。
多分この中に中ボスがいると思う。
ここに来るまでの魔物は、基本的にレベル1ばかりで、たまにレベル2がいるくらいだった。
だから歩きながら全部蹴っ飛ばすだけで終わってしまった。
でもさすがに次は中ボスなんだから蹴っ飛ばすだけで終わるなんてことはないと思う。
・・・思いたい。
中ボス、強いといいな。
弱いと戦闘経験にならないし、魔石も小さいから、そんなにお金にならなさそうだから。
僕たちは扉を開け、中に入っていった。
名前 スライ
種族 スライム
LV 3
HP 35/35
MP 2271/2271
・・・弱い。
僕はスライムを蹴っ飛ばした。
スライムが死に、部屋の天井に魔法陣が浮かび上がって来た。
中ボスを倒したことで先に進めるようになったってことだ。
ここから、この中ボスを越えた先からが本当のダンジョンの始まりだ。
でも子供でも老人でも誰だって攻略できるっていっているくらいだから、僕なら余裕で攻略できないと。
ここから先に進むには、中ボスを倒した際に出てくる魔法陣を発動させればいい。
そうすれば道が開かれる。
この出てくる魔法陣が複雑なほど、この先の難易度が高いということだ。
普通の魔法陣なら下で、大規模魔法陣なら中か高、立体魔法陣なら鬼ヤバだってお兄ちゃんは言ってた。
「これは」
・・・え?大規模魔法陣だ。つまりこの先は中か高難易度ってことだ。
これが、初心者のダンジョン?本当に?僕はてっきりかなり簡単な魔法陣が出てくると思っていた。
でもそんなことはなかった。これを初心者が攻略している?
僕は舐めていたのかもしれない、他の人たちのことを。
多分今の僕なら苦戦はしないと思うけど、それでもグランドドラゴンを倒して称号を手に入れられていなかったら苦戦すると思う。
それに大規模魔法陣のMP消費量は高い、ある程度のレベルがあるか、特定の称号を持つか、アイテム、装備品でMPの最大値を引き上げないと使うことすら出来ないはず。
「・・・ダンジョン、終わり、これで称号が手に入ってる?」
「ダンジョンが終わり?まだまだ続くだろ?」
「・・・え?あとは帰るだけ」
どうしたんだろう?帰るだけ?帰りたいのかな?
「ミルタは先に進まないのか?」
「・・・先?」
「いや、何か用事があると言うのなら別に構わないぞ?俺たちは先に進むが、ミルタは帰っても大丈夫だ」
だってミルタさんはパーティメンバーじゃないからね。
「・・・え?先が、ある?」
「当然だろう?まだ中ボスしか倒していないんだ、それにダンジョンの本番はここからだ」
僕は部屋の天井に浮かんで来た大規模魔法陣を発動した。
「[スティール・アイテム]」
スキルは対象を指定しなかったため失敗した。だけど魔法陣を発動したことにより、奥への道が開かれた。
・・・あれ?あ、ああ!やっちゃった!部屋の天井の魔法陣を発動した時にバックの中の魔法陣も一緒に発動しちゃった!勿体ない!
大規模魔法陣、また書き直すのめんどくさいんだけどなぁ、勿体ない。
まあいいか、仕方ないよね。
次からはちゃんと[アイテムボックス]を使ってしまってから発動するようにしよう。
「・・・」
「ピィ!(動いた!)」
「・・・え?道が・・・え?」
「ここからがダンジョン攻略の本番だ、行くぞ」
僕たちは奥に進んでいった。